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Science

Volume 315, Issue 5810 p. 316
News of the Week
委員会は米国のリスクアセスメント変更案を酷評
Panel Pans Proposed Change in U.S. Risk Assessment
米国政府のリスクアセスメントのやり方を変更するホワイトハウスによる提案を専門家委員会が「基本的に間違っている」と酷評したことについて報告している。
2006年1月に、ホワイトハウス行政管理予算局OMBが、有害化学物質から巨大技術的プロジェクトまでのあらゆるものによってもたらされるリスクを推定するための技術的ガイドラインを発表した。このガイドラインでは各機関にリスク推定に関する不確実性を明示し、各機関は「最悪の場合の推定」を行うだけではなく「中間的又はありそうな場合の推定」を行うことを要求している。
このガイドラインのレビューを依頼された科学アカデミー研究評議会の専門委員は、こうしたやりかたはしばしば非現実的である、と述べている。そのような値を計算するためのデータは存在しない。コネチカット公衆衛生局の毒性学者Gary Ginsbergは、OMBはリスクアセスメントのキャディラック(高級車)を要求している、と述べている。
この議論はリスクアセスメントにおいて最も困難な問題:たとえば特定の化学物質に暴露されたときに何人の人が病気になるのかについてのデータがない時にどうするのか、という問題を浮き彫りにする。以前FDAの職員だったJoseph Rodricksによれば、一部の物質についてはそういうデータがあるので推定できるが、ほとんどの場合それはできない。
例えばアクリルアミドについては、動物実験でガンが誘発されるが労働環境で暴露されたヒトで同じ作用は見られていない。ヒトでの確実なデータはないがEPA動物実験の結果をヒトにも当てはまるとみなしてアクリルアミドを発ガン物質として規制している。このような推定がリスクアセスメントでは重要な役割を占めている。OMBのガイドラインではデータがない場合には何もできない。
EPAがしばしば最悪シナリオに基づいて判断することについて批判があり、OMBはそれをもうすこし現実的にしたかったのだろうとは思う。しかしOMBのガイドラインでは規制ができなくなってしまう。


関連
NASプレスリリース
報告書はOMBのリスクアセスメント文書の取り下げを推奨
Report Recommends Withdrawal of OMB Risk Assessment Bulletin
Jan. 11, 2007
http://www8.nationalacademies.org/onpinews/newsitem.aspx?RecordID=11811
評価の結果、一部改訂では済まず、取り下げを要求する。
報告書はNASのサイトから入手可能