食品安全情報blog過去記事

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Berkeley Wellnessから

  • 専門家に尋ねよう:赤いパーム油

Ask the Experts: Red Palm Oil
by Berkeley Wellness | July 26, 2013
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/diet-weight-loss/article/ask-experts-red-palm-oil
Q: 赤いパーム油はDr. Ozの言うように「ミラクル」なのか?
A: まずそんなことはない。Dr. Ozが保証する他の多くのものと同様、その科学的根拠は驚くほど少ない。彼は赤いパーム油が心疾患や腹部の脂肪を減らし加齢を遅らせ認知症や肝疾患や骨の消失を予防すると主張する。彼のテレビショーでは赤いパーム油が「2013年に発見された最もミラクルな食品だという。
赤いパーム油はサプリメントとしても販売されているが、東南アジアやアフリカの椰子の実由来の単に加工度の低いパーム油である。精製されたパーム油と脂肪酸組成は同じで、飽和脂肪と単価不飽和脂肪が多い。ただ精製された油と違うのは、αカロテンやβカロテン、リコペンなどのカロテノイドが多いため黄みがかった赤い色になっている。
今年International Journal of Food Sciences and Nutritionに発表された論文によると、赤いパーム油にはビタミンEや心臓によいステロールも含まれ、他の最近の論文ではフェノール化合物や抗酸化能を指摘している。一部の研究では赤いパーム油を食べると血中カロテノイドが増え抗酸化レベルが上がったという。しかしこれらは植物性食品の多くで見られる。さらにこれらは心疾患を減らすなどの医学的利益を証明したものではない。実際2003年のBiomedical and Environmental Sciencesの論文では6週間この油を食べた中国人男性の血中コレステロール濃度は良くも悪くも変わらなかったことが報告されている。赤だろうと精製だろうとパーム油の影響についてのヒト研究は少なすぎる。
あなたの食事に赤いパーム油を加える必要はない。カロテイノイドをとりたければいろいろな色の野菜や果物を食べればよい。ビタミンEは全粒穀物や種子やナッツから摂れる。さらにパーム油生産がマレーシアやインドネシアでオランウータンの棲む森を破壊しているという懸念がある。Dr. Ozの「ミラクル」には全て懐疑的になったほうが賢明であろう。

  • 大丈夫:タピオカパールの問題

Be Well: Tapioca Pearl Problems
by Berkeley Wellness | July 26, 2013
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food-safety/article/be-well-tapioca-pearl-problems
Bobaミルクティー、別名パールミルクティー、バブルミルクティーは、タピオカと呼ばれる小さな黒いでんぷんの球を含む冷たくて甘い飲み物である。私は暑いときにはいつも飲んでいる。アジアが発祥で米国の学生や子ども達に人気の飲み物となった。キャッサバから抽出したでんぷんのボールは噛みごたえがあって美味しい。
昨年の秋、ドイツから発表された報告がこの飲料への渇望を急速に冷やした−タピオカボールががんの原因になるかもしれないと示唆したのである。世界中のメディアがこの報告を事実であるかのように取り上げた。それを吟味してみよう。
Aachen大学病院の研究者らが名称不明の台湾のチェーン店のタピオカボールを調べ、スチレンとアセトフェノンと臭素を含む未同定化合物を検出した。この研究の主著者やメディアはこれをPCB類だとした。EPAがずっと昔にPCB暴露は動物でがんを誘発する可能性があると結論している。PCBに労働環境で暴露されたことと肝臓がんや悪性黒色腫が関連するという報告がある。しかし関連は因果関係を意味しないことに注意しよう。
台湾政府はすぐに対応した。台湾消費者保護委員会は7製造業者から22のタピオカパールを集めて検査し、スチレンは検出されなかった。臭化ビフェニルとアセトフェノンは検出したが極微量で健康への影響は考えられない。残念ながらサンプルサイズが小さく検査の詳細は発表されていない。
FDAも対応した。FDAのスポークスマンであるNoah Bartolucによればアセトフェノンとスチレンは塩素も含まずビフェニルでもないのでPCBではない。これらは芳香族化合物ではあるが、芳香族であることそのものが毒性学的懸念の理由となるわけではない。つまり研究者やメディアはこれらの物質を危険な可能性のある化合物であるとするのは間違っている。アセトフェノンやスチレンはPCBではないだけではなく香料として食品に添加することが認められておりそのようなものとして規制されている。FDAはこれらの物質について米国で販売される食品に使われる前に安全性を評価している。
臭素を含む化合物については、ドイツの報告では量も名前も特定していない。実際彼らは検出した物質のどれについても量を報告していない。毒かどうかは量によるのでこれは重要である。さらにドイツの報告はピアレビューのある雑誌に発表されたものではなく科学に貢献するものではない。
メディアがこの問題を大きく取り上げたのは台湾の食品が汚染されていた前例があるからであろう。2011年に台湾の食品や飲料からDEHPが検出された。この件では台湾政府は2011年6月に大規模調査を行いDEHP含有製品を排除した。FDAも台湾産食品のサーベイランスを強化し、2013年7月時点で特に台湾産の食品に問題は報告されていない。
この話は不完全で不正確な情報が不必要な恐怖を産みだし急速に拡散することの古典的事例である。私はドイツの研究者らが何をどのくらい検出したか、台湾政府の検査の詳細を知りたい。
もしあなたがタピオカティーについて心配していたなら、心配する必要はない。がんの心配はない。ただし、タピオカパールはカロリーが高く、飲み過ぎは健康的な食生活とは言えないだろう。バランスが重要である。私は今でもこの飲み物を楽しんでいるが、もちろん適度に、である。
(「毒澱粉」の話ではないところがまた)