食品安全情報blog過去記事

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安息香酸ナトリウムとソルビン酸カリウムの変異原性研究についての結論

CONCLUSION ON STUDY ON THE MUTAGENICITY OF SODIUM BENZOATE AND POTASSIUM SORBATE
15 May 2008
http://www.advisorybodies.doh.gov.uk/com/sodiumbenzpotassorba.htm
1.  安息香酸ナトリウム(E211)とソルビン酸カリウム(E202)は安息香酸とソルビン酸を基本とした有機酸食品保存料の二つの例である。安息香酸とそのナトリウム塩、カリウム塩及びカルシウム塩、ソルビン酸とそのカリウム塩及びカルシウム塩はEUにおいて幅広い食品への使用が認められている。これらの保存料はJECFAでもリスク評価されている。
2. 1999年にUniversity College LondonのPeter Piper教授がFree Radical Biology and Medicineにこれらの保存料が酵母ミトコンドリアゲノムに対して変異原性がある可能性を示唆する論文を発表した。
3. この研究ではin vitro試験系で遺伝子組換え酵母を使って安息香酸ナトリウムソルビン酸カリウムの細胞の呼吸能への影響を調べている。酵母スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)変異出芽酵母をこれら保存料とインキュベートしハローアッセイにより影響を観察した。著者はこれらの物質が好気的条件での呼吸不全酵母の数を増加させ、それは酵母ミトコンドリアDNAの傷害を示すと結論している。
4.  COMのメンバーはFSAから、これら保存料のその他の毒性データを考慮した上でPiper教授の論文に対する意見を求められた。
5. COMのメンバーは、Piper教授の提示した仮説は興味深いが、SOD変異酵母細胞の結果を直接in vivoのほ乳類細胞にあてはめるのは不可能であるという意見である。In vivoのほ乳類ミトコンドリアには細胞の正常の呼吸活動でみられるものに加えてこれら保存料の作用であろう酸化的ストレスに対応できる十分な抗酸化及びDNA修復メカニズムがある。この研究で用いられたSOD変異細胞は、 抗酸化やDNA修復機能が相当弱体化しており、従って酸化的DNA傷害への感受性は高い。
6. 結論としてCOMメンバーはJECFAによる安息香酸類とソルビン酸類の評価や齧歯類での発がん性試験を含む大量の毒性学的試験データを重視する。Piper教授の研究は安息香酸類とソルビン酸類の変異原性データの再見直しの必要性を示唆しない。この結論に基づき、現時点でこれら2つの保存料のin vitro変異原性試験が必要だとは考えられない。


昨年の報道の件
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20070531#p9
エビデンスとしての質の低い研究をメディアが報道して、鵜呑みにした消費者がおろおろさせられる、といういつものパターン。メディアが先の報道を訂正する、ということは期待できないので、消費者が賢くなるしかないのだろう。