食品安全情報blog過去記事

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貝類の海洋性バイオトキシン ペクテノトキシングループ

Marine biotoxins in shellfish Pectenotoxin group
19 June 2009
http://www.efsa.europa.eu/EFSA/efsa_locale-1178620753812_1211902599809.htm
ペクテノトキシン(PTX)グループの毒素は、ポリエーテルラクトン毒素と呼ばれる。これらの毒素はオーストラリア、日本、ニュージーランド、多数のEU諸国の微小藻類や二枚貝から検出されている。貝類での存在は脂溶性画分の腹腔内投与によるマウスバイオアッセイでの急性毒性で発見された。PTX毒素を産生するのはDinophysis属(渦鞭毛藻の一種)である。カキやイガイなどのろ過摂食性二枚貝に検出される。これまで15の類似体が同定されている。PTXは熱に安定であるが、オカダ酸(OA)アシルエステルの加水分解などに使われるような塩基性条件では簡単に壊れる。またPTXは酸性条件でも不安定である。
貝類にPTX毒素があるときはOA毒素も共存する。このためヨーロッパの規制ではPTX毒素とOA毒素をひとまとめにしているが、CONTAMパネルは両者の作用メカニズムが違うために同じ規制値のなかに含めるべきではないと結論した。
PTX毒素の毒性学的情報は限られている。ヒトでの有害事象報告はない。利用できるデータはマウスの腹腔内投与での死亡率だけで、根拠のある毒性等価指数(TEF)は設定できない。よりしっかりしたデータが入手できるまで、PTX1、PTX2、 PTX3、 PTX4、 PTX6、 PTX11にはTEF 1を使用するのが賢明であろう。 PTX7、 PTX 8、PTX 9、 PTX2 SAおよび 7-epi-PTX2 SAの毒性は低くTEFは設定しない。
PTXの経口投与では吸収は遅く、毒性は腸管に限られる。慢性影響についてのデータはない。従ってCONTAMパネルはTDIを設定できない。急性影響についてはヒトデータがないため動物でのデータを元にARfDを設定することにした。根拠としたのはマウスでのPTX2による腸管毒性のLOAEL 250 microg/kg体重である。
この影響は弱く可逆的であるため、NOAELへの換算には3を用い、さらに安全係数100を用いてARfD 0.8 microg PTX2当量/kg体重に設定した。
PTXグループ毒素が160 microg/kg(EU脂溶性毒素OA規制値に相当する)含まれる貝の身400gを食べると毒素の総摂取量は64 microgで、体重60kgの成人で 1microg/kg 体重に相当する。これはARfD 0.8 g PTX2当量/kg体重よりわずかに高いが健康リスクがあるとは考えられない。現在の消費量と検出データからはヨーロッパで販売されている貝を食べてARfDを超過する可能性は低い。
400gを食べてARfDを超過しないためには120 microg PTX2当量/kg貝の身以下でなければならない。
現在EUが公式に採用している検出方法はマウスバイオアッセイ及びラットバイオアッセイでいくつか欠点がある。現時点でマウスバイオアッセイに替わる可能性があると考えられるのはLC-MS/MSであろう。