食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 自宅出産研究調査

Natureニュース
Home-birth study investigated
Published online 18 March 2011
http://www.nature.com/news/2011/110318/full/news.2011.162.html
自宅出産の赤ちゃんの死亡率が高いという論文についての批判が雑誌社に再検討を求めた。
American Journal of Obstetrics & Gynecologyに2010年6月に発表されたレビューを根拠に米国産科婦人科学会(ACOG)が自宅で生まれた子どもが生後1ヶ月以内で死亡する確率が2-3倍高いと警告した。しかしこの論文については発表後批判がありレビューによりいくつかの解析に間違いがあることが発見された。ただしそれは論文の結論を変えるものではなかった。自宅出産を巡る議論は極めて政治的で分極している。
(Natureのこの記事にも普段は見られないコメント多数。)

米国臨床内分泌医、米国甲状腺協会、核医学会共同声明
RADIATION RISKS TO HEALTH
A Joint Statement from the American Association of Clinical Endocrinologists, the American Thyroid Association, The Endocrine Society, and the Society of Nuclear Medicine
March 18, 2011
http://www.endo-society.org/advocacy/policy/upload/Joint-Statement-on-Radiation-Risks-to-Health.pdf
最近の日本での地震津波による原子力発電所の事故が、北米の人々に太平洋を渡って飛んでくる放射線への恐怖を呼び起こしている。問題の放射線源はI-131であり、ヨウ素甲状腺に蓄積する性質をもっているため甲状腺に結節を作りのちにがん化する可能性がある。1986年のチェルノブイリの事故では汚染された農場の食品やミルクから放射線暴露を受けた。チェルノブイリの経験からわかるように、甲状腺がんの発症リスクが高いのは妊娠女性・胎児・乳幼児で、20才を超えた成人のリスクは無視できる。
甲状腺による放射性核種の取り込みはヨウ化カリウム錠剤または溶液で阻害できるが、ヨウ化カリウムは明確に危険な量の放射線暴露がない場合には摂るべきではない。今回の事故で米国に危険な量の放射能が到達することはないだろうと推定される。米国や太平洋周辺でいくらかの放射能が検出されることはあるだろうが、現在推定されることからはベースラインをわずかに上回る程度で甲状腺にも一般的健康にも有害ではないだろう。
必要のない個人が米国でヨウ化カリウムを購入したり備蓄したりすることは薦めない。
(ついでにI-131による甲状腺がんは治癒率が非常に高いということも加えるといいのかな)

  • 日本:地震の後の健康

Japan: health after the earthquake
The Lancet, Volume 377, Issue 9770, Page 968, 19 March 2011
3月11日の午後2:46に本州北東部を襲ったマグニチュード9.0の地震は世界のTV視聴者にショックを与えた。その後の津波の止められない力は未だかつて見たことのない光景で悲劇であった。1万人もの人々が死亡した。50万人が家を失い日本は緊急事態になった。日本政府はこの大惨事に慎重に対応している。しかし放射線暴露の危険は日本の政治的リーダーが直面している不吉なさらなる困難を予想させる。地震は大きな破壊をもたらしたが火事は概ね制圧されているようだ。電気や水の不通はやがて減っていくだろう。惨劇はもう充分悪いものだ。しかし福島第一原子力発電所の事故により炉外に放射線が一時放出された。国際社会はこれに直ちに対応している。
来週日本は追悼と反省の時期に入るだろう。WHOは核エネルギーのヒト健康影響についてレビューし多くのことを学ぶだろう。日本で高まっている不安はなだめる必要があるが、日本だけでなく世界的な対応が必要だろう。