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ハチの多様なストレス要因のリスク評価の総合的アプローチに向かうEFSA第18回科学会議 

EFSA's 18th Scientific Colloquium on Towards holistic approaches to the risk assessment of multiple stressors in bees
http://www.efsa.europa.eu/en/supporting/pub/509e.htm
今年初旬、イタリアのパルマに100人以上のハチの専門家が集まり、ハチの多様なストレス要因のリスク評価に関する最新の科学的知見について議論した。EFSAの第18回科学会議は蜂群喪失の多様な原因発端について科学者の間で意見が一致しつつあることを受けて開催された。会議報告書は開催スピーチの要旨、グループ討論結果の概要、最終本会議の結論を含む。
報告書の結論部分(p54)
会議中に提示されて会議の最後に「重要メッセージ」として示された、いくつかの確認事項がある。
・複数ストレス要因のリスク評価は複雑なので簡単な答えはない。
・ミツバチについて多くのことが知られているが、野生のハチについてはその生物学、ストレス要因への応答、受粉に果たす役割など、あまり知られていない。ハチ集団全体が食品生産、農業経済、生物多様性一般に関して重要なので、ミツバチについてだけ焦点を当てることはできない。
・私たちは蜂の集団の抵抗力と回復力や受粉機能について知らないし(たとえば、ハチが撹乱にどう反応しどれだけ早く回復するのかなど)、ハチの消失の閾値はどこか(ハチの集団が回復できないあるいは受粉能力が失われる前に、どのくらいの消失なら耐えられるのか)も知らない。分岐点はどこか?餌採集担当集団減少のようなストレスは集団レベルにいつ影響を与えるのか?ハチの多様性の消失は受粉にいつ影響を与えるのか?個々の例から集団への影響を推定するのは難しい。私たちは許容できる消失の生態学閾値を理解する必要がある。
・エンドポイント/保護目標ははっきり確認する必要がある。法律はあいまいである―特に様々な関係者が異なる優先事項を持っているときには、どうやって特定の保護目標を設定するのか。
・いくつかのツールや指標はあるが、政策決定のための情報には研究が必要であり、他のツールや指標を開発する必要がある。モデルはデータがある場合にのみ役にたつ。研究者は不足しているデータを特定して基本的データを作り出す必要があり、その後で適切なモデルを用いて予想することができる。
・ストレス要因は農業だけでなく、より広い地勢に由来するので、モニタリングや緩和策は農業に限るべきではない。
・情報の流れを改善し消費者がより良い選択ができるようなより良い情報を与えるためには全ての関係者(科学者、養蜂家、農家、政策決定者など)間の効果的なコミュニケーションが必要である。これは現存のデータ一式を整理して利用することを含む。
・多くの研究ギャップは確認されていて、ハチと授粉の多様なストレス要因とリスクを理解し管理を前進させるための出資が必要である。