食品安全情報blog過去記事

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6月の議題の一部

COMの変異原性のヒト健康への意味についてのドラフト(第3版)
http://www.iacom.org.uk/papers/documents/MUT201214v3.pdf
化学物質による突然変異誘発のヒト健康影響についてのペーパー
がんや遺伝病の原因としての変異原性化学物質の役割について考察したもの
案ではあるがそれ故に興味深いところがあるので
・重要な概念は、変異原性のある化学物質では、それ以下の用量では影響が見られないという閾値を同定することが不可能で、低用量でも僅かなリスクの増加と関連するということである。
閾値がない」が全て「閾値を同定することが不可能」に書き換えられている
(これ大事なので強調。福島先生達が何年もかけて主張してきたこと「遺伝毒性発がん物質にも閾値はある」が業界のコンセンサスになったということなので。大した違いじゃないと思われるかもしれないけれど科学の進歩ってこういう一見小さなことの積み重ねでしかない。無責任なメディアが福島先生の論文を根拠にほんの数ベクレルでもがんになるという児玉説を持ち上げるけれど福島先生の仕事の偉いところは全く意味が違うから。)

・DNAはもともと不安定で、環境要因や代謝により1日あたり各細胞において1000から100万のDNA傷害がおこっていると推定されている。DNAの維持のために複雑な修復経路が存在する。
・ヒトゲノムプロジェクトにより1000万以上のSNPsが同定されている。一人の人間は平均で300の有害なSNPをもち、新たに70の突然変異をもつと推定されている。
・ヒトゲノムには多数のコピー数変異(CNV)と呼ばれる複数コピーが存在し、ゲノムの小さな挿入や欠失や再配列はこれまで考えられていたより多い。一人の人間には100のヘテロ接合CNVがある。これらのSNPやCNVの原因や役割、化学物質暴露が影響するかどうかは良くわかっていない。
・変異原性発がん物質の例
アフラトキシンB1
クロムVI
シクロホスファミド
1,3-ブタジエン
4-アミノビフェニル

・全体として、化学物質暴露がヒト疾患アウトカムに悪影響を与える可能性はあるが、化学物質誘発性の生殖細胞突然変異がヒト集団で遺伝するという根拠はない