食品安全情報blog過去記事

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初期チメロサール暴露と7-10才での神経生理学的転帰

Early Thimerosal Exposure and Neuropsychological Outcomes at 7 to 10 Years
メディア向け説明会の案内
New England Journal of Medicine Telebriefing “Early Thimerosal Exposure and Neuropsychological Outcomes at 7 to 10 Years”
http://www.cdc.gov/od/oc/media/pressrel/2007/a070926.htm
Wednesday, September 26, 2007
ビデオニュースによるウェブキャスト及び議事録が掲載されている
議事録
http://www.cdc.gov/od/oc/media/transcripts/2007/t070926.htm
この研究は生まれて間もない頃のチメロサール暴露と7-10才での影響を調べたもので、ワクチンの安全性を再確認するものである。この研究は約1000人の子ども達についての包括的研究で、知能や言語能力や運動能力などを幅広く調べた。またワクチンに含まれるチメロサールへの暴露量についても定量的に評価している。この研究は自閉症についてのものではない。自閉症チメロサールの関係について支持する科学的根拠はない。
一つだけ、チメロサール高暴露群の男の子でチックの増加が見られている。本来チックの診断はより長期的観察によりなされるもので今回の試験法では評価が困難だとしているが質問はここに集中している。
2007年の時点で2才までの子どもが予防接種で予防できる病気は14種類あるが、インフルエンザワクチンを除いて全てチメロサールは含まれない。インフルエンザワクチンにも各種ありチメロサールの含まれないものがある。


NEJMの論文
オープンアクセス
初期チメロサール暴露と7-10才での神経生理学的転帰
Early Thimerosal Exposure and Neuropsychological Outcomes at 7 to 10 Years
William W. Thompson et al.
NEJM Volume 357:1281-1292
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/13/1281


ワクチン裁判−ワクチンと自閉症の法廷闘争
Cases in Vaccine Court ― Legal Battles over Vaccines and Autism
Stephen D. Sugarman, J.D
NEJM Volume 357: 1275-1277
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/13/1275
アメリカでのワクチン被害補償請求裁判及び企業や政府に対する裁判の状況。


チメロサールとワクチン−ある訓話
Thimerosal and Vaccines ― A Cautionary Tale
Paul A. Offit, M.D.
NEJM Volume 357: 1278-1279
http://content.nejm.org/cgi/content/full/357/13/1278
1999年にCDCと米国小児科学会が「予防原則」を採用してワクチンからチメロサールを除去するよう製薬会社に要請した決定がワクチン摂取率を下げ、反ワクチン団体を設立させ、自閉症のキレート療法で子どもが死ぬような事態を招いた。科学的に安全性を確認する研究は何度も発表されているが感情的問題は続いている。2004年にカリフォルニア州知事アーノルド・シュワルツェネッガーが加洲でのチメロサール含有インフルエンザワクチンの使用を禁止したり、政治的人気取りにも使われた。
ワクチンが自閉症の原因ではないと公的に発言する人たちに対して嫌がらせや脅迫(時には殺すと)が行われている。CDCは抗議行動への対応として保安対策を強化する予定である。



ACSH
水銀と自閉症に関するワクチン裁判は子ども達を危険にさらす
Vaccine Litigation over Mercury and Autism Puts Kids in Jeopardy
September 26, 2007
http://www.acsh.org/factsfears/newsID.1070/news_detail.asp
今週のNew England Journal of Medicineで、子どものワクチン接種と裁判関連の3つの報告が掲載されている。
一つは乳児へのワクチンに含まれる水銀暴露と神経発達状態が関連しないことを示す大規模研究である。ワクチンと自閉症の発見されていない関係を主張し続ける人たちを黙らせるのには一体どれだけの根拠があれば十分なのか?今回の研究はCDCを含むいくつかの学術センターが行ったものである。しかし各地で補償を求めて裁判を行っている人たちを黙らせることはできないだろう。
裁判ゲームは続行中である
1999年にCDCと米国小児科学会が子ども用ワクチンからチメロサールを除去するという「予防原則」による間違った決定が現在のチメロサール騒動を大きくした。保護者は「過剰な予防のために」除去された物質を有害であると感じるのは当然である。
ワクチンメーカーが経済的損失の恐れにより市場から撤退したら感染症の再興が予想される。