食品安全情報blog過去記事

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カナダの主任公衆衛生担当官のメラミンについての声明

Public Health Agency of Canada (PHAC)
カナダ公衆衛生庁
Statement from Canada’s Chief Public Health Officer on Melamine
2008-09-28
http://www.phac-aspc.gc.ca/media/cpho-acsp/080928-eng.php
最近の東アジアにおける各種食品のメラミン汚染に関する報告を聞いたことがあるだろう。中国当局がこの汚染による数千人の乳児の症例を報告している。
ここカナダでも、特に小さい子どもの保護者は、これらの報道により心配になっている人もいるだろう。そこで私は今日までカナダでは病気は報告されておらず、メラミンの入った乳児用ミルクもないことを強調したい。
しかしCFIAは最近一部の製品にメラミン汚染の可能性があるとしてリコールを拡大した。詳細はCFIAのウェブサイトを参照。
もしこれらの製品を食べて具合が悪くなった場合には、医師に相談するように。
現時点でのメラミンのヒト健康影響に関する知見は限られている。しかし影響が出るかどうかはどれだけの量を、どれだけの期間食べたかによることを知っている。限られた暴露量では大きなリスクとはならないが、十分量暴露されると膀胱や腎臓に石ができる可能性があり、その結果腎障害になり、希に致死的となることがある。
PHACは関係部署と協力してヒト健康影響を注意深く見守っている。我々はカナダの公衆衛生関係者や専門家に監視の警告を出した。またメラミン中毒診断と治療の医師向けガイドラインを新たに作った。
さらに追加の予防措置として、もしあなたが最近中国から養子を迎えていて、 その子が中国で施設にいたことがあるなら、医師に相談した方が良い。さらなる情報が入手できるまで、ミルクを飲んでいる赤ちゃんを連れて中国に行く場合には現地のミルクは避けた方がよい。旅行の際のさらなる助言は以下で。
MELAMINE CONTAMINATED MILK PRODUCTS PRODUCED IN CHINA
http://www.phac-aspc.gc.ca/tmp-pmv/2008/mel_china_chine-eng.php
カナダではヘルスカナダが認めない乳児用ミルクは販売できない。中国産乳児用ミルクは販売が許可されておらず、ヘルスカナダは全ての主要乳児用ミルク製造業者に連絡を取って中国産乳成分は使われていないことを確認している。


医師向けガイドライン
Guidelines for Health Care Professionals
2008-09-28
http://www.phac-aspc.gc.ca/media/cpho-acsp/080928melamine_bkg-eng.php
メラミンは代謝されず速やかに尿から排出される。ヒトでの経口毒性データはないが動物でのデータはある。急性毒性は低く、ラットでの経口でのLD50は3161 mg/kgである。動物に食べさせた実験では高用量のメラミンは膀胱に影響があり、尿中に結晶や石ができて炎症を誘発する。膀胱の石を分析するとメラミンと蛋白質と尿酸とリン酸の混合物であった。動物実験では一般的に腎臓結石や腎毒性はみられないが尿に結晶がみられるので病因診断に役立つ。
動物実験ではメラミン単独で腎障害や腎臓結石がおこることは示されていない。先の汚染ペットフードによるネコやイヌの急性腎障害ではメラミンとシアヌル酸の組み合わせによる腎障害が示唆されている。ペットフードにはこれらがその他のトリアジン化合物と同時にみつかっている。さらなる動物実験でこれら2つの化合物が腎臓結石に相互作用していることが確認された。現在の中国の事例ではシアヌル酸の存在は確認されていない。
メラミン検査には多くの方法があり、ほとんどが高感度の質量分析であるが普通の臨床検査機関には装置はない。現在国家微生物検査室とカナダ公衆衛生ネットワークが尿サンプルの検査ガイダンスを開発中である。検査は腎障害の症状がある患者のみを対象にすべきである。