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過塩素酸イオン:ANSESの研究と助言

Perchlorate ions: ANSES's studies and recommendations
04/06/2014
http://www.anses.fr/en/content/perchlorate-ions-ansess-studies-and-recommendations
ANSESの水研究所が2011年に行った国家測定キャンペーンの期間中、フランスのいくつかの州でヒトの飲料水(WIHC)に過塩素酸イオンが検出された。これらのイオンは甲状腺ホルモン合成の初期段階の一つである、甲状腺によるヨウ素吸収を妨げる。保健省の要請で、ANSESはWIHCと最も感受性の高い人口集団である0-6か月の乳児の調整乳中の過塩素酸イオンの存在による健康リスク評価を行った。計算された暴露量では、ANSESは、一部の乳児では2011年にANSESが設定した毒性参照値を上回るリスクを除外できないと結論した。従って、ANSESは乳児の調整乳中の過塩素酸イオン濃度を低くすることを推奨し、水道水の過塩素酸イオンの濃度が4 µg/Lより高い場合は、政府が情報を国民に知らせることと、6か月以下の子供達の水道水摂取を制限することを提案した。
ヒトが消費する水に過塩素酸イオンが存在することは、民間(航空機関連学)及び軍(発火製品)用として過塩素酸アンモニウムが製造されている地方であるアキテーヌ及びミディピレネー地方で2011年に報告されている;実際、過塩素酸アンモニウムは特に軍隊と航空分野で数多く工業利用されている。他の汚染源の可能性(天然由来、チリ硝石、水殺菌に使用される産業用次亜塩素酸塩溶液の不純物)は排除された。
ヒトでは過塩素酸イオンは甲状腺でのヨウ素吸収を抑制し、甲状腺ホルモン合成に干渉する。WIHCの過塩素酸イオンの健康リスクに関する意見は2011年にANSESが発表した。
この意見で、ANSESは毒性参照値(TRV 0.7 µg/kg bw/d)と飲料水のガイドライン値(15 µg/L) を提案した。このTRVは初期の生物学的影響に基づき、最も影響を受けやすい集団を考慮して提案された(特に妊婦、新生児、6か月以下の子供達のため)。この値に基づき、保健衛生総局(DGS)は2つの管理ガイドライン濃度を設定した:成人には15 µg/L、6か月以下の子供達には4 µg/L。

水道水の過塩素酸イオン汚染の国家地図案とミルクに関する研究
2011年の意見に続いて、ANSESのナンシー水研究所は水道水とWIHCの過塩素酸イオン汚染のサンプリングと分析キャンペーンを実施した。これによりフランスで生産された水の25%を表す国全域の地図を作製した。フランスで販売されているボトル入り水も分析した。
更に、6か月以下の子供達は過塩素酸イオンの影響を受けやすい集団なので、ANSESはDGCCRFと共にフランスで市販されている乳児用ミルクの過塩素酸イオン濃度を測定するサンプリング計画を実施した。
WIHCと乳児用ミルクのデータを合わせたものを、6か月以下の子供達の過塩素酸イオンへの暴露を計算するため、そして2011年7月にANSESが設定したTRVに関する健康リスクを評価するために利用した。

結果
ナンシー研究所のサンプリング及び分析キャンペーンでは、分析された703の検体の3/4で過塩素酸塩濃度が0.5 µg/L以下だと分かった。過塩素酸イオンは地下水、特に汚染源がわかっているノールパドカレー地方で見つかった。過塩素酸塩第一次世界大戦の関連が推測されたが、その地域での産業活動からの寄与の可能性は除外できなかった。
4 µg/Lの管理濃度を超過している状況は、主にノールパドカレー地方で、水処理と生産施設のおよそ2%で存在した。この国家キャンペーンは成人に適用される管理濃度15 µg/Lを超える水処理や生産施設はないということを示した。
2012年に始めたフランスの市場で入手できる乳児用ミルクの過塩素酸イオン濃度を測定する調査の結果は、6か月以下の子供用の過塩素酸塩が入っていない水で作った乳児用及びフォローアップミルクはそれぞれ平均濃度1.8 µg/L と 2.8 µg/L、最大レベル8.7 µg/Lと 10.2 µg/Lだった。
だが、ミルクを作るのに使われる水が2 µg/L以上の過塩素酸イオンを含むとき、6か月以下の子供達の5%にTRV超過が生じる恐れがある。

ANSESの助言
得られた結果を考慮して、ANSESは次のことを薦める:
 製造業者はフランスで市販されている乳児用ミルクの過塩素酸イオン濃度を減らすこと。
 乳児用ミルクの過塩素酸イオンの汚染源に関する情報が不足しているので、汚染源の調査をさらに行うこと。
 水の汚染源の調査を続行すること。
 4 µg/L以上の過塩素酸イオンを含む水を飲む人たちに情報を提供し、6か月以下の子供達にその水の消費を制限するように推奨すること。
ヒトの過塩素酸イオンの健康影響評価においてヨウ素の栄養状態が重要である。
実際、ヨウ素欠乏症は過塩素酸イオンが甲状腺への影響を持つ可能性を高くする。
ゆえにANSESは3歳以下の子供たちと妊婦と授乳中の女性のヨウ素摂取に関する最新のデータを集めることを推奨している。

進行中あるいは近日行う他の研究
果物や野菜が暴露源となりうるので、これらの食物の過塩素酸イオン濃度の測定が現在行われている。これは子供と成人の食物暴露評価の実施につながる。
更に、InVSは、体系的な先天性甲状腺機能亢進症スクリーニングプロセスの一部として、新生児の甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度と水の過塩素酸イオン濃度との関連の可能性について、ノールパドカレー地方での疫学調査を実施している。

追加情報
・フランスの乳児用ミルクと飲料水の過塩素酸塩の存在に関するANSESの意見(フランス語)
http://www.anses.fr/en/documents/EAUX2011sa0336.pdf

・特定の集団での飲料水中の過塩素酸塩への暴露と甲状腺機能との関連についての疫学調査に関するANSESの意見
http://www.anses.fr/en/documents/EAUX2012sa0119EN.pdf

・ヒトが消費する水の新興汚染物質の存在に関する国家キャンペーン、第1巻:過塩素酸塩‐ニトロサミン(フランス語)
http://www.anses.fr/en/documents/LABO-Ra-PolluantsEmergents-T01Ra.pdf

・InVSホームページ
http://www.invs.sante.fr/