食品安全情報blog過去記事

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メラミン汚染粉ミルクと小さい子どもたちの尿路結石症

Melamine-Contaminated Powdered Formula and Urolithiasis in Young Children
Na Guan et al.
Published at www.nejm.org February 4, 2009 (10.1056/NEJMoa0809550) http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMoa0809550
中国における乳児用ミルクのメラミン汚染による尿路結石についての中国からの報告。
スクリーニング対象となった3才未満の子どもたち589人中421人が汚染ミルクを飲んでいた。尿路結石は50人にあり、そのうち8人はメラミン汚染粉ミルクは飲んでいない。112人に結石の疑い、427人には結石はなかった。結石のあった子どもたちのうち5.9%は血尿、2.9%は白血球尿が認められたがその割合は結石のない子どもと有意差はなかった。結石のある22人の子どもの血清クレアチニン尿素窒素、アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度は正常だった。結石があって糸球体機能に関する尿中マーカー検査をした41人のうち4人に異常を認めたが、尿細管機能不全があった例はない。メラミンを高濃度含む乳児用ミルク(500 ppm以上)を飲んだ子どもはメラミンを含まないミルクを飲んだ子どもより7倍結石ができやすい。また早産児は満期産児より4.5倍結石を生じやすい。


エディトリアル
メラミン、粉ミルク、そして中国の乳児の腎結石
Melamine, Powdered Milk, and Nephrolithiasis in Chinese Infants
Craig B. Langman, M.D.
Published at www.nejm.org February 4, 2009 (10.1056/NEJMe0900361)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMe0900361
中国における乳児用粉ミルクのメラミン汚染による子どもの尿路結石について、本誌に北京からの論文、そして香港と台北からの合計3つの報告がなされた。暴露された子どもたちの結石発症率には違いがある。
メラミン非存在下での結石の発症率は米国成人では5.2%で年々増加傾向にあるとされる。子どものデータはないが食生活やライフスタイルの変化により増加しているとされる。子どもの腎臓結石による生涯腎障害リスクの増加は不明である。
またGuanらの報告では未熟児と腎臓結石に有意な関係を見いだしている。
注目すべきは全ての報告で腎臓結石による臨床症状がないことである。石があるかどうかを検出するには超音波診断が必要であった。通常の腎臓結石は血尿や白血球尿やその他の尿の異常を伴うのでこれは意外である。一つの仮説としてはメラミン結石には蛋白質マトリックスがないため尿路上皮と反応しないのかもしれない。

correspondence
香港での、メラミンに暴露された子どもたちの超音波エコー診断
Ultrasonographic Evaluation of Melamine-Exposed Children in Hong Kong
Stella Sin Yee Ho, Ph.D.
Published at www.nejm.org February 4, 2009 (10.1056/NEJMc0809955)
http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMc0809955

メラミンと台湾の子どもたちの腎臓結石
Melamine and Nephrolithiasis in Children in Taiwan
I-Jen Wang, M.D., Ph.D et al.
Published at www.nejm.org February 4, 2009 (10.1056/NEJMc0810070) http://content.nejm.org/cgi/content/full/NEJMc0810070