食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

ヒ素暴露後のガン死亡率は数十年経っても高いまま

Cancer death rates remain high decades after exposure to arsenic
12-Jun-2007
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2007-06/uoc--cdr060707.php
チリ北部で飲料水中の高濃度ヒ素に暴露された住人における肺ガンと膀胱ガンの死亡率は数十年経過しても高いままである。JNCI の6月12巻に発表される。
ヒ素は天然に存在する元素で、飲料水中の規制値は多くの国で最近まで50microg/Lであった。
最近の研究によりヒ素は肺・膀胱・皮膚ガンを誘発し、腎臓や肝臓などの他の臓器のガンにも関連することが示され、EPAは2006年1月以降飲料水の規制値を10 microg/Lに引き下げた。
カリフォルニア大学バークレイ校のSmithらはチリ北部のRegion IIを15年間研究している。この地域はアンデス山脈から流れる川にヒ素汚染があり、1958年まで水の無機ヒ素濃度が約90 microg/Lであった。世界でも雨の少ない乾燥地域であるこの地方の政府は、増加する人口に水を供給するためToconce及びHolajar川を新たな水源にした。不幸なことにこれらの川のヒ素濃度はさらに高く、1958年から1970年にかけて、アントファガスタの水は平均870 microg/Lの
ヒ素を含んでいた。1971年にヒ素除去プラントができたが、それまでの13年間、住民は高濃度ヒ素に暴露されていた。
水処理システムの改良により1990年には水のヒ素濃度は50 microg/Lまで下がった。さらに最近の処理海水の導入により10 microg/Lにまで低下している。
Smithらはこの地方の住民とチリの他の地方の住人とを比較して、肺ガンと膀胱ガンによる死亡率が高いことを先に報告している。今回は水のヒ素濃度の増加と減少の時期とガンの死亡率の増加と減少の時間差について調査した。
肺ガンと膀胱ガンの死亡率の増加は、ヒ素濃度が高くなった10年後の1968年に始まっていた。その後死亡率は上昇し続け、1986年と1997年の間にピークを迎えた。ヒ素濃度が低下し始めて20年以上経った1992-1994年に死亡率が減少し始め、肺ガンと膀胱ガンの合計死亡率は男性で10万人あたり153、女性で50で、なお他の地域より2.5-3倍高い。