食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • 3才の男の子の磁石摂取

Magnet ingestion in a 3-year-old boy
CMAJ cmaj.121847; published ahead of print March 11, 2013
強力な磁石を複数個飲み込んだことによる傷害の事例

  • ニセ鹿製品を検出するにはDNAバーコーディングだけで十分

DNA barcoding alone sufficient to detect fraudulent deer products
11-Mar-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-03/v-dba031113.php
高度に加工された製品であっても鹿DNAを同定する方法を香港の科学者が提供
オープンアクセス
An integrated and validated DNA-based protocol developed to fight against commercial frauds – A case of fraudulent substitutions for deer products
DNA Barcodes. Volume 1, Pages 27–34
Sin, W.M. et al.,
http://www.degruyter.com/view/j/dna.2012.1.issue/dna-2013-0001/dna-2013-0001.xml?format=INT
(鹿の腱がウシの10倍くらいで取引される国ってそんなに無いと思うけど)

  • 福島2周年にHPSが放射線についての特別ペーパーを発表

Marking anniversary of Fukushima HPS publishes special paper on nuclear radiation
11-Mar-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-03/hps-mao031113.php
国保物理学会がRadiation and Risk: Expert Perspectivesをオンライン発表した。
http://www.hps.org/documents/radiation_and_risk.pdf

  • ミイラが、古代は詰まった血管に悩まされていたことを明らかにする

Natureニュース
Mummies reveal that clogged arteries plagued the ancient world
11 March 2013
http://www.nature.com/news/mummies-reveal-that-clogged-arteries-plagued-the-ancient-world-1.12568
スキャンの結果は現代的食生活より心疾患が多かったことを示唆する
詰まった血管は不健康な現代の食生活の象徴とされているが、古代でも、ジャンクフードなど食べていなかった活動的狩猟採集者でもよく見られることを、ミイラの研究が発見した。
この研究チームのメンバーであるカリフォルニア大学Irvine校の心臓専門医Greg Thomasは、「昔に戻れば何もかもうまくいくという信仰があるが、ミイラでも冠動脈疾患がある」という。論文はLancetに発表された。
エジプト人、ペルー人、南西アメリカプエブロ族の先祖、アラスカアリューシャン列島のUnanganという異なる4集団の137ミイラのCTスキャンを行った。エジプトは人工的にミイラを作ったがほかは乾燥あるいは低温により自然に保存されたものである。その結果47のミイラ(34%)がアテローム動脈硬化症あるいは疑いと診断された。

  • ワールドレポート 惨事の2年後、福島の住人はいまだ苦闘中

Lancet
Fukushima residents still struggling 2 years after disaster
Justin McCurry
Volume 381, Issue 9869, 9–15 March 2013, Pages 791–792
3月11日で日本の北東海岸を襲った三重の惨劇から2年になる。Justin McCurryが今月福島を訪問しこの地域の苦戦の様子を伝える
津波に襲われた町や村の再建は緒についたばかりで何万人もの生存者がいつ帰れるのかわからないまま仮の住まいにいる。福島では壊れた発電所の20km圏内に住んでいた16万人が宙ぶらりんのままだと推定されている。
専門家は、突然の避難と低レベル放射線に継続して暴露されることの健康影響の可能性への恐怖が精神衛生上の危機をもたらし、この地域の医療インフラにダメージを与え続けているという。最近の、国際的科学者による、惨劇により放出された放射能による健康への影響は無視できる程度だという確約は、住人の恐怖を和らげるのに役にたたなかった。WHOは福島事故による放射能汚染の健康影響について楽観的予想を発表した。
専門家は1986年のチェルノブイリの事故により汚染ミルクを飲んだ子ども達に甲状腺がんが生じたため、子ども達のリスクが大人より大きいことについては合意している。しかしながら福島では乳製品の放射線量は厳密に監視され、最も大きな影響を受けた地域の乳児であっても生涯発がんリスクに1パーセント加えるだけだろうとWHOの報告書は言う。しかしデータの中にはより警鐘をならす数値があり、乳児の時に被曝した女性の生涯甲状腺がん発症リスクが70%高い。女性の通常の生涯甲状腺がん発症リスクが100人中0.75であることを考えるとこれが1.25になる。ベースラインの数値が小さいため相対リスクの増加率が大きくても絶対リスクの増加は小さい、とWHOは言う。
この報告書への反応は多様だった。日本の当局や何人かの専門家はWHOが過剰な線量推定を用いたために住人の不安を大きくしたと非難している。WHOはリスクを過剰に推定し誤解を招く可能性があると環境大臣は声明を発表した。
一方グリーンピースはWHOの報告書は欠陥があり避難するまでの期間に受けた放射線量を考慮していないという。
累積線量が100mSv以下の場合の健康影響については放射線の専門家の意見は一致していない。NIRSのKazuo Sakaiは、一般の人々の無知と有害な噂が福島住民に不必要な恐怖を与えているという。事故前はほとんどヒトが放射線については知らなかったのに事故後はあまりにも放射線のことだけがとりあげられているため混乱が生じている。事故の影響と放射線の影響は分けなければならない。放射線による健康影響は観察されていないが多くの避難者が死亡し病気になっている。一部の人たちは放射線について心配しすぎて子どもを外に出さない。
原子力発電所の安定化のために働いている労働者は最もリスクが高い。危険性にもかかわらず、労働者の急性放射線影響は報告されていない。
医療の専門家は避難者の精神的身体的状況が心配だという。惨劇の精神的影響のほうが放射線による影響より緊急性の高い懸念事項である。メディアではアルコールの濫用、家庭内暴力、自殺などが報道されている。防衛医大災害心理学が専門のJun Shigemuraは言う。避難者は家、コミュニティ、仕事など全てを失い、戻れるかどうかもわからない。そして差別を経験している人たちもいる。福島住民としてのアイデンティティが弱体化し、それは彼らの福祉に悪影響を与える。さらに若い人たちがいなくなったことで福島の医療インフラが弱体化している。

お便りコーナーは「乳ガンスクリーニングの利益と害」