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不妊の蛾が綿の害虫を駆除

Natureニュース
Sterile moths wipe out cotton pest
Published online 7 November 2010
http://www.nature.com/news/2010/101107/full/news.2010.585.html
アリゾナの農場が1世紀近くの間で初めてほぼ「ピンキー」フリーに
4年続けて5月と10月にアリゾナ州の空を飛行機が飛び回り数百万の小さな蛾を耕作地に落とした。この小さな蛾は世界でも最も嫌われている害虫の1つで、その幼虫はピンクボールワーム、別名ピンキーと呼ばれる。飛行機から落としたのは不妊である。
この不妊蛾の散布はアリゾナ州からピンキーを追い出す作戦の1つで、ピンキーにとって有害な遺伝子組換え綿と組み合わせて使う。毒素耐性蛾の拡散を防ぐために不妊の蛾を撒いている。この計画はリスクのあるものだったが、本日Nature Biotechnologyに発表された報告によれば、報われた。計画を実施して4年、米国で初めてピンキーが発見された1917年以来初めて、アリゾナ州の害虫侵入率が99.9%下がった。ピンクボールワームがほとんどいなくなった。
不妊戦略が成功するには害虫の数が多くないことが望ましい。綿については既にGM綿の導入で蛾が100万分の1に減っていた。耐性を獲得させないために通常作物を植える戦略がとられていたがこれは一方で蛾が安定して生存することをも意味する。作物のロスと殺虫剤の負担を減らすために農家はEPA不妊蛾の放出許可を申請した。
結果は素晴らしいものだが、今後の行方に興味が持たれる。
Tabashnik, B. E. et al. Nature Biotechnol. doi:10.1038/nbt.1704 (2010).
http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/abs/nbt.1704.html