食品安全情報blog過去記事

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あなたにとって今年最高の科学本は?

What's your science book of the year?
Posted by Andrew Wadge on 21 December 2012
http://blogs.food.gov.uk/science/entry/what_s_your_science_book
食品に関して消費者の健康を増進するための情報を評価し決定をすることが我々がFSAでしていることである。我々は我々の決定が根拠に基づき、消費者が情報を与えられた上での決定を行うことができるように助言を提供していることを誇りに思っている。Daniel Kahnemanはこのことについて生涯考えていて、人々が意志決定をするときに実際にやっていることはなにかについての何百という研究からたくさんの情報を導き出している。この本は魅惑的で考えさせられるものである。この本を数行で要約するのは無理なので私の印象に残ったことを抜き出してみる。著者は、我々は怠け者なので、事態を解析するのにデータを苦労してきっちり見て判断するよりはヒューリスティック(簡単な経験則)で簡単に素早く判断する方が簡単である、という。これは大抵の場合うまくいくので、時に間違った選択をしたことに気がつくこともなくそのような判断をし続ける。FSAに対するメッセージは、素早い判断も必要だがじっくり考えよう。
いろいろなバイアスの例が説明されているが、私は改良された場合の報酬のほうが罰より効果があるという例が好きだ。多くの根拠があるのに、多くの上司が採用していない。Kahnemanはこの話をイスラエルの空軍の指導者がこれは空軍士官候補生にはあてはまらないと語ったことにつなげる。良くできたと誉めると大抵次はダメで、できの悪いことをしかると次は良くなるというのだ。指導者が観察しているのは、ランダムな揺らぎの平均への回帰である。いつもより良くできた場合次はそれほど良くできないし逆もそうである。指導者が犯した間違いはランダムプロセスにおける避けようのない揺らぎを因果関係とみなしたことである。
Kahnemanは言う「人生からのフィードバックはひねくれている。我々は自分を喜ばせるヒトには親切にし、そうでない場合には不親切になる傾向があるので、統計学的には親切にすると罰を受け、不親切だと報酬を受ける確率が高い」怒鳴りつけることがモチベーションを上げるのに有効だと信じているボスに出会った不幸を経験した人はいませんか?
今年読んだおもしろい科学の本を共有しましょう。全ての人にメリークリスマスと良い新年を。
紹介されている本は
Thinking, Fast and Slow
http://www.amazon.co.jp/Thinking-Fast-Slow-Daniel-Kahneman/dp/0141033576