食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他ニュース

  • 伝統的アジアの医薬品

NatureのOutlook
Traditional Asian Medicine
Vol. 480 No. 7378_supp ppS81-S121
再春館製薬北里大学東洋医学総合研究所の資金提供による宣伝のようなもの)
伝統的医薬品の宣伝内容を科学的手法で研究しようとする試みが中国や日本で行われている。
日本の場合は漢方薬の国際基準が中国主導で行われると日本独特の「漢方」はなくなってしまう可能性があるという話。
ハーブにはリスクがあるため規制が必要という指摘も一応ある。(有毒ハーブのアリストロキアによる100人以上の腎障害と尿路系のがん発症の事例)

  • Natureの書評:フードサイエンス:ピペットとお玉で

Food science: With pipette and ladle
Harold McGee
Nature Volume:480,Pages:452–453 Date published:(22 December 2011)
実験室としてのキッチン:食品と調理の科学についての考察
The Kitchen as Laboratory: Reflections on the Science of Food and Cooking
Edited by César Vega, Job Ubbink and Erik Van Der Linden Columbia University Press: 2012. 400 pp. / 320 pp. $29.95/ £19.95
1988年にオックスフォードの物理学者Nicholas Kurtiとその妻Gianaが食べ物や飲み物についてのアンソロジーBut the Crackling is Superbを出版したときには調理は科学の対象ではなかった。時代は変わってこの春にはプロの台所の科学技術を研究した6巻からなるModernist Cuisineが発行され今回このThe Kitchen as Laboratoryが発行された。例えば卵の黄身の粘度は60℃付近で増加し、望みのテクスチャーを得るための図を提示している。化学者Martin Lerschはメイラード反応の調査を行い、切ったタマネギは重炭酸ナトリウムでpHを揚げるとより早く褐色になりより甘くなることを報告している。物理学者のThomas Vilgisはキサンタンガムのケチャップなどのとろみづけについて解説している。トルコアイスに使われる絶滅危惧種の蘭の根の変わりにコンニャク粉が使えるなどの章がある。
またライターのMichael Pollanによる食品の科学や技術の否定にも反駁している。例えば20世紀の寿命の伸びには安価な加工食品が寄与していることなどを主張している。
(Michael Pollan は「昔は良かった、自然に帰ろう」の人。http://d.hatena.ne.jp/uneyama/archive?word=Michael%20Pollan

  • 米国バイオセキュリティ委員会はH5N1論文に対してアシロマ型のモラトリアムを要請

ScienceInsider
U.S. Biosecurity Panel Calls for Asilomar-Style Moratorium on H5N1 Papers
23 December 2011
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/12/us-biosecurity-panel-calls-for-a.html?ref=hp
NSABB議長のPaul Keimは、研究成果を公表する前にリスクとベネフィットについて国際的議論が必要と語った。1975年のDNA組換え技術に関するアシロマ会議と違って研究そのものを中止することは求めないがデータの発表を一時的に中止することを求める。Keimは「多分3ヶ月」という。

  • 更新:希なケースだが、Scienceは著者の同意なしにマウスのウイルスと慢性疲労症候群を関連づけた論文を取り下げる

UPDATED: In a Rare Move, Science Without Authors' Consent Retracts Paper That Tied Mouse Virus to Chronic Fatigue Syndrome
22 December 2011
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/12/in-a-rare-move-science-without-a.html?ref=hp
データの歪曲とコンタミの根拠を含む2年以上の批判の後に、CFSとマウスのレトロウイルスを関連づけたScienceの論文が完全に取り下げられた。13人の著者は部分的取り下げには合意したが完全取り下げには同意できなかったため編集長であるBruce Albertsが同意なしに取り下げを発表した。
Judy Mikovitsは取り下げを拒否し、学会でも新しい根拠があると主張している。しかしMikovitsはWPIを解雇され民事で訴えられている。それでも研究を続けると主張しているが編集長はこの話は終わったと考えている。関係者はもっと早く論文を取り下げるべきだったと見ている。この編集長の判断による取り下げは、見込みのない努力にリソースをつぎ込むのを止めるのに役立つだろう。
(コメント欄に妙な意見が目立つ。リソースの無駄遣いを止めるべきという話なのにCFS患者に対して冷たいとか見捨てられたとか恥知らずという捨てぜりふとか)