食品安全情報blog過去記事

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過塩素酸塩 Q & A

Perchlorate Questions and Answers
Updated May 29, 2007
http://www.cfsan.fda.gov/~dms/clo4qa.html

過塩素酸塩は天然にも存在し人工のものもある化学物質である。天然の過塩素酸塩はテキサスのような乾燥した地域やチリの硝酸肥料、米国やカナダのカリ鉱石などにみられる。米国で製造されるほとんどの過塩素酸塩は固形ロケット推進剤の主成分として使用される。また過塩素酸塩は各種工業過程や花火などにも使用されている。最近米国の土壌や地下水、飲料水、灌水などの過塩素酸塩とその健康影響に関する関心が高まっている。
過塩素酸塩のリスク評価にむけた作業のため、FDAは各地域由来の各食品中過塩素酸塩の存在と濃度についてよりよく知るために予備的調査を行っている。食品中に検出された濃度は食品からの暴露量を理解し必要であれば対応をとるのに使用される。


1. 過塩素酸塩は人体にどのような影響があるのか?
医薬品のように高用量の過塩素酸塩を投与した場合、甲状腺でのヨウ素の取り込みを阻害して甲状腺機能を抑制し甲状腺ホルモンの産生が阻害される。実際に過塩素酸塩甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰に作られる)治療用の薬や甲状腺またはヨウ素代謝に関連する疾患の診断薬として使用されていた。成人においては甲状腺代謝調節に重要な役割を果たす。胎児や乳児では甲状腺ホルモンは通常の発育や神経系発達に必須である。従って妊娠女性やその胎児が、過塩素酸塩暴露のためのヨウ素欠乏による有害影響のリスクが最も高い。
ヒトにおいては0.5 mg/kg bw/dayまでの用量で過塩素酸塩による甲状腺機能変化は観察されていない。しかしながら最近のBlountら(Environmental Health Perspective 114:1865, 2006)の研究によれば、ヨウ素欠乏の女性(尿中ヨウ素濃度100 microg/L未満)において過塩素酸塩暴露と甲状腺機能の低下に統計学的に有意な関連を報告している。この研究は2001-2002 NHANESデータを解析したものである。検査した女性の63%がWHOのヨウ素が十分であるというカットオフ値100 microg/L未満だった。
Blountらはこの研究はより大きな規模で、甲状腺機能のバイオマーカーであるT4やTSHの測定も含めて追試されるべきだと述べている。


2. 水や食品中の過塩素酸塩の安全な濃度は決められているか?
2003年にEPA国防総省DOD)、エネルギー省、NASAが科学アカデミーNAS過塩素酸塩についてのレビューを依頼した。2005年1月にNASの委員会が過塩素酸塩の参照用量(RfD)として0.7 microg/kg bw/dayを推奨した。RfDは、感受性の高い集団も含めて生涯にわたり何らかの有害影響がないと考えられる安全係数も入れた経口暴露量である。過塩素酸塩の安全係数は10で、さらにNASは無影響量の評価指標にヨウ素取り込み阻害を使用した。ヨウ素の取り込み阻害は甲状腺機能低下をもたらす可能性がある。結果としてこの参照用量は安全側に偏ったものになった。NASはさらに妊娠女性とその胎児が最も感受性の高い集団であると考え、全ての妊娠女性が適切な量のヨウ素を摂ることの重要性を強調している。
2005年2月にEPANASの推奨するRfDを採用して、一日2Lを飲むと仮定して飲料水に換算して24.5 ppbとした。


3. FDAは食品中過塩素酸塩検出法を開発したか?
IC-MS/MSによる測定法を開発して発表している。


4. FDA過塩素酸塩の検査をどのように行ったか?
2004年には国産検体の予備調査を始めた。野菜や果物検体は過塩素酸塩汚染のあるカリフォルニア南部やアリゾナから採取した。ビン入りの水とミルクは全米から集めた。
2005年には拡大調査を行った。さらに一部輸入品についても検査した。


5. 食品中に検出された過塩素酸塩濃度についてFDAは公開するか?
ウェブサイトに掲載した。


6. FDAはビン入り飲料水中に過塩素酸塩を検出したか?
水51検体中2検体のみから0.45 及び0.56ppb検出した。


7. FDAはミルクに過塩素酸塩を検出したか?
ミルク125検体中122検体から1.91-11.3ppb検出した。平均は5.80ppbである。


8. FDAは野菜や果物に過塩素酸塩を検出したか?
137検体のレタスを調べ、検出限界以下−71.6 ppbまで、平均8.06 ppb検出されている。
トマトは73検体で検出限界以下から195 ppb、平均13.7 ppb
ニンジンは59検体で検出限界以下から111 ppb、平均15.8 ppb
ホウレンソウは36検体で5.94から927 ppb、平均115 ppb
メロンは48検体で0.52から718 ppb、平均28.6 ppb
であった。
一部の産物から比較的高濃度検出されているが、暴露推定によればこれらの食品からの過塩素酸塩摂取量は低く、公衆衛生上のリスクとはならない。


9. FDAは他の食品に過塩素酸塩を検出したか?
オートミールや小麦粉、コーンミールナマズ、サケなどからも検出している。


10. どのようにして過塩素酸塩は植物に入るのか?
現時点ではわからない。USDAなどが調査している。過塩素酸塩過塩素酸塩を含む水を植物に与える、あるいは天然に過塩素酸塩を含む土壌で育てることなどで植物に入るのかもしれない。


11. 過塩素酸塩汚染のある食品に公衆衛生上のリスクはあるか?
FDAの予備的暴露評価では公衆衛生上のリスクとはならない。
FDAアメリカ人の食事ガイドラインに沿った健康的な食生活を薦める。加えてヨウ素の適切な摂取が健康な甲状腺機能にとって重要である。


12. 特定の食品による過塩素酸塩暴露への相対的寄与率はどのようなものか?
27の食品や飲料の中ではミルクが最も寄与率が高く、0.025 g/kg bw/day又は推定総暴露量の 47%である。次はトマトで.005 g/kg bw/day又は 9 %である。
フルーツジュースとホウレンソウがそれぞれ0.004 g/kg bw/day又は 8%となっている。


13. 27の食品や飲料中の過塩素酸塩濃度は過塩素酸塩暴露の正確な指標になるか?
予備的調査であるため不確実性は残る。


14. FDA過塩素酸塩暴露量を米国の食事の1/3から計算しているので、それを3倍すれば全ての食品からの暴露を推定できるのか?
できない。


15. FDAは次にどうする?
追加の食品検査を行う。2007年の秋には過塩素酸塩TDSデータに基づく暴露量推定を発表する予定である。


16. FDAの消費者への助言は?
アメリカ人の食事ガイドラインに沿った健康的な食生活を薦める。現在の過塩素酸塩データを根拠に食生活を変更することは薦めない。


17. EPA過塩素酸塩飲料水当量は24.5 ppbである。これはビン入り水の過塩素酸塩基準であるか?
違う。FDAはビン入り水の過塩素酸塩基準は設定していない。EPAもまだ飲料水に過塩素酸塩基準が必要かどうか決めていない。


18. カリフォルニアの一部地域では水道水から過塩素酸塩が検出されている。
ビン入り水製造業者は過塩素酸塩を検査しているか?
現時点ではビン入り水の過塩素酸塩基準はなく、製造業者に検査を求めてもいない。EPAがもし公共飲料水中の過塩素酸塩基準を設定するのであれば、FDAもビン入り水の過塩素酸塩品質基準を検討する。
一部の製造業者は水源の過塩素酸塩汚染の可能性に気がついていて自主的に検査を行っている。さらなる情報については製造業者に問い合わせるように。