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水道水中の農薬:地域差は国のリスク評価の結果を変えない

Pesticides in tap water: regional variations do not alter the findings of the national risk assessments
05/09/2013
http://www.anses.fr/fr/node/98428
水道水は残留農薬への食事暴露全体にどのような寄与をしているか?地域差は認められているか?水道水を飲むのは何がリスクなのか?
他の食品のように、水道水は農薬汚染を受けやすい。ANSES(フランス食品衛生安全庁)は食事全体からの農薬暴露における水の役割と、リスクの観点から汚染の地理的変動の影響を評価するために専用の研究を行った。この研究は、フランス残留農薬観測所(ORP)が実施し、殺虫剤削減計画の一部として水と水環境のためのフランス政府機関(ONEMA)から資金を提供された。
全体として、106物質を調査し、水中農薬濃度の地域差はこれまでの国のリスク評価の結果を変えないこと、食事全体からの農薬暴露への水の寄与は概して低いことがこの研究により示された。
「農薬」という用語は、望ましくないと考えられている有機体(植物、昆虫、菌類、齧歯動物、細菌など)の予防や管理や除去に用いられる物質や製品を指す。従ってこの用語は農業で使われる植物保護製品だけでなく、殺生物剤、ある種のヒトや動物用駆虫薬剤も含む。使用状態や環境の特質により、これらの農薬は環境内(空気、水、土)や水を含む食品中から見つかる可能性がある。しかし、水道水は単一供給源としてヒトが依存するため他の食品とは区別され、水源の汚染には地理的、時間的変動がある。

〈非常に多くの検査に基づいた研究〉
この研究の目的は、主に水道水からの住民の農薬への食事暴露を評価することであり、これを基に、摂取した水由来暴露のリスクを評価することである。
この研究はすべて、2007~2009年に厚生労働省がおこなったSISE-Eaux水に関する健康環境情報制度から570万以上の健康調査のデータを抽出したものに基づいており、この検査は約8万の検体の501の残留農薬についてのものである。
従ってこの研究は第二回トータルダイエットスタディ(TDS2)の結果と、年次ANSES/ORP食事暴露モニタリングにおける意見や国の食品モニタリングプログラムの定義を補完するものである。これは、水の汚染に地域差があるので、補足的である。汚染はこのようにそれぞれのサンプルの観測点や各サンプルについて検討されている。

健康調査で調べられた501の残留物中:
 210は定量できなかった(定量するには低すぎる)
 33物質:不十分あるいはデータがないため結論できない

残り258の残留物は224物質あるいは化合物グループからなる。
 その224農薬については:
・水と固形食品の汚染データがある106の農薬に集中して解析した。
・残りの118物質は、使用状況と先のリスク評価と物理化学的性質から、それらはほとんど固形食品で検査されたことはなく、それゆえ総食事暴露中の水の寄与の評価に含めることはできない。たとえば、クロルトルロン、ベンタゾン、グリホサートなどである。
これらのデータに基づき、水による暴露の割合を算定し、全体の食事暴露と比較した。それぞれの物質について、リスク評価のためにこの値と毒性参照値(長期リスクのための一日摂取許容量ADI、短期リスクのための急性参照用量ARfD)と比較した。

〈この研究からわかった結果と見解〉
国のレベルでの(水と固形食品の)全体的な評価ができた106物質については、総食事暴露への水の平均的な寄与は、8つの農薬と代謝物質:アトラジン、シマジン、オキサジキシル、プロポキスル、ベナラキシル、メトラクロル、ジウロン、ヘキサフルムロンを除いて、5%未満である。
水の寄与は農薬の使用に密接に関係している。除草剤の使用は、水中の総量の大きな割合を占める。
いくつかの物質は、農作物によっては、同じ地域でも水からの暴露量が違う。
長期(慢性)リスクについては、この研究は、一日摂取許容量(ADI)に対する水の寄与は低いことを示している;現在禁止されているアトラジン、カルボフランの2つの物質とそれらの代謝物を除くと1%未満である。これらの物質については、一日摂取許容量(ADI)への寄与は5%未満である。
この研究の結果、水の汚染における地域差を考慮しても、先のリスク評価(TDS2)の結果を実質上変えることはない。一日摂取許容量は2つの物質についてのみ超過した:TDS2研究ですでに確認されているジメトエートと、現在禁止されているプロパルギットである。
短期(急性)リスクについては、急性参照用量(ARfD)を超える事例は観察されなかった。

〈この研究の結果〉
・この研究の結果、水道水の基準違反に関して厚生労働省からの要求でANSESが求められて提案された最大健康基準の制定のための条件に変更は必要ない。
・この研究結果は、特に食品ではあまり検査されたことのない物質について、食品中残留農薬モニタリング計画を作成するANSES/ORPによる年次研究のための情報として提供される。
この研究によりANSESはいくつかの助言を述べることが可能である、特に:
・水の監視は、この研究で結論できなかった物質についてのために、小さな分布単位で維持し、あるいは強化すべきである。
・加えて、さらなる研究が必要である。それによりある種の農薬の健康への影響の理解を進め累積影響や内分泌撹乱農薬の低用量での影響を推定する助けとなるからである。
報告書本文 フランス語
Report: “The assessment of the risks linked to pesticide residues in public drinking water: their contribution to total alimentary exposure” (in French)
http://www.anses.fr/fr/documents/ORP-Ra-PesticidesEau.pdf