食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

論文等

  • 腸内細菌が肥満とがんの関連を説明するかも?

ScienceNOW
Gut Bugs Could Explain Obesity-Cancer Link
by Gisela Telis on 26 June 2013
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2013/06/gut-bugs-could-explain-obesity-c.html?ref=hp
Natureニュース
腸内細菌が肥満マウスの肝臓がんに拍車をかける
Gut microbes spur liver cancer in obese mice
Beth Mole 26 June 2013
http://www.nature.com/news/gut-microbes-spur-liver-cancer-in-obese-mice-1.13276

日本の研究
【プレスリリース】肥満に伴う腸内細菌の変化が肝がんの発生を促進する
http://www.jfcr.or.jp/press_release/2777.html
DMBA誘発を入れた方がいいんじゃないかな
普通食はエネルギーの12%が脂肪、高脂肪食は60%、ヒトに換算すると70kgのヒトが毎日136gの脂肪を食べることに相当
(実験動物だと20%でも高脂肪だけどヒトだと低脂肪なので換算が正しいかどうかわからないけれど)

  • プロバイオティクスの賛否両論

The pros and cons of probiotics
Carrie Arnold
The Lancet Infectious Diseases, Volume 13, Issue 7, July 2013, Pages 571–572
ヒトの微生物叢研究によりプロバイオティクス食品やサプリメントが増えた。今や食料品店の棚には、低脂肪、低炭水化物、オーガニック、グルテンフリーに加えてプロバイオティクスが新たなバズワードとなっている。人体には何兆もの微生物がいて我々の健康に関与するという研究は増えている。しかし問題は、プロバイオティクスが消費者にどうマーケティングされているかと臨床研究の結果からわかったことの間にあるミスマッチである。サプリメントの包装には「消化器系の健康をサポートする」「免疫機能を強化する」のようなあいまいな主張が記されていて、これらは厳密には合法であるが臨床試験の結果とはあわない。多くの臨床試験では特定の系統の細菌と急性の感染性の下痢のような特定の疾患との組み合わせについて研究している。研究者らは、消費者を虚偽の健康強調表示や間違った宣伝から守りつつ最大限のメリットを得るためには規制機関がもっと良く対応する必要があると言う。FTCのRichard Clelandは、「プロバイオティクスの使用は爆発的に増えている。消費者の視点からは混乱するしかない」という。
歴史的には人類は微生物を含む多くの食品を食べてきた。最初のプロバイオティクス流行はヨーグルトであろう。フランスでダノンがActiviaヨーグルトの宣伝に使ったのが1987年でまもなくヒットし、現在は関連製品で40億ユーロのプロバイオティクスヨーグルト市場の半分を占める。ダノンは積極的に健康効果を宣伝していて普通にヨーグルトにいる細菌の他にBifidus regularisを加えて便秘解消に役立つと言う。FTCはダノンの研究から、便秘解消のためには定期的に食べるだけでは十分ではなく、毎日3ポットを食べる必要がありそれは「通常の摂取」ではない、としている。ダノンはFTCと和解して宣伝を変更している。
ウェールズのSwansea大学小児胃腸科専門医To S J Allenは、Activiaの事例はプロバイオティクスマーケティングの問題点を凝集しているという。臨床研究の根拠は極めて薄弱である。Allenは市販されているプロバイオティクス製品の宣伝効果はほとんど信じない。プロバイオティクスと呼ばれるためにはその細菌系統の健康上のメリットが証明されていなければならない。例えば抗生物質はそれぞれどの系統の細菌に有効かどうかわかっている。
さらに問題なのはサプリメントで、コンシューマーラボのTod Coopermanは、カプセル入りサプリメントはヨーグルト同様に注意深く輸送・貯蔵されなければならないという。彼らの検査では12製品中2製品は表示されている細菌数の2/3以下だった。
最近FDAは糞便移植を治験薬に分類した。FDAは治療の有効性と安全性を確保するのが仕事で、健康的細菌を移植することも同じである、としている。

  • ワクチンへの信頼を測定する:一般の人々のワクチンの懸念を分析するためのメディアサーベイランスシステムで得られたデータの解析

Measuring vaccine confidence: analysis of data obtained by a media surveillance system used to analyse public concerns about vaccines
Heidi J Larson et al.,
The Lancet Infectious Diseases, Volume 13, Issue 7, July 2013, Pages 606–613

コメント:ワクチンについての恐ろしい話に対してコミュニティに免疫をつける
Inoculating communities against vaccine scare stories
Natasha Sarah Crowcroft and Kwame Julius McKenzie
The Lancet Infectious Diseases, Volume 13, Issue 7, July 2013, Pages 564–565
予防接種が成功するための最大の障壁は人々のワクチンへの信頼の欠如である。ワクチンへの信頼はソーシャルメディアやニュース報道が流す安全性への懸念により何度も何度も損なわれてきた。

  • 1990年代半ばから英国とカナダの糖尿病による死亡率が大きく減少

Huge falls in diabetes mortality in UK and Canada since mid-1990s
26-Jun-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-06/uog-hfi062613.php
Diabetologiaに発表。全ての年齢層において糖尿病患者での過剰死亡リスクが減り、64才以下では25-40%、64才以上では50-65%減った。糖尿病患者そのものは増えている。

  • 飲み込んだナノ粒子の毒性

Ingested nanoparticle toxicity
26-Jun-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-06/ip-int062613.php
International Journal of Biomedical Nanoscience and Nanotechnologyに発表されるレビューによると、典型的な環境中に存在する量のナノ粒子を飲み込んだ場合の有害影響はありそうにない。慢性暴露による腸内免疫機能やタンパク質プロファイル、微生物バランスへの影響は根拠が不十分。

  • 野生と栽培種のトマトの遺伝子を比べる

Comparing genomes of wild and domestic tomato
26-Jun-2013
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2013-06/uoc--cgo062613.php
PNASに発表された、トマトのDNA配列と発現している遺伝子の比較。
オープンアクセス
Comparative transcriptomics reveals patterns of selection in domesticated and wild tomato
Published online before print June 26, 2013, doi: 10.1073/pnas.1309606110
PNAS June 26, 2013
http://www.pnas.org/content/early/2013/06/21/1309606110.abstract
京都産業大学も協力