食品安全情報blog過去記事

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EFSAとJECFAのリコペンのリスク評価の違いについての声明

Statement on the divergence between the risk assessment of lycopene by EFSA and the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives (JECFA)
19 July 2010
http://www.efsa.europa.eu/en/scdocs/scdoc/1676.htm
ANSパネルは欧州委員会からリコペンのADI改訂とJECFAのリスク評価との違いについて説明を求められた。
AFCパネル(ANSパネルの前身)が2008年に設定したリコペンのADI 0.5 mg/kg体重/日は、50 mg/kg体重/日での血清アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)とアラニントランスアミナーゼ(ALT)の上昇が見られた1年間ラット試験に基づく。AFCパネルはASTとALTへの影響が投与によるものであると考えた。最高用量の250 mg/kg体重/日ではASTの増加は13週間の洗浄期間で元に戻るがALTの増加は6-及び13週間では部分的にしか元に戻らないようだった。AFCパネルはALTへの不可逆的反応をNOAELの根拠となる影響と見なした。そのため有意差のない50 mg/kg体重/日に安全係数100を用いてADI 0.5 mg/kg体重/日とした。これは2006年のJECFAのADIと同様である。
2009年にJECFAはレビューの結果リコペンのグループADIを、食用色素を含む全ての摂取源について「設定せず」に改訂した。そのためそれまでのグループADI 0-5 mg/kg体重/日は取り下げられた。このグループADI「設定せず」は合成品、抽出物などに適用される。
JECFAは上述のラット1年試験も評価対象にしている。JECFAはASTとALTへの影響が肝障害の指標となる肝重量の増加や組織学的変化を伴わないために「有害影響」とはみなさなかった。JECFAはこの試験からはNOAELを同定していない。EFSAとJECFAの評価の違いはラット1年試験で見られたASTとALTレベルへの影響の毒性学的意味についての解釈の違いによる。
さらにJECFAの評価は、EFSAの2008年の評価では入手できなかった2008年の28日間試験を含むが、この試験ではNOAEL 200 mg/kg体重/日という値が示されており、この試験が違いの原因ではない。
ANSパネルはAFCパネルの意見に合意し、NOAEL 50 mg/kg体重/日を支持する。