食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 鼻用亜鉛ゲルと嗅覚消失の関連についての報告

Report examines relationship between nasal zinc gels and loss of sense of smell
19-Jul-2010
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2010-07/jaaj-rer071510.php
25人の患者の評価と文献レビューから、OTCホメオパシー亜鉛治療は嗅覚減衰と関連する可能性がある、という報告がArchives of Otolaryngology–Head & Neck Surgeryに発表された。
風邪用にグルコン酸亜鉛を鼻腔内投与するという代替療法がひろく行われている。この治療法の効果は不明で複数の無作為対照化試験で無効であると報告されている。さらに最近嗅覚の永久的減衰または喪失という根拠が増えてきた。
Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2010;136[7]:673-676
(Zicamのことだと思うけど他にもあるかも。コールドレメディとかコールドリリーフとか言われている。なぜ亜鉛を入れているのかはわからないけれどどうせ無茶苦茶な理屈なのだろう。ホメオパシーは「害のない砂糖玉」ですらなくて「効果はなくて有害であることがわかっている」。)

  • 北米の新聞の有機農業報道:メディア:食品安全、環境、ヒト健康及び有機農業との関連

Coverage of organic agriculture in North American newspapers: Media: linking food safety, the environment, human health and organic agriculture
British Food Journal, Vol. 112 Iss: 7, pp.710 – 722
Stacey Cahill, Katija Morley, Douglas A. Powell
http://www.emeraldinsight.com/journals.htm?articleid=1871116&show=abstract
5つの新聞の5年間の報道618件を内容分析した。有機農業について中立の記事が41.4%、ポジティブなのが36.9%だった。
(全文読める。根拠のない報道が多いと)

  • 体外受精で妊娠した子どもと若者のがんリスク

Cancer Risk in Children and Young Adults Conceived by In Vitro Fertilization
Published online July 19, 2010
PEDIATRICS (doi:10.1542/peds.2009-3225)
http://pediatrics.aappublications.org/cgi/content/abstract/peds.2009-3225v1
1982年から2005年までにIVFで生まれた26692人を調べた。がんは53症例で、IVFではない場合に予想される症例28よりやや多かった。
オープンアクセス

Lighting the way to better health: vitamin D
The Lancet, Volume 376, Issue 9736, Page 142, 17 July 2010
公衆衛生上のメッセージは説得力があり単純である:悪性黒色腫やその他の皮膚がんを予防するために日光を避ける。残念ながら日光を浴びることはビタミンD合成の中心的役割をもち、ビタミンD不足はくる病や骨粗鬆症などのほか糖尿病やがん、心血管系疾患などとも関連する。
ヒトはUVB照射により90%のビタミンDを作り、食事由来のものは一部である。緯度の高いところでは冬季の日光は不十分である。日光を避ける行為はこの問題を複雑にする。Cancer Research UKは皮膚がん予防と適切なビタミンDのバランスをとることの必要性を認識しているが「皮膚は日焼けをおこすより少ない量の日光でビタミンDを作れる。日光については、少しだけしばしば、が最良である。」と記述している。オーストラリアの賢明な日光暴露ガイドラインはこのバランスについて2006-7年に改訂した。
米国皮膚科学会は日光暴露のリスクは利益を上回るとして、安全なビタミンD摂取源としてサプリメントを薦めている。British Journal of Nutritionの報告では英国では妊娠女性の必要性や命に関わる赤ちゃんの合併症予防のために統一的ビタミンD添加の必要性を強調している。
ビタミンDと日光暴露を巡る議論の一方でSUNLIGHTコンソーシアムによる個人のビタミンD合成能力の多様性に関するゲノムワイド研究が今週のLancetに発表された。これらの知見はビタミンD欠乏リスクの高い人を同定するのに役立つ可能性がある。そのような診断が実現するまで、日光暴露についてのメッセージは賢明に中庸であるべきだろう。気をつけながら夏の太陽を楽しもう。
Common genetic determinants of vitamin D insufficiency: a genome-wide association study
The Lancet, Volume 376, Issue 9736, Pages 180 - 188, 17 July 2010
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2810%2960588-0/abstract?elsca1=TL-160710&elsca2=email&elsca3=segment