食品安全情報blog過去記事

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米国がん協会が環境中発がん物質への暴露監視に新しい戦略を要請

American Cancer Society calls for new strategies to monitor exposure to environmental carcinogens
28-Oct-2009
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2009-10/acs-acs102609.php
米国がん協会のがんと環境に関する科学助言小委員会の新しい報告書によれば、一般の人々が暴露されている多数の化学物質をより効率的にスクリーニングするために新しい戦略が必要であるとしている。
空気や水や食品や消費者製品中の環境汚染物質の問題は一般の懸念もあり不確実性も高い問題である。この報告書では、がん予防というより広い文脈の中で環境汚染物質を捉えることが重要であるとし、その中には禁煙政策や栄養状態の改善、運動促進、健康的な体重維持、発がん性ウイルス感染へのワクチン接種などが含まれる。
一般人の環境汚染物質への暴露量は職業暴露などで発がん性が確認された量に比べて遙かに低いにも関わらず、物質が多いことやコントロールできないこと、ごく微量でも多数に暴露されればがんになる人がいるのではないかということなどから懸念となっている。
委員会の報告書では、化学発がんの評価技術が進歩しているために環境暴露に関する科学的問題は極めて複雑であることを注記している。現在の発がん物質を同定し評価するシステムに価値があることは認めつつもリソースが限られていることと問題自体の複雑さが大きな制約になっている。
がん予防に関する意見書では以下のようなことも指摘している。
・ 多数の化学物質を効率的にスクリーニングできるような、発がん性評価を含む毒性試験の新しい戦略が必要。
・ 職業や地域暴露は規制値を守るべきで、発がん性ハザードの同定や削減のための研究を支援すべき。
・ 環境基準を設定し履行させる機関には適切な出資と科学の発展に歩調を合わせた科学的根拠が必要で、基準は科学の進歩に伴って更新されるべき。
・ ある種の暴露は避けられないとしても、発がん物質への暴露は可能であれば最小化又は排除すべき。
・ 公教育では情報を与えられた上での選択ができるような情報を提供すべき。
・ コミュニケーションでは一般の人々の懸念を矮小化せず配慮しつつ、同時にリスクの大きさや確実性のレベルを誇張してはならない


報告書本文は以下から
American Cancer Society Perspectives on Environmental Factors and Cancer Published online before print October 28, 2009 CA Cancer J Clin 2009
doi: 10.3322/caac.20041
http://caonline.amcancersoc.org/cgi/content/full/caac.20041v1
例えばIARCやNTPの発がん物質への分類はそれだけではがん負荷の大きさを知るのに意味のある情報源にはならない。Cancer Facts and Figures 2006では環境汚染物質とがんについてのスペシャルセクションを設けた。
Cancer Facts and Figures 2006
http://www.cancer.org/downloads/stt/caff2006pwsecured.pdf
環境中汚染物質として問題になるのは煙草とラドンアスベスト。後は室内で火を使うこと(料理も含む)。


ACSのがん予防に関する意見書は
1. ACSはがんによる疾患負荷、苦難、死亡を削減するためにがん予防が重要な役割を果たすことを認識している。
2. ACSは限られたリソースをがん予防において:(a)有効性が確認された対策と(b)がんリスクに実質的に影響する暴露に集中させる。
3. ACSは予防の優先順位を以下の根拠に基づいて設定する:(a)暴露によりがんが発症するという根拠の確からしさ(b)増加するリスクの大きさ(c)介入により暴露が減ってその結果リスクが減るという確実性(d)代替品による新たなリスクがないという根拠
4. しかしながらACSは予防対策決定には幾分かの不確実性が避けられない ことも認識している。根拠が不十分でも決定する必要があることは長く認識されている。1965年に英国の医療統計学者Austin Bradford Hill卿はこう書いた:「全ての科学的仕事は不完全である−観察研究であろうと実験研究であろうと。全ての科学的研究は新たな知見によりひっくり返されたり修正されたりする。そのことが我々が既に知っていることを無視したり所定の時期にすべき対応を遅らせたりする言い訳にはならない」。
5. ACSや職業暴露や地域での暴露は基準を守らなければならず、発がんハザードの同定や削減のための研究は支持されるべきであるという立場である。 規制により米国で少なくとも10の労働者の労働環境での有害な暴露は減少したものの、米国や世界の労働環境を許容できない職業発がん物質への暴露から保護するために監視継続が必要である。
6. 化学物質の同定と分類は複雑であるため、ACSはそのような評価を定期的に行って発表している認められた国の又は国際機関を信頼する。