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ベンズイミダゾール類についての声明:共通異数性誘発性グループの定義の試み

STATEMENT: BENZIMIDAZOLES: AN APPROACH TO DEFINING A COMMON ANEUGENIC GROUPING
COM/07/S3 April 2007
http://www.advisorybodies.doh.gov.uk/pdfs/benzi.pdf
1. COTは2002年9月に農薬類混合物のリスクアセスメントに関する報告書で毒性作用メカニズムの同じものは相加的に、違うものは別々に作用するというデフォルトの推定を提唱している。
2. 用量相加性のある場合、混合物の影響は個々の化合物の用量を強度に応じて加算することにより得られる。これは用量反応曲線全域に渡っておこるため、低用量で適用できる。一方個々の物質に別々の作用がある場合、複合影響は高用量で見られ閾値以下の低用量では見られない。
3. ECの新しい農薬規制案では、農薬の新規認可にあたって相乗作用や相加作用について考慮することが求められている。EPAは1996年に農薬の複合暴露リスク評価を要求している。
4. 2002年のCOT報告書で共通メカニズムグループとして検討対象になった物質の一つがベンズイミダゾール類である。ベンズイミダゾール環を含む化合物は駆虫用動物用医薬品や抗真菌剤として使用されており、さらにいくつかのベンズイミダゾール環は持たないが代謝されてベンズイミダゾール類になるプロ−ベンズイミダゾールが農薬や動物用医薬品に使用されている。これらを一緒に「ベンズイミダゾール類」として検討した。
5. ベンズイミダゾール類の作用メカニズムは遊離のチューブリンにコルヒチン結合部位で結合して微小管形成を阻害し有糸分裂を阻害することであると考えられている。駆虫薬としてのベンズイミダゾールの作用メカニズムもβチューブリンへの結合による重合阻害の結果としての微小管依存性グルコース取り込み阻害によると考えられている。ベンズイミダゾールはほ乳類のチューブリン重合も阻害しin vivoで異数性誘発性がある。

毒性の「共通メカニズム」の定義
6. COTは2002年の報告書では「共通メカニズム」を定義していない。しかしながら共通メカニズムグループを「同様の作用がある」、「同じ」毒性作用がある、「共通作用機序」をもつと述べている。EPAも1996年の食品品質保護法に置いて共通メカニズムグループを「同じまたは基本的に同じ主要生化学現象により共通の毒性影響を誘発する二つ又はそれ以上の化学物質など」と定義している。
7. このレビューではチューブリン重合阻害の結果としての共通毒性影響として異数性誘発性を検討した。

個々のベンズイミダゾールのリスクアセスメント
8. COMは先に異数性誘発性化学物質(特に細胞分裂装置の機能障害によるもの)には閾値があるとみなすのが妥当であると助言している。1993年にCOMは異数性誘発物質の紡錘体阻害による閾値同定法を述べている。1996年にはベンズイミダゾール類であるベノミルとカルベンダジムについての実験結果を検討しこれら物質のNOELを導出している。さらにチオファネートメチルについても同様のデータを見ている。2000年にはCOMはこれらの物質には体細胞に置いても生殖細胞に置いても閾値があるとみなす十分な科学的根拠があると助言している。他の委員会においてもベンズイミダゾール類の遺伝毒性が異数性誘発によるものであることが示されている場合には同様の結論を導いている。

ベンズイミダゾール類のデータレビュー
9. COMは遺伝毒性データをレビューし表にまとめた。
10. ほ乳類でのin vivo異数性誘発性を予測するには蠕虫チューブリン結合データや真菌チューブリンでのデータはあまり良くない。ほ乳類細胞でのin vitroチューブリン重合データとの相関は良い。
11. マウスリンパ腫試験はin vivo小核試験の結果を良く予測しない。

追加データ
12. チューブリン結合部位は異なるがチューブリン重合阻害作用のある2つの非ベンズイミダゾール物質(dilanatinとビンブラスチン)は組み合わせて使うと相加的にほ乳類の微小管集合阻害作用がある。一方パクリタキセルや vinorelbineのようにチューブリンに対して別の作用がある化合物の間には相乗作用が認められる。一方はチューブリンの重合を阻害し、一方は重合したチューブリンを安定化して細胞分裂に必要な微小管脱重合を阻害する。

共通メカニズムグループに入れるかどうかの意志決定のための樹状図
13. あるベンズイミダゾール化合物が共通メカニズムグループに入るかどうかを評価するのに樹状図が有用であろう。重要な情報として、化学構造・ほ乳類細胞でのin vitro試験及び/又はin vivo微小管試験、及びその化合物がほ乳類
チューブリンに対する共通の機能影響を持つことを示すデータなどが含まれる(図に示す)。
14. 異数性誘発性物質は染色体異常誘発性物質又は染色体異常誘発性代謝物をつくる可能性があるため、ベンズイミダゾール類の遺伝毒性データが純粋に異数性誘発性によるものであることを示すのに十分でなければならない。

研究の必要性
15. 複合暴露による用量相加の推定は実際的でデータに基づくものであると考えている。しかしながらこの推定を確認し他の予想でき難い複合影響の可能性を排除するため、いくつかのベンズイミダゾール類の組み合わせでin vitro小核試験を行うことを薦める。
16. さらに他のチューブリンに作用する異数性誘発性物質とベンズイミダゾールの複合影響についても検討する必要がある。