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ヨーロッパのフードファイトのまっただ中で、EFSAは根拠を見つめ続ける

Regulatory Science
Amid Europe's Food Fights, EFSA Keeps Its Eyes on the Evidence
Kai Kupferschmidt
Science 30 November 2012: Vol. 338 no. 6111 pp. 1146-1147
ヨーロッパの食品監視機関EFSAが今月10周年を祝い、科学的根拠に忠実であることを讃えた−たとえヨーロッパ人がそれを聞きたくなくても。
2002年に設立されたEFSAは今月初め10周年を祝う会合を開き700人ほどの科学者が参加した。欧州官吏はイタリアの小さな静かな街であるパルマの雰囲気がEFSAに反映されることを望んだのかもしれないが、EFSAはヨーロッパで最も激しいフードファイトの中心になっている。
EFSAはこれまで何度もGMO人工甘味料に健康リスクはないと繰り返してきたことで環境団体や市民団体の怒りをかっている。圧力団体や政治家から何度も根拠のない独立性に関する疑問などの激しい攻撃を受けている。同時にEFSAは世界で最も積極的な根拠に基づく方針により食品企業やサプリメント業界も慌てさせている。12月14日から、製造業者は数千という製品の表示や広告に健康効果を謳うことができなくなる。
このようなプレッシャーの中で、EFSAはなんとか科学的根拠にあくまでこだわり続けている。EFSAは期待以上に成功している。
声を上げ、立ち向かい、団結する
EFSAはBSEを含む1990年代のいくつかの食品スキャンダルが消費者の信頼を損ねたことから設立された。EFSAの長官Catherine Geslain-Lanéelleは「我々はBSE危機の子どもである」という。EUの指導者たちは食品リスクをレビューするためにヨーロッパ中の最良の科学者に先導されることを望み、意志決定のためにしっかりした科学的コンセンサスを求めた。BfRの長官Andreas Henselは「BSE危機の前は政治と科学の寄せ集めだった。誰もヨーロッパレベルでの科学に本当に責任のある人はいなかった。」という。特に独自の食品安全機関をもたない小さな国にとってはEFSAは歓迎された。
しかし常に科学が勝つわけではない。EFSAは欧州委員会に科学的意見を提出し、それが常設委員会で承認される。最終決定は政治であり、その見解は多様である。EFSAはこれまで評価対象となったGMOのすべてを認めてきたが、欧州委員会ではいつでも反対と賛成に別れる。GMO問題は9月にフランスのGilles-Éric Séraliniによる論文発表で燃え上がった。EFSAにとってSéraliniはおなじみである。
健康強調表示と利益相反
健康強調表示の評価を巡って食品企業から医薬品並みの根拠が求められると激しい抗議がある。却下された数が多いことは食品企業が本当の意味では健康に影響するような製品を作っていないという事実を反映するものである。
利益相反についての批判もある。EFSAは欧州会計検査院の報告書に対応して利益相反を見直した。しかし企業とのなんらかの関連のあるすべての人を排除すると専門家がいなくなってしまう。誰かが企業と協力したことがあればその人は関連項目についてはEFSAの作業に関わらないし、決定は21人の委員会メンバーによってなされる。
信頼構築のためにEFSAがやるべきことは多いが、現在科学が意志決定の中心舞台にあるということはこれまでなかったことで、これが祝福すべきことである。我々はまだ10才にすぎないことを忘れないで欲しい。