食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 専門家に尋ねよう:カラギナンの安全性

Ask the Experts: Carrageenan Safety
by Berkeley Wellness | March 19, 2013
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food-safety/article/ask-experts-carrageenan-safety
Q.インターネットでカラギナンはがんを含む腸の病気の原因になると読んだのだけど?
A.食品添加物の安全性は良く議論になる。カラギナンは海藻由来の増粘剤で、アイスクリームやプリン、豆乳、ヨーグルトなど多くの食品に使用されている。FDAやその他の世界中の保健機関はカラギナンが安全だとみなしているが、一部制限がある。
10年前にアイオワ大学の動物実験レビューで警鐘が鳴らされた。特に分解されたカラギナンがマウスで消化管潰瘍や腫瘍を作る可能性がある。分解型のカラギナンはIARCがヒト発がん物質である可能性があると分類している。その後いくつかの実験室の研究で食品グレードおよび分解型カラギナンが炎症を誘発しヒト大腸細胞の細胞死を増加させることが示された。他の科学者らはヒトと動物の消化管システムが違うことを指摘してこの研究はヒトのリスクにはあてはまらないとしている。カラギナンがヒトで有害な形態に分解されるという根拠はない。
我々はカラギナンを避ける必要があるとは考えていないが、もし慎重を期するのであれば成分表を見ればいい。2007年にJECFAはカラギナンを乳児用ミルクに使わないよう助言し、ヨーロッパでは乳児用ミルクへの使用は禁止されている。

  • 報告書が、中心的健康指標であるQALYについてのあら探しの引き金をひく

Nature Medicine
Report triggers quibbles over QALYs, a staple of health metrics
Nature Medicine
Volume:19,Page:248(2013)
David Holmes
http://www.nature.com/nm/journal/v19/n3/full/nm0313-248.html?WT.ec_id=NM-201303
NHSとNICEについてはよく論争が行われる。NICEによるNHSでカバーされる新しい医療の選択については、不可とされた場合にこれまでも何度も製薬会社や患者団体から批判があった。これまでの批判のほとんどは倫理的なものであったが、今回は欧州委員会の資金提供をうけて行われたQALY(質調整生存年)の基本原則への疑問である。
QALYは1970年代後半から1980年代初めに、限りある医療資源を客観的に比較する方法として提案された。現在はNICEおよびオーストラリア、カナダ、スコットランドの同様の機関により意志決定ガイドラインとして使用されている。QALYは治療による寿命延長とその質を評価して計算される。例えば質が0.6と評価される寿命を1.25年伸ばす医薬品は0.75QALYとされる。QALYあたりのコストが一定の閾値(現在3万ポンドに設定されている)を超える新しい医薬品はNHSで提供される医療になることはない。
(費用対効果が小さいと判断された治療法には保険がきかないということ)
問題は計算の正確さである。新しい報告では計算のもとになる推定が無効である主張している。報告書の著者らはヨーロッパ人の代表的1300人を対象に調査し、QALYの推定が人々の指向を正確に反映しているかどうかを調べた。例えば、車いすに乗って10年長く生きるのと5年生きるのでは、QALYの仮定では100%が10年長く生きる方がよいことになるが実際には72%しかそうしたいと回答しなかった。QALYの理論では人々の指向に一貫性があることを仮定しているが現実世界ではそうではない。
報告書はまだ公表されていないが1月にブリュッセルで発表され、NICEは速やかに反応した。
(費用対効果の低い治療は行わないという判断はお金がないなら仕方ない部分もある。それと指標の確からしさとはまた別の問題で、元気な人に障害を抱えても長生きしたいかと聞いたら生きたくないという回答だったとしてもいざ病気になったら長生きしたいというかもしれない。QALYの計算方法をより実態に即したものにする努力はあってしかるべき。)

  • エディトリアル:大サイズ炭酸飲料について

Lancet
Taking on Big Soda
Volume 381, Issue 9871, 23–29 March 2013, Pages 963
ニューヨークのレストランは2013年3月12日に発効予定だった16オンス(475mL)より大きいサイズの砂糖入り炭酸飲料提供禁止に準備をしていたが、直前に裁判所が「恣意的できまぐれ」であると判断した。このサイズ上限設定はNYCの肥満対策で、Lancetも肥満シリーズのなかで炭酸飲料禁止のようなより強力な公衆衛生対策を求めてきた。禁止の一時停止以降、メディアには市長が行き過ぎであるといった意見が溢れている。しかしこのようなバックラッシュにもかかわらず、市長は控訴する予定である。
同じ週に栄養へのアクセス指標報告書Access to Nutrition Index (ATNI) reportとランキングが発表された。
Global Access to Nutrition Index Launched
http://www.accesstonutrition.org/
世界の25食品や飲料大企業の栄養関連活動や情報開示などを評価したもの
ベスト3はダノン、ユニリーバネスレ。日本の企業は味の素、日清が入っているが日清は調査に回答しなかったということで最下位にランクされている
(評価指標が適切かどうかはともかくお返事くらいはしたほうがいいのでは。カップヌードルは世界に受け入れられているんだなと改めて思う)

  • 社会的孤立が寿命を短くする

Natureニュース
Social isolation shortens lifespan
25 March 2013
Amanda Mascarelli
http://www.nature.com/news/social-isolation-shortens-lifespan-1.12673
加齢研究で一人でいることは健康リスクであることがわかった
これまで科学者は社会的孤立や孤独感が病気や死亡のリスクであることを知っていたが、影響するのは孤立なのか孤立と孤独感の両方なのかはそれほどはっきりしていなかった。PNASに発表された論文で、孤独感が伴うかどうかにかかわらず、家族や友人との接触の少なさが病気や早期死亡を予測することを報告した。

  • 密造酒を安全に飲めるようにする

ScienceNOW
ScienceShot: Making Moonshine Safe to Drink
byLizzie Wade on 22 March 2013
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2013/03/scienceshot-detecting-moonshine.html?ref=hp
自家醸造の失敗や犯罪によりメタノールの混じったアルコール飲料を飲むと盲目や死亡の原因になる。メタノールが混じっていても飲料の風味や色は変わらないため識別は難しい。コロンビアの科学者らは飲料のメタノール/エタノール比を分析できる再利用可能なワイヤレスチップを開発した。

  • 何百万人もの命を救った男を記憶に留める

ScienceNOW
ScienceShot: Remembering a Man Who Saved Millions
byErik Stokstad on 25 March 2013
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2013/03/scienceshot-remembering-a-man-wh.html?ref=hp
緑の革命の父であるNorman Borlaug(1914-2009)の誕生記念日を迎える。彼の生涯にわたる戦いを記念して、Scienceは3週間、彼の業績に無料でアクセスできるようにした。

  • 「統合栄養学研究所(IIN)」への懐疑的視線

Credential Watch
A Skeptical Look at the Institute for Integrative Nutrition
Stephen Barrett, M.D.
http://www.credentialwatch.org/reports/iin.shtml
ニューヨーク市に本社があるIINは「世界最大の栄養学校」を自称し、毎年1600人以上が入学しているとする。パートタイムや遠隔地用の講義を提供し卒業生は「健康カウンセラー」として働くことができると言っているが内容は疑問である。お金を払うと「健康カウンセラー認証」が与えられるがIINは教育機関として認証されておらず、栄養士の基準を満たさない。講義の中にはアーユルベーダやマクロビオティック、血液型ダイエットなどがある。2013年には3人の女性が雇用上差別されたと裁判をおこした。
(ホリスティック栄養学とか統合栄養学とかの勉強をしたとして健康アドバイザーなどを名乗ってインチキアドバイスを商売にしている人たちが日本にもたくさんいるので要注意。)

  • オーストラリア成人の虫歯に与える飲料水のフッ素添加の影響

Effects of fluoridated drinking water on dental caries in Australian adults.
Slade GD et al.,
J Dent Res. 2013 Apr;92(4):376-82
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23456704
フッ素添加が1%未満だった1960年代以前に生まれた2270人と、フッ素添加67%の1960-1990年に生まれた1509人を比較した研究。虫歯予防対策や社会経済状況等を調整後、フッ素への暴露用量依存的に虫歯が減少している