- 植物の毒素を排除する新しい技術
New technology eliminates plant toxins
5-Aug-2012
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2012-08/uoc-nte080312.php
植物は外敵から身を守るため毒素を作り出す。菜種はグルコシノレートを作る。これが含まれるため、ブタや鶏の飼料用に菜種を使える量が限られる。コペンハーゲン大学の研究者らはこの望ましくない毒素が植物の可食部に入ることを妨げる方法を開発しNatureに発表した。著者らは「トランスポートエンジニアリング」と呼ぶ。この技術は油を絞った残りを飼料に使えることを意味する。
(グルコシノレートの輸送に関わるタンパク質を持たない品種を作った)
- 母乳中発がん性溶媒測定
C & ENニュース
Carcinogenic Solvent Measured In Breast Milk
Web Date: August 3, 2012
http://cen.acs.org/articles/90/web/2012/08/Carcinogenic-Solvent-Measured-Breast-Milk.html
工業用溶媒トリクロロエチレンの母乳中濃度が報告された。この溶媒は米国では地下水に最も良く検出されている汚染物質である。検出された濃度はただちに懸念となるものではないが、さらなる研究が必要である。
地下水のTCE汚染のあるアリゾナ州ノガレスの20人の母親の母乳中7人から1.5-6 ng/mLのTCEを検出した。
Concentration of Trichloroethylene in Breast Milk and Household Water from Nogales, Arizona
Environ. Sci. Technol., Just Accepted Manuscript DOI: 10.1021/es301380d
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/es301380d
- 健康食品のノコギリヤシ(Saw Palmetto)が原因と考えられた横紋筋融解症の1例
A case of rhabdomyolysis caused by saw palmetto of healthy foods
花 香 未奈子,他
J UOEH. 2012 Jun 1;34(2):193-9.
産業医科大学雑誌
ノコギリヤシを含む5種類の健康食品を使っていて横紋筋融解症になった82才の男性の症例
(ノコギリヤシがどうこうというより健康食品を何種類も摂ることのリスクに全く気がついていなさそうなことが問題。騙されてる。)
- 新しいタイプの過敏性肺炎:サラミブラシ職人病
A new type of Hypersensitivity Pneumonitis: salami brusher's disease.
Marvisi M et al.,
Monaldi Arch Chest Dis. 2012 Mar;77(1):35-7.
サラミ工場で、サラミの表面に生える白いカビをワイヤブラシできれいにする仕事をしていた5人がカビによる過敏性肺炎になったという報告
- バックグラウンドの慢性腎疾患リスクとの関連でのカドミウムリスク評価
Cadmium risk assessment in relation to background risk of chronic kidney disease.
Ginsberg GL.
J Toxicol Environ Health A. 2012;75(7):374-90.
慢性腎疾患(CKD)のバックグラウンド罹患率に対してCdの1 microg/kg/dの摂取量が集団のCDKリスクをどれだけ増やすかという推定。
- 食品やタバコからの長期カドミウム暴露、肝への影響と肝細胞がん
Long-term exposure to cadmium in food and cigarette smoke, liver effects and hepatocellular carcinoma.
Satarug S.
Curr Drug Metab. 2012 Mar;13(3):257-71.
レビュー。
- 原爆を超えて:低線量医療被曝のがんリスク
Beyond the bombs: cancer risks of low-dose medical radiation
Andrew J Einstein
Lancet Vol.380 Number 9840 Aug 04, 2012
10年以上前、Brennerらが小児科のCTスキャンによる放射線量で有意な数のがんによる過剰死亡がおこっていることを示唆した画期的な報告をした。この研究で行われたリスクの推定や、その後の他の医療暴露による推定は、日本の原子力爆弾生存者研究に基づくリスク予測モデルによる。CTスキャンと原爆からの暴露には多くの違いがあり、例えばCTスキャンは通常人体の一部にのみ集中するが原爆は全身に影響する。これらの違いはCTスキャンリスクを推定する際に研究者により可能な限り考慮されているが、それでも予測は正確だろうか?CTスキャンにより本当に小さいけれど現実的がんリスクがあるのだろうか?
多くの医師はCTスキャンによるがんリスクは仮想のものだと考えている。米国医療物理学会の方針説明書では「1回につき実効線量50 mSv以下のあるいは短期間に複数回で100mSv以下の医療用画像解析によるリスクは、検出するには小さすぎるかあるいは存在しないだろう」と述べている。実際子どもや成人の医療用画像解析による放射線暴露によるがんのリスク増加を説得力を持って示した疫学研究は存在しない。リスク推定は当時としては最良の科学に基づくものだと主張する人達もいる。今、Mark PearceらのLancetに発表された研究が乱闘に参加した。著者らはイングランド、スコットランド、ウェールズで1985年から2002年にいろいろな病院でCTを行ったがんではない178604人の子どもたちのコホートを調査した。彼らは個別の臓器の被ばく線量推定のために最先端の線量測定法を用い、その後のがんについてはNHS中央登録との関連で同定した。がん診断のためのCTによる交絡を避けるため、放射線に関連する発がんはみられないと考えられているスキャンの2年以内に発症した白血病と5年以内の脳腫瘍については除外した。
このコホートの最初の解析は、典型的には10年の、最大23年のフォローアップ期間中の白血病と脳腫瘍に限られている。このフォローアップ期間に、CTによる骨髄の累積線量が最小30 mGy(ここでは1 mGy = I mSv)から子どもの白血病頻度が増え、最小50 mSvから子どもの脳腫瘍頻度が有意に増えたことをPearceらは記している。2001年以降に通常用いられている線量を用いて推定すると、15才未満の子どもに頭部CTを2-3回すると脳腫瘍の、5-10回で白血病のリスクが3倍になることを示唆している。彼らの知見は、原子爆弾生存者のデータと比べて白血病リスクはほぼ同じで脳腫瘍のリスクは増加しているが統計学的には両立しうることを示唆する。
少なくとも12の他のグループが子どもたちの国民コホート研究を計画または実施している。オーストラリアとカナダの大規模コホート研究の知見は1-2年のうちに出るだろう。一方英国コホートの拡大バージョンを含むヨーロッパ9コホートのプール解析をEPI-CTが2016年に報告する予定である。英国の子どもたちの他の固形がんやより長期のフォローアップについてもさらに解析されるだろう。これらの研究はよりしっかりした根拠を提供し、我々の低線量放射線によるがんの理解を深めるだろう。
この研究の臨床や政策に与える影響は?CTによるリスクがリアルかどうかについての議論を減らすだろうが専門家は既に過去10年で変わってきた。新しいCTスキャナーは線量を減らすようにしているしCTによる被ばくを正当化・再適化する必要性を理解している医師は増えた。それはPearceらの研究によって強化されるだろう。
CTの正当化は重要である、なぜならスキャンの20-50%は他の方法で代替可能か全く必要ないことが示されているからである。
(CT暴露とがんについての疫学研究の表に、世界で突出して多い医療被曝をしている日本がないことが残念)
Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study
Mark S Pearce et al.,
Volume 380, Issue 9840, 4–10 August 2012, Pages 499–505