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後からわかるハザード−栄養サプリメントの安全性モニタリング

Hazards of Hindsight — Monitoring the Safety of Nutritional Supplements
Pieter A. Cohen, M.D.
N Engl J Med 2014; 370:1277-1280April 3, 2014
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1315559
CDCの疫学者が最近人気のあるサプリメントOxyElite Proが重症肝炎の集団発生の原因であると確認した。重症患者が出始めたのは2013年5月であるが、危険なサプリメントを排除する役割をもつFDAが知ったのはその4ヶ月後である。2014年2月までにCDCは97症例をみつけ、47人が入院、3人が肝移植、1人が死亡した。このサプリメントはリコールされたが、他のサプリメントによる死亡や臓器不全を防ぐための対策はとられていないしFDAの危険なサプリメント検出機能を強化するための変化もない。
FDAの対応が遅れたのはサプリメントの安全性を監視するシステムに欠陥があるからである。アメリカ人は年に320億ドル以上もサプリメントに費やしているがこれらは処方薬と違って市販前に認可は必要ない。1994ダイエタリーサプリメント健康教育法により、サプリメントと表示されているものは安全でないことが証明されない限り安全だとみなされる。FDAが危険なサプリメントを排除できるのはそれが害をもたらした後でのみである。
危険なサプリメントは広く販売されている。既に500以上のサプリメントに医薬品成分やその類似体が含まれることが発見されている。2013年だけでも研究者らは2つの新しい覚醒剤を広く販売されているサプリメントから発見している。私と同僚は新しいメタンフェタミン類似体N,α-ジエチル-フェニルエチルアミン (N,α-DEPEA)を、人気のあるスポーツサプリメントから同定した。FDAの科学者はアンフェタミンの類似体β-メチルフェネチルアミン(β-MePEA)を9つのサプリメントから同定した。
サプリメントによる害の迅速な検出は消費者のリスクを最小化するために必須である。FDAは現在MedWatchに頼っているが過小報告と不完全な報告が問題である。またサプリメントは消費者に直接販売され、成分が多く、あまりにもしばしばラベルが不正確であるため報告が難しい。
ハワイのOxyElite Proの事例ではCDCまたは地元の公衆衛生当局が最初の検出者だった。MedWatchにに報告されたのは当局の調査が始まった後である。同様に2008年にはマルチビタミン剤によるセレン中毒で200症例以上がでたがMedWatchは役にたたなかった。2011年のDMAAについては軍による使用禁止後、FDAがデータを集めて警告を出すまで16ヶ月かかった。FDAのDMAAを排除する努力にもかかわらずDMAAは何十ものサプリメントにまだ入っている。2014年の冬季オリンピックではDMAAを使用したとして3人のオリンピック選手が停止処分を受けたが全て意図せずサプリメントに入っていたものである。
何ができるだろうか?現在サプリメントの安全性に関する情報をより多くFDAに提供するような法案が検討中である。しかしそれはFDAの危険なサプリメントの検出能力を改善しない。
米国におけるサプリメント関連有害事象を迅速に検出するための効果的サーベイランスシステムが必要である。
しかしそれでも危険なサプリメントが消費者の手に届くことを予防できない。サプリメントの安全性を確保するには法律を変える必要がある。市販前に安全性検査が必要だ。そうしない限りダイエタリーサプリメントの安全性は保証できない。
(インタビューが音声データで提供されている)