食品安全情報blog過去記事

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カーソンの遺産のジャンクサイエンス(Orange County Registerより)

Carson's Legacy of Junk Science (from the Orange County Register)
Elizabeth M. Whelan, Sc.D., M.P.H.
May 27, 2007
http://www.acsh.org/healthissues/newsID.1551/healthissue_detail.asp
一流の雑誌が証明されていない化学物質とガンの関係についての呪文を繰り返す
本日レイチェルカーソン生誕100年を迎える。彼女は1962年に「沈黙の春」を出版し、それは現代の反化学物質環境パラノイア(偏執症)流行の始まりであった。今日、ピアレビューのある科学雑誌ですら無意識のうちに彼女流の人を怖がらせる主張を繰り返している。
ピアレビューとは、出版前に同業者により審査されることで、科学と単なるジャンク(ゴミ)とを分離するのに必須であると考えられている。我々はピアレビューのある雑誌に発表されたデータや結論は大きな信頼を寄せてきたし、ピアレビューのある雑誌に掲載された結論と、ジャーナリストの机を埋める日常報道される科学との間には明確な違いがあることを見てきた。
しかしピアレビューが失敗すれば、そしてピアレビューのある雑誌がゴミを発表すればどうなるか?
5月14日にピアレビューのある、一流の編集委員のいる米国癌協会の発行する雑誌Cancerが乳ガンが環境中に存在する微量の化学物質(農薬や化粧品、PCBやDDTなどの汚染物質)により誘発されると結論したオンライン付録を発表した。 DDTは「沈黙の春」の影響で世界的に禁止されその結果マラリア感染が再興して1970年代から数百万人が死亡している。
この付録の主論文の筆頭著者は「沈黙の春協会Silent Spring Institute」の会長である。出資はCure foundationの「乳ガンと環境因子プロジェクト」である明らかに最初から乳ガンが「環境」因子、特に環境中化学物質により誘発されると仮定している。これだけでもピアレビューする人に伝えられれば、この仕事は科学ではなく環境運動であるかもしれないということに気がついたかもしれない。
何故この研究が「ゴミ」なのか?説明しよう。
最初に、化学物質が乳ガンの原因であるという結論は動物での発ガン性試験に基づいている。我々はラットでの発ガン性試験がマウスでの発ガン性リスクすら予測できないことを知っているのに、著者らはどうやって齧歯類を小さな女性だと仮定したのか?
次に著者らはどれだけの数の乳ガンが「化学物質」によって誘発されるのかを明確に述べることはできないと結論しているが、彼らは証拠(何の証拠?)は化学物質への暴露を減らす政策を行うのに十分強固であると感じている。
ピアレビューをした人たちは、微量の化学物質が乳ガンを誘発するという著者らの結論に驚かなかったようだ。現代の乳ガンの理解は、乳ガンのリスク要因として子どもを生んだかどうかなどの生殖要因、ホルモン剤の使用、体重、家族暦などを挙げており、「微量の化学物質」は無視している。米国癌学会のウェブサイトですら「乳ガンリスクと環境汚染物質暴露との明確な関連は見られない」としている。
多くのジャーナリストがこの新しい研究をそのまま伝えた。Los Angeles Timesは「よくある化学物質が乳ガンと関係する、乳ガンをおこす物質には広く暴露されている」と書いた。San Francisco Chronicleの社説では「発ガン物質」を非難し、この「研究」で言ってもいないこと−化学物質が遺伝的素因より大きなリスク要因である−まで主張した。
今回どこでピアレビューがうまく働かなかったのかはわからないが、米国癌協会はこの論文を発表したことで、乳ガン予防対策を遅らせる原因を作った。米国癌協会は、女性にマンモグラムを薦めたり、初期乳ガンでは効果的な乳ガン治療法があることを教えたりする代わりに、避けることのできない、見えない、敵意のある化学物質がか弱い女性を狙っているという証明されていない恐怖を支持したのである。

(地方紙とはいえ、カーソンの生誕100周年にこういう記事が掲載されること自体日本ではあり得ないのでは・・)