- 両生類は滅多に汚染を早期警告しない
Amphibians rarely give earliest warning of pollution
Published online 29 October 2009 | Nature | doi:10.1038/news.2009.1048
Matt Kaplan
http://www.nature.com/news/2009/091029/full/news.2009.1048.html
長く考えられてきた「炭坑のカナリア」としての役割に疑問
両生類が健康かどうかが汚染レベルの指標として使われることがあるが、2万件以上の毒性試験の結果はこの生き物が比較的丈夫でそのような役割にはふさわしくないことが示唆された。
両生類は皮膚の透過性が高いことや生態が多様(水陸両方に住み植物も動物も食べるので暴露源が多い)であることから環境汚染物質に感受性が高いと信じられている。しかし両生類と他の動物の環境変化への感受性を比較した研究では彼らの感受性が高いことは証明されなかった。
Jake KerbyらはEPAのAQUIREデータベースから両生類と他の生物を使った73化合物23942試験のデータを解析した。使われた種は1075になる。化合物を重金属、無機化合物、フェノール及び農薬の4つに分類し、両生類は重金属、無機化合物、農薬については他の多くの種より感受性が低かった。最も感受性が高かったのは腕足類であった。殺虫剤に感受性が高いのはもちろん昆虫で、両生類はフェノール類に感受性が高いだけであった。
Ecology Lettersに発表された。
- 意思決定:リスクの学校
Decision-making: Risk school
Michael Bond
Nature 461, 1189-1192 (2009) | doi:10.1038/4611189a
http://www.nature.com/news/2009/091028/full/4611189a.html
一般の人々はリスク評価を正しく学ぶことができるか?あるいは権威が正しい決定に導く必要があるか?Michael Bondが2つの反対の立場に話しかける。
ドイツの学校での8才からの統計学的センスを教える試みを紹介している。その背景には、これまでの教育ではリスクや不確実性についての理解が欠如していたため、一般の人々の意思決定スキル向上のためのリスクリテラシー教育が必要であるという考えがある。一方同じ心理学者でも、一般の人々は科学的情報に基づいて最良の結論を下すことは決してないため、専門家集団による導きが必要であると主張する人たちもいる。
両陣営が合意していることは、間違った決定がたくさん行われていて人々の福祉に深刻な影響を与えているということである。例えば米国や英国での自閉症への恐怖からのMMRワクチン拒否、英国での経口避妊薬による7000人に1人という血栓リスク警告による13000件もの中絶の増加など。
リスクの過大評価は、そう評価した人々自身を不安にし生活の質を低下させる。
より知識があると考えられる医師や医療ジャーナリストなどでも同じ落とし穴にはまることがある。バイアスから逃れることはとても難しい。
心理学や神経科学の研究から、人々が意思決定をする時には情動に基づく無意識のシステムと、解析して理性的に判断するシステムの2つがあるが、前者の方が良く使われることから、研究者らは教育による意思決定の改善は難しいと考えている。しかし小さな頃から教育することで改善できることを諦めない研究者もいる。
マックスプランク研究所の心理学者Gerd Gigerenzerは世界中のどこの国にも現実の生活に統計学をあてはめることを系統的に教えているところはない、21世紀の教育は不確実性について教えるべきだと主張する。
ほとんどの国で子どもたちは確実性の数学を教えられていて不確実性の数学は教えられていない。教師や政治家の変化への抵抗があるが、さらに無理解もある。理解できない人は自分が理解していないことをわかっていない。