食品安全情報blog過去記事

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中国都市が有害な流出物に直面

Chinese cities face toxic spills
25 November 2005
http://www.nature.com/news/2005/051121/full/051121-15.html
化学工場の爆発により数百万に安全な水が供給できない
中国で二つの化学工場での爆発により有害物質が地域の飲料水を供給している川に流れこんだ。
一週間以上前におきた上流350kmの吉林石油化学工場での爆発事故により約100トンの化学物質が松花江流入したため、11月23日、地方当局はハルビンの300万人の住民への水の供給を停止した。(注:27日には給水は再開している)一方ハバロフスクのロシア当局は黒竜江の検査を開始した。
11月24日には重慶近傍のYingte化学工場で爆発があり、巨大な黄色がかった雲が発生した。ベンゼン汚染の恐れがあるため中国政府は数千人の住人に避難を命じ水道水を使用しないよう指示した。
Natureニュースは何が起こりどのような影響があるのかに注目した。
・どのような化学工場があったのか?
二つの工場は石油化学工場で、原油から各種の基本的化合物を工業用に単離・抽出していた。
・どれくらいの有害物質が環境に放出されたのか?
吉林では約100トンのベンゼン、約2トンのその他基本的化合物(ニトロベンゼンアニリン・キシレンを含む)が放出された。Yingteで放出された化学物質の種類と量は不明であるがベンゼンが流出したようである。
・これらの化合物のヒト及び環境への影響は?
ベンゼンへの長期暴露はガンを誘発する可能性がある。定期的に暴露されている労働者での研究により白血病が誘発されることがわかっている。無色透明な液体は皮膚や目に刺激性があり、飲むと肺傷害を誘発する。純粋なベンゼンの致死量はティースプーン一杯である。それより少量を吸い込んだ場合ではめまいや頭痛、吐き気などを誘発する。ベンゼンは燃えやすいが爆発性はない。生物分解と蒸発により水や土壌に長く留まることはない。空気中では日光により分解される。
ニトロベンゼンも発がん性がある。アニリンは赤血球を破壊し、キシレンは長期投与により中枢神経系、肝、腎に傷害性がある。
・今回流出した量は有害影響を起こすのに充分か?
WHOガイドラインによる飲料水中ベンゼン耐容量は1リットルあたり10microgである。
中国政府によれば松花江の汚染濃度はこの値の100倍以上である。一時的に耐容量を超えた量に暴露されてもガンなどの病気になることはないが、現地では飲まないように助言されている。
ベンゼンはよくある化学物質か?
ベンゼンは非常によくある物質で、ほぼ全ての世界中の化学工場にある。2000年には世界中で3千万トンのベンゼンが生産された。アジアでは、日本と中東を除いて、近年年に10%の率で増加している。ベンゼンは溶媒や殺虫剤、塗料、プラスチックなどを含む多数の製品の製造に使用される基本的化合物である。
・同様の流出事故がどこかで起こりうるか?
ヨーロッパや米国で同じような事故が起きる可能性は低いと考えられている。
EUではベンゼンなどの危険な化学物質を50トン以上貯蔵している工場は「セベソSeveso」工場と分類されている(1976年にダイオキシン事故をおこしたイタリアの工場にちなむ)。セベソ工場は特に安全性基準が厳しい。
・どうやって浄化できるか
必要であれば水からベンゼンをくみ上げる。しかし常温ではベンゼンは微生物により速やかに無害な物質に分解される。最悪の汚染は数日から一週間以内に終焉する。


PMRA カナダ