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食品中汚染物質に関する科学委員会(CONTAMパネル)による食品中有機スズ化合物の健康リスクに関する意見

Opinion adopted by the CONTAM Panel on 22 September 2004
26 October 2004
http://www.efsa.eu.int/science/contam/contam_opinions/658_en.html
食品中有機スズ化合物は木材の保存剤、ボートの防染塗装、殺虫剤などに使われてきた主に3置換化合物(トリブチルスズTBT、トリフェニルスズTPT)である。1及び2置換化合物(モノメチルスズMMTジブチルスズDBT、モノn-オクチルスズMOT、ジn-オクチルスズDOT)は混合物としてポリ塩化ビニルの安定剤として使われており、ジアルキルスズは食品と接触する物質の安定剤として認可されている。
有機スズ化合物は水にほとんど溶けず、水中環境では沈渣に蓄積して長く残存し、二枚貝のような底生生物に取り込まれる。有機スズ化合物は魚や水棲生物に蓄積する傾向があり、食べるとヒトや実験動物では消化管から吸収されて2及び1置換有機スズに分解される。
委員会は主に魚や海産物中に検出される最も毒性の高いTBT・DBT・TPTに焦点を絞った。TBTとTPTは特に水棲生物に対する毒性が高く、巻き貝には低濃度(1 ng/L in water)でインポセックスを誘発する。げっ歯類には比較的低濃度(約 1 mg/kg b.w./day)で生殖及び発生毒性を誘発するため内分泌かく乱物質とされる。リスクアセスメントの毒性学的エンドポイントは免疫毒性と考えられ、他に考慮すべき毒性として生殖毒性・発生毒性・遺伝毒性・発がん性・神経毒性が挙げられる。
慢性経口投与によるTBTオキシドの免疫毒性のNOAELは0.025mg/kg bwとされ、TBT・DBT・TPT・DOTは同様のメカニズムと強さで免疫毒性を発現することと、これら化合物に相乗作用は報告されておらず相加作用を想定するのが妥当と考えられるため、
CONTAMパネルはこれら化合物にグループTDIを設定するのが適当と判断する。安全係数100を採用してこれら化合物のグループTDIを0.25microg/kg bwとする(スズ含量に換算すると0.1microg/kg bw、塩化TBTでは0.27microg/kg bw)。
EUでの有機スズ化合物の分布は濃度の桁が数桁異なり、対称性もないが魚や海産物の濃度の中央値はTBT, DBT及びTPTでそれぞれ7.0, 2.5及び4.0 microg/kg 新鮮重量と推定される。平均値は中央値より4から7倍高い。EUで最も多く海産物を消費するノルウェーをモデルに摂取量を計算すると中央値からの推定で0.018 microg/kg bwで、上記TDIの約7%となる。平均値からの推定では0.083mivrog/kg bwでTDIの33%となる。また 海産物を多く食べるヒトの場合、中央値及び平均値推定は0.037及び0.17 microg/kg bwで、TDIの15及び70%となる。船の出入りの多い港近くの汚染の高い地域で魚介類を多く食べるヒトではTDIを超えることがあるだろう。


Nature News