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Scienceの今週号の特集は「がんとの40年の戦い」

Science 25 March 2011:
Vol. 331
40 Years of the War on Cancer
ニクソン大統領が1971年にNational Cancer Actに署名して40年。
年代記
1973年疫学サーベイランス開始
1978年最初の生物療法剤インターフェロンアルファの臨床試験開始、タモキシフェンの乳がん再発予防認可。
1979年p53発見
1980年 HTLV-1単離
1981年 最初のがん予防ワクチン(ヒトB型肝炎ウイルス)導入
1989年 プロトオンコジーン(がん原遺伝子)src発見でノーベル賞
1992年 Taxol認可
1994年 BRCA1同定、翌年BRCA2
1998年 ハーセプチン認可
2001年 グリベック認可
2005年 NIHががんゲノムアトラス
2006年 子宮頸がん予防ワクチンGardasil認可
2007-8年 乳がん頻度低下

Nuclear Power's Global Fallout
各国の反応など
(日本では反原発の動きだけ大きく報道しているようだがフランスやインドなどは方針を変えていない)
現在のデザインは福島原子炉の安全上の問題に対策済み
Current Designs Address Safety Problems in Fukushima Reactors
p. 1506
Daniel Clery
福島の事故の重大さにもかかわらず、原子力発電設計者はスリーマイルやチェルノブイリの後におこったような原子力反対がおこることは予想していない。理由は現在建設中または計画中の原子炉は福島型より安全性は高いからである。1960年代の車と今の車の安全性が同じではないことに例える。(以下福島の欠点とその後の改良項目列挙)
ケンブリッジ大学Tony Roulstoneは、原油の埋蔵量と気候変動への問題が将来のエネルギー源の1つとしての原子力の立場を維持し続けるだろう、と予想している。

放射線のリスクは爆弾と兵器研究と事故を参照にしている
p. 1504
Radiation Risks Outlined by Bombs, Weapons Work, and Accidents
Jocelyn Kaiser
どのくらいの放射線量にどのくらいのリスクがあるかを計算する根拠になっているのは広島と長崎の原爆生存者の研究である。
1945年の8月に落とされた原子爆弾の生存者94000人を63年追跡した日米合同研究がゴールドスタンダードである。
たとえば2002年までに相当量の線量に被ばくしたヒトの白血病による死者は219人で最も多かったのは1950年であり予想される数より45%増えた。しかし白血病は比較的希ながんで、1998年までの相当量の被曝をした生存者中でがんになったのは7851人いる。そのうち放射線が原因であろうと推定されるのはわずか11%、850人である。
ほかに各種放射線利用施設の労働者などのデータも原子爆弾被害者研究の結果とおおむね一致している。しかし一回の暴露が、同じ量を何年にも渡って暴露された場合と同じなのかどうかはよくわかっていない。
事故のデータはあまり有用ではなく、1979年のスリーマイル事故では被曝線量があまりにも少なくて影響が検出できない。一方1986年のチェルノブイリ事故では暴露量推定が困難である。たった1つ明確になっているのは汚染ミルクを飲んだ子ども達の甲状腺がんであるが(死亡は6000例中15例)日本では汚染食品は排除されるのでそれはおこらないだろう。
原爆被害者の40%はまだ生存していて研究は継続している。研究者の何人かは今回の事故の住民モニターに助言しており、今回の事故処理にあたっている数百人の労働者を対照にした研究の可能性についても検討している。
甲状腺がんってがんというイメージからはかけ離れた治癒率を誇るのだけど)