食品安全情報blog過去記事

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レスベラトロール関連

HypeWatch: Resveratrol Study Not a Shocker
May 13, 2014 By Crystal Phend,
http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Prevention/45762
JAMA Internal Medicineに発表されたレスベラトロールの食事からの摂取量を直接測定した研究で長寿や心臓の健康やがん予防に関連はないことが示された。
レスベラトロール代謝が早く血中濃度は低く影響があるとは思えない。しかし人々は愚かにもこれをワインをたくさん飲む言い訳にする。この研究は食事についてのものでサプリメントについては意見できない。サプリメントについての研究は矛盾した結果が出ている。さらにこの分野では有名なレスベラトロール研究者のDipak K. Das博士による効果があるという結果に多数のデータ改ざんが見つかっている(http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20120612#p12)。GlaxoSmithKlineなどの製薬企業は開発を断念した。しかしDr.Ozなどが宣伝したおかげで年に3000万ドルの市場になっている。
前臨床で興奮してヒト試験でがっかりする他の多くのものと同様レスベラトロールの報道は段々トーンダウンしている。New York Timesは2006年に「イエス、答えは赤ワイン」と宣言し、2011年には「疑わしい」と表明し2011年には「効果がない」とした。そして今回は完全に無視したようだ。
International Business Timesのみが「新しい展開にショック」といっている。CNNなどの多くは食事由来とサプリメントでは用量が違うことを指摘している。ただサプリメントが効果があるかどうかは不確実だと引用している。女性誌ELLEは「精神衛生上のメリットは忘れないで」と付け加えている。(チョコレートが好きなら、適量食べるのに言い訳なんかいらないでしょうに)

National geographic
Resveratrol Redux, Or: Should I Just Stop Writing About Health?
by Virginia Hughes
http://phenomena.nationalgeographic.com/2014/05/12/resveratrol-redux-or-should-i-just-stop-writing-about-health/
健康に関する科学はとても混乱するもので、ジャーナリストである私にとって健康については何も書かないのがベストではないかと思える。少なくとも書き方は大きく変えなければ。
最近の大きな話題はレスベラトロールで、New York Timesの過去記事を検索すると156件ある。ここに見出しの一部を示す。
2003年8月:赤ワインから寿命を延ばす物質が見つかった
2006年11月:イエス、赤ワインが答えをもっている
2011年1月:医薬品の試験が中断してアンチエイジング分子に疑問
2011年8月:肥満マウスに長生き、ヒトに希望
2012年1月:赤ワインの研究者に大学が不正疑い
2012年11月:レスベラトロールは正常体重の女性に効果はない
2013年3月:レスベラトロールに新しい楽観論
頭がくらくらしない?
個々の記事は間違ってはいない。ほとんどが新しい研究に基づいて研究に関係ない科学者の多様な見解も紹介している。記事が矛盾しているのは研究結果が矛盾しているからだ。
科学にはいつだってこういうことがおこる。二歩進んで一歩下がって科学は進む。
しかし健康についての記事を書くときには、読者がわかるように科学のゆっくりした歩みを書くのはほんとうに難しい。読者が求めているのは知的好奇心を満たすことではなくどうしたら長生きできるか、体重を減らせるかといった具体的な実践の知識である。
妊娠中の飲酒やがん検診のような話に比べればレスベラトロールはそんなに深刻ではない。しかしアマゾンをレスベラトロールで検索するとサプリメントを含むいろいろなヘルスケア製品が何百ドルもの値段で販売されている。
からしっかりした科学雑誌JAMA Internal Medicineに発表された研究は、レスベラトロールを買ったり買おうとしたりしている私の読者にとって重要だろう。たとえ将来レスベラトロールについて何らかの有用性が報告されるとしても、今私ができることは現在の知見を紹介することだろう。それは何もしないよりいいことだよね?でも−そうではないかもしれない。もう一度過去のたくさんの見出しを見る。読者は科学にはついていけないといって立ち去るのでは?
私には解決法がわからない。私は人々には正確な情報を得る権利があると信じるから健康に関する記事を書き続けるだろう。そして私はたとえゆっくりでも科学が進歩していることは信じている。
それでもジャーナリストにはもっといいやり方があるのではないか?最新のレスベラトロールの研究をどう伝えるべきか?たくさんの論文をまとめて全体を伝えるべきか?見出しに問題はないか?
どういうものがいいか教えて欲しい。

そこでこれ

  • 医療ニュースを読むためのガイド

A Guide to Reading Health Care News Stories
Gary Schwitzer,
JAMA Intern Med. Published online May 05, 2014
http://archinte.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=1867181
オープンアクセス
HealthNewsReview.orgのチームが2006年4月16日から2013年5月30日まで新しい治療法や試験や製品、方法についての米国のニュース報道を評価した。全部で1889の話をレビューしたところ、ほとんどが失格だった。
・リスク削減が相対表示で絶対数を知らせない
・観察試験の限界を説明しない
・患者の物語だけ強調
・情報源が一カ所だけ
・代理指標だけでは病気はわからない
・検査についてメリットとデメリットのトレードオフを説明しないでメリットだけ誇張
・新しい技術をあがめ奉る
・無批判に業者の宣伝に乗る
著者はこの人
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20090401#p6