食品安全情報blog過去記事

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その他

  • 飲酒と心血管系の健康についての専門家の反応

SMC UK
expert reaction to alcohol intake and cardiovascular health
July 11, 2014
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-alcohol-intake-and-cardiovascular-health/
飲酒量が少ないことと心血管系の健康状態がよいことの関連についての研究がBMJに発表された
King’s College London遺伝子疫学Tim Spector教授
この25万人以上の印象的な国際研究は、飲酒が健康によいという教義を受け入れるべきではないと正しく結論している。遺伝子マーカーは時に、信頼できない質問票より、良く行動を評価できる。しかしながらこの研究はアルコール不耐遺伝子が、測定されていない心疾患を減らす行動または性質を同時にもっている可能性があるため、限界がある。例えば腸内細菌が違うかもしれない。臨床試験は困難なので、これらの遺伝子データと経時的飲酒習慣の変化を組み合わせることでさらにわかることがあるだろう

Sheffield大学コンサルタント心臓専門医Tim Chico博士
大好きなお酒が心臓病を予防するという考えは深く浸透していてしばしば魅力的である。残念ながらお酒が予防効果があるというのは話がうますぎる。この研究はメンデル無作為化と呼ばれる方法を用いてライフスタイル要因と疾患の間違った関連づけを避けようとした。その結果飲酒が保護作用があるという根拠は見つからず、むしろ飲酒は心疾患リスクを増やすことが示唆された。これはまだ決定的なものではなく確認が必要であるが、保護作用に根拠がないことは確実だろう。
少量飲酒に健康上のメリットがあったとしても、ごく僅かであろう。私は人々が、医者が違うことを言うと混乱することはわかっている。私が患者にお願いするのは、こんな感じである−我々の心疾患の原因についての理解は大きく進んだとはいえ、根絶に向かう行程のほんの始まりにいるだけである。スタチンや食事や運動などについていろいろな議論があるが、それは根絶に向かう行程の一部である。医学研究が無駄だと考えないで欲しい。心疾患リスクを減らすには、野菜や果物の販売店へ歩いて行くことで、酒屋に車で行くことではない。

  • 科学論文の1%

The 1% of scientific publishing
ScienceInsider
By Erik Stokstad 11 July 2014
http://news.sciencemag.org/scientific-community/2014/07/1-scientific-publishing
毎年論文を発表する科学者は非常に少なく、1%以下であることが新しい研究でわかった。雑誌によく発表している150608人の科学者が全ての論文の41%に名前があり、引用の多い仕事についてはこのエリート集団が共著になっている論文は87%。PLOS ONEに発表された研究。Elsevierの Scopus データベースを用いて1996年から2011年の間に世界中の1500万人の科学者が発表した論文を調べた。
他作の科学者は大抵研究グループのトップや研究室のヘッドで、その背景には多数の安価な労働力を提供している学生がいて、研究システムは若い科学者の労働を搾取している。

  • 粉ミルクの缶を開けたら死んだトカゲ

Disgusted mother opens tin of baby formula and discovers dead LIZARD
13 July 2014
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2690340/Irate-mother-bought-tin-powder-powder-LIZARD-lounging-inside-says-discovery-absolutely-disgusting-unacceptable.html
シドニーのColesストアで買った赤ちゃん用のミルクを開けたら死んだトカゲが入っていた、という写真をColesストアのフェイスブックに投稿、大量のコメントが寄せられたくさんのユーザーがシェアしている。製品はAspen NeutritionalのS-26 ORIGINAL PROGRESSでシンガポールで製造されている
(こういうのは調査を待たずネットですぐ拡散する・・)

  • Michael Imaniは患者の大腸に穴を開けたため訴えられる

Casewatch
Michael Imani Sued for Perforating Patient's Colon
Stephen Barrett, M.D.
http://www.casewatch.org/civil/imani/complaint.shtml
大腸洗浄で患者の腸に穴を開けたMichael Imaniはアトランタで病院を経営していてこのクリニックでは2万回も洗浄をしていると証言していたが彼の学位は認証されていない大学により授与された「臨床催眠術師"Ph.D. in clinical hypnosis"」であり偽りの「認証」宣伝をしていた。使用機器も「FDAが認可した」と嘘の宣伝をしており違法。
(お金で買える学位でドクターを称して「治療」している人たちがたくさんいる。)

  • 医師は検査結果を理解しているか?

Do doctors understand test results?
By William Kremer 6 July 2014
BBC World Service
http://www.bbc.com/news/magazine-28166019
医師は統計に混乱している?著名な統計学者による新しい本はそうだと言う、そしてこのことは患者が治療について情報を与えられた上での決定をすることを難しくしている
不確実性と意志決定の専門家でベルリンのリスクリテラシーハーディングセンター所長のGerd Gigerenzerが行った調査がある。2006年から2007年の間に婦人科の臨床医対象の統計ワークショップを行った際に質問をしている。
症状のない50才の女性がマンモグラフィー検査をして陽性の結果になった。彼女について他のことは全く知らない場合、この女性が実際に乳がんである可能性に最も近いのはどのくらいか?
・10分の9
・10分の8
・10分の1
・100分の1
次にいくつかのデータを提供する。(この数値は1990年代の米国のもの)
1.1人の女性が乳がんである可能性は1%(「有病率」)
2.もし乳がんなら、検査で陽性になる可能性は90%(「感度」)
3.乳がんでないのに検査で陽性になる可能性9%(「偽陽性率」)

あるセッションでは160人中約半分の婦人科医がこの女性が乳がんである可能性は10分の9だと回答した。正しい答えは10分の1であるが、それはたった21%だった。
乳がん患者の90%がマンモグラフィーで陽性になるということはマンモグラフィー陽性の90%が乳がんであることを意味しない。有病率の1%と偽陽性率の高さがマンモグラフィー陽性で心配している女性の10人中9人はがんではない、ということになる。
この数学のパズルに多くの人が混乱している。確率をパーセントで表すことは普通に行われているが混乱のもとである。彼はリスクは確率ではなくヒトの数で、可能であれば略図で表現することを薦めている。
1000人の女性がいて10人ががんである 990人はがんではない
10人のがん患者のうち9人は検査に陽性で1人は陰性である
990人のがんでない人のうち901人は検査に陰性であるが89人は陽性である
つまり検査に陽性な98人のうち9人だけががんである。

しかしそれでも、専門家でマンモグラフィー陽性と伝えられた女性のリスクを理解している人が少ないのは驚きである。このような数字に明るくない医師が女性にどれだけの不安を与えるかは想像するしかないが、ある研究ではマンモグラフィー偽陽性とされた女性の最大1/4が何ヶ月も経っても日常生活に影響を受けている。
もうひとつの混乱要因は生存率である。これは死亡率の単なる逆ではない。ある病気と診断されたヒトの、診断から5年後の結果を示すものであるが、死因がその病気によるかどうかについては何も語らない。
前立腺がんを例にしよう。多くの人がPSA検査をしている。ハーディングセンターの図では前立腺がんスクリーニングによって死亡リスクは変わらない。

50才以上の男性がPSA検査をして11年
早期検出しなかった1000人中  早期検出した1000人中
前立腺がんで死亡 7人   7人
他の原因での死亡 210人 210人
偽陽性だった人  −  160人
必要のないがん治療をした人  − 20人
残り  783人   603人

驚くべきことではないが、患者の誤解は医師より多い。欧州の1万人の男女にPSAスクリーニングと乳がんスクリーニングのベネフィットについて尋ねたところ、ほとんどの人がメリットを過剰評価していた。英国人女性の1/4は1000人をスクリーニングすると200人の命が救えると過剰評価していた。しかし実際の数値はスクリーニングしない1000人のうち5人が乳がんで死亡し、スクリーニングすると4人になる。これが「20%の死亡率削減」と宣伝され、誤解のもとになっている。
このような事例の悪名高いものは経口避妊薬の事例である。
(以下略、図は本文参照。これのさらにバランスの悪い事例が甲状腺がんスクリーニングになる)