食品安全情報blog過去記事

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食品中、特にミネラルウォーター中のウラン

Uranium in foodstuffs, in particular mineral water
28 April 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902498761.htm
ウランの慢性毒性については知見が限られ、ヨーロッパ域内で異なる規制が存在する。ウランの放射能によるリスクはEURATOM条約による専門家委員会が担当し、ここでは化学毒性についてのみ検討する。
2008年6月にEFSAは水や食品中のウラン濃度についてのデータを要求した。全部で8ヶ国から9045検体の検査結果が届けられた。水道水とボトル入り水で2 microg/Lを僅かに超えるウラン濃度が報告されている。ソフトドリンクはこの半分以下である。
いくつかの暴露シナリオを検討し、成人のウラン暴露量は0.05-0.27 microg/kg体重/日と推定された。乳児については0.23-1.39 microg/kg体重/日と推定した。
経口摂取した場合の生物学的利用度は限られ、可溶性ウランで1-2%、不溶性ウランは0.2%が吸収される。吸収されたウランの約1/3が体内に残り、最終的な半減期は180-360日と推定される。
経口摂取したウランの毒性は化合物の溶解度による。主な毒性の標的臓器は腎臓で、尿細管上皮細胞にウランが蓄積すると壊死や尿細管の萎縮がおこる。その結果尿細管での有機陰イオンの分泌やろ過されたグルコースアミノ酸の再吸収などが阻害される。腎毒性の他に動物実験での高濃度では生殖や発達への影響、骨の成長抑制や神経毒性が観察されている。
WHOは可溶性ウランについては雄ラットでの91日試験での腎毒性についてのNOAEL0.06 mg/kg体重/日からTDI 0.6 microg/kg体重/日を設定している。このTDIを改定する根拠となる新しいデータはない。
EFSAの食品摂取量データベースからヨーロッパ諸国全体のウランの平均食事暴露量は0.05-0.08 microg/kg体重/日と推定された。高摂取群では0.22-0.27 microg/kg体重/日で、いずれも0.6 microg/kg体重/日より十分低い。
地域のウラン濃度が高い亜集団についてはさらに詳細に検討した。そのような場合でもTDIは超過しない。
ウランを含む水で調整したミルクを与えられている乳児については成人の場合より暴露量が最大3倍多くなるため、そのような暴露は避けるべきであると結論した。