食品安全情報blog過去記事

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妊娠中のBPA暴露は子どもの攻撃的行動に影響するか?

Sense about science
For the Record
Does exposure to BPA during pregnancy affect aggressive behaviour in children?
http://www.senseaboutscience.org/for_the_record.php/75/does-exposure-to-bpa-during-pregnancy-affect-aggressive-behaviour-in-children
今日の新聞が、Pediatricsに発表された妊娠中の女性のBPA暴露量の増加がその娘たちの攻撃的行動の増加をもたらすことを示唆する研究について報道している。この研究は244人の女性の妊娠中と出産時、およびその子どもたちが3才になるまで毎年、尿中BPA濃度を測定し、そのときに母親に子どもたちの行動についての調査を行ったものである。この話を報道したのはDaily Mail、Independent、Telegraph、Reutersなどである。
エジンバラ大学生殖健康センターRichard Sharpe教授がこの研究の限界について説明する。
「この研究の著者らは観察された行動上の変化がBPA暴露によるものなのか食事によるものなのかを区別することはできない。なぜなら人々のBPA暴露量の約95%は飲食物由来であるためである。つまり、このような「関連研究」では食事とBPA暴露を分離するのは困難である。BPA濃度が高い食生活は健康的ではない傾向があることがわかっており(缶やビンに入った製品が多い)、さらに食事が行動や発育に大きく影響することもわかっていて、つまり食生活が極めて大きな交絡作用をもつ。
この研究では暴露量推定のために尿中BPA濃度を測定しているが、測定しているのは不活性化されたBPAである。標識したBPAをヒトボランティアで食べてもらって体内動態を追跡した最近の最良の研究では、BPAが極めて速やかに代謝され排出されることが示されており、血中に活性がある形で存在するBPAは測定不可能なほど少量である。従って尿中のBPA濃度からは例えば脳内などの組織中BPA暴露については何もわからないが、ごく僅かであるだろう。」
Daily Mailの見出しはBPAを「性を曲げる化学物質」と呼んでいるが、Sharpe教授は、以下のように述べている。「著者らはBPAを弱いエストロゲン同様のホルモン活性があるので女の子の行動変化を誘発した可能性があるとしている。その根拠は齧歯類での話でヒトには当てはまらない。いずれにせよごく僅かのBPA暴露量ではエストロゲン作用は関係ないだろう」

もと論文オープンアクセス
Impact of Early-Life Bisphenol A Exposure on Behavior and Executive Function in Children
http://pediatrics.aappublications.org/content/early/2011/10/20/peds.2011-1335
(三才児のBehavior Assessment System for Children 2 (BASC-2) Parent Rating Scaleの意味がよくわからない。スキャッターグラフ見ても男女差がありそうなことはわかるがだからどうなんだということが。)