食品安全情報blog過去記事

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死ぬほど怖い

ケモフォビア(化学物質恐怖症)がどのようにして公衆衛生を脅かしているか
Scared to Death
How Chemophobia Threatens Public Health
By Jon Entine
Posted: Tuesday, January 18, 2011
http://www.acsh.org/publications/pubID.1931/pub_detail.asp
ACSHの小冊子(といっても120ページ)
http://www.acsh.org/docLib/20110118_chemophobialongversionFINAL1.pdf
要約
Pamela Davisが娘Meaghanを妊娠したとき、ニュージャージーの自宅に使われている鉛の塗料を心配し始めた。彼女は赤ちゃん用の人形やポットやシャワーカーテンやカーペットに含まれる化学物質についての話を読んだ。インターネットには子どもが手に持って飲めるマグが危険だと警告する記事があった。プレゼントでもらったピンクのベビーパジャマは有害な難燃剤で処理されていると、友達の一人が彼女に言った。間もなく彼女の子育て環境はまだ生まれていない赤ちゃんにとって謎の脅威に満ちていると感じられるようになった。Pamelaは追いつめられた。
ニュースやインターネットの記事が本当なら、化学物質による危険は増加していてあらゆる場面でがんが忍び寄ってきていて子どもたちはとても弱い。合成化学物質は近代生活には不可欠であるがそれらに対する見解は矛盾している。我々は健康増進のために化学物質を使っている。病気治療のために医薬品を、おもちゃや医療を届けるための車にはプラスチックが至る所に使われている。殺虫剤や除草剤は質の良い食糧の生産を増やす。合成化学物質が可能にした素材や燃料無しには21世紀の生活は不可能である。しかし石けんから日焼け止めや医薬品、DDTに至るまで、我々は日々接触する化合物の安全性について矛盾した情報の無限の洪水に曝されている。多くの製品を作っている合成成分は未知でPamela Davisはそれを恐怖と感じた。「1つのことが気になるとだんだん拡大して全てが疑わしくなる」と彼女は言う。「赤ちゃんを健康にするために気が狂いそう」
矛盾する話が多くて一般の人々にとって、便利で害のないものと間違って使った場合には危険なものとの区別が難しくなっている。エクソンバルディーズ号やBP原油流出事故、Bhopal(インドのガス漏れ事件)やサリドマイドなどの有名な環境や化学物質や医薬品の事故が家庭やプラスチックに含まれる化学物質についての大げさな恐怖の話と交互に混ぜられて報道される。企業はしばしば強欲で無責任であるとされ政府の監視能力は疑問視され続けている。
良くある化合物がリスクがあるのではという認識は、がんとの関連は疑わしいという研究があっても増加する。運動や喫煙、飲酒、食習慣などのライフスタイル要因のほうが遙かに大きながんリスクであり、化合物によるものは最大限に見積もってもわずかである。しかしながらケモフォビアの流行は勢いを維持している。
一般の人々はハザードや安全性やリスクをどう判断しているのだろうか?安全というのはどう安全なのだろうか?メディアの認識や政府の規制はしばしば誤解により形成される。化学物質を「安全」と「安全でない」に分類できるという幻想がある。しかし食品やビタミンも含めてどのような物質であれ、摂りすぎれば有害である。安全性というのは相対的なもので、暴露の頻度や期間や大きさによる。化学物質に関する強迫観念は不健康である。健康への重大な影響については厳しく対応すべきであるが、比較的無害な化合物を排除するために費やされるリソースは、他の健康リスク対策のためのリソースを犠牲にしている。ケモフォビアは公衆衛生を改善させるどころかむしろ悪化させる。

本文では「沈黙の春」とEPAの誕生に始まる環境運動の盛り上がりや発がんリスクの話、いわゆる予防原則、環境NGOやメディアなどについて述べている。ケーススタディとしてビスフェノールAとアトラジンを取り上げている。