食品安全情報blog過去記事

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論文等

SMC
Finnish ‘violent gene’ study – experts respond
October 29th, 2014.
http://www.sciencemediacentre.co.nz/2014/10/29/finnish-violent-gene-study-experts-respond/
フィンランドの犯罪者での研究で暴力的行動と関連するかもしれない2つの遺伝子が同定されたが専門家はこの結果の解釈には注意が必要であることを強調
フィンランドの895人の犯罪者のDNAを解析した研究でカドヘリン13とモノアミンオキシダーゼAの変異体との関連を示す。Molecular Psychiatryに発表。
UK SMCが専門家の意見を集めた
(略、いずれも「暴力遺伝子」などという誇張表現に警告。遺伝子検査などというものに誤用される可能性あり)

  • スパイスとハーブ:香り高い食生活により公衆衛生を改善する−行動要請

Spices and herbs: Improving public health through flavorful eating -- a call to action
28-Oct-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-10/wsc-sah102714.php
Nutrition Todayに付録として発表された、McCormick研究所とアメリカ栄養学会が5月に共催した学会プロシーディング。
Nutrition Today
September/October 2014 - Volume 49 - Supplement 5
http://journals.lww.com/nutritiontodayonline/toc/2014/09001
全てオープンアクセス
(効能はともかく、減塩には役立ちそうなんだけど)

Cold sore virus increases the risk of dementia
2014-10-13
http://www.medfak.umu.se/english/about-the-faculty/news/newsdetailpage//cold-sore-virus-increases-the-risk-of-dementia.cid241326
Umeå大学の二つの研究で関連が明確に示された
HSV1は多くの人が感染しているが、免疫機能が低下すると再活性化される。高齢者の弱った免疫が脳への感染拡大のチャンスを増やすのではないかというのが仮説。3432人を平均11.3年フォローしヘルペスの再活性化がアルツハイマー病のリスクの2倍と関連することを示した。
Reactivated herpes simplex infection increases the risk of Alzheimer's disease
http://www.alzheimersanddementia.com/article/S1552-5260(14)02421-2/abstract
Herpes simplex infection and the risk of Alzheimer's disease—A nested case-control study
http://www.alzheimersanddementia.com/article/S1552-5260(14)02770-8/abstract

  • CVD予防のために政府は健康的な食環境を作ることを先導すべき

Governments should take active lead to create healthy food environments to prevent CVD
28-Oct-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-10/ehs-gst102814.php
Canadian Journal of Cardiologyに発表されたカナダの15団体の共同声明
やるべきこととして
・健康的な食生活についての教育
・生鮮食品を食べることを薦める、それがなければ塩や砂糖や脂肪を加えない冷凍や缶詰を薦める
・より健康的な食品が手頃な値段で入手できるようにする
・年齢や文化に適した食品であるように確保する
・他の栄養素と同様に塩・遊離の糖・トランス脂肪・飽和脂肪・カロリーの基準を定める
・食品の基準を作るのに食事参照摂取量などを用いる
・個人の味覚の適応には時間がかかるので徐々に変化するようにする
・政策は定期的にみなおす
・実施状況を評価して必要であればインセンティブを導入する

Healthy Food Procurement Policy: An Important Intervention to Aid the Reduction in Chronic Noncommunicable Diseases
Norm Campbell et al.,
Canadian Journal of Cardiology
Volume 30, Issue 11, Pages 1456–1459, November 2014
関連
Death By Diet: The Role of Food Pricing Interventions As a Public Policy Response and Health Advocacy Opportunity
Tara Duhaney et al.,
Canadian Journal of Cardiology

  • 動物の研究が青少年期の大量飲酒は長く続く脳の変化に関連することを示唆

Animal study suggests heavy drinking in adolescence associated with lasting brain changes
28-Oct-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-10/sfn-ass102814.php
The Journal of Neuroscienceに発表されたラットの研究
若いラットに2週間、甘い水または甘いアルコールを飲めるようにしたところアルコールを飲んだラットの前頭葉前部皮質のミエリンが減っていて数ヶ月後でも減ったままだった。

  • ミルク摂取と男女の死亡と骨折リスク:コホート研究

Milk intake and risk of mortality and fractures in women and men: cohort studies
BMJ 2014;349:g6015
Karl Michaëlsson et al.,
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g6015?ijkey=b3f42236dbbcfdcc1733bdee87c467dc47589151&keytype2=tf_ipsecsha
スウェーデンの61433人の女性と45339人の男性からなる二つのコホートで食品質問票による調査を行っている。女性コホートでは2回目の食事調査を行っている。
女性コホートは平均フォローアップ20.1年で死亡15541人、骨折17252人でそのうち股関節骨折が4259人。男性コホートは平均フォローアップ11.2年で死亡10112人、骨折5066、股関節骨折1166。女性では1日に3杯以上のミルクを飲む人は1日1杯以下の人に比べて死亡のハザード比1.93 (95% 信頼区間1.80−2.06)。コップ1杯当たりの全死亡率の調整済みハザード比は女性で1.15 (1.13 − 1.17)、男性で1.03 (1.01 − 1.04)。ミルク摂取と骨折については女性は(1.02, 1.00 − 1.04)、股関節骨折は(1.09, 1.05− 1.13).。男性ではそれぞれ1.01 (0.99 −1.03)と 1.03 (0.99− 1.07).
(1日に600g以上の人が約10%もいる。日本人だと平均で100gくらいだったかな、最低摂取量200gという分類はあてはめられない)

エディトリアル
ミルクと死亡率
Milk and mortality
BMJ 2014;349:g6205
http://www.bmj.com/content/349/bmj.g6205
生物学的にありそうだが予備的な関連を解釈するのに遺伝子研究が役にたつかもしれない
臨床ガイドラインはますます試験による実験的根拠をもとにしたものが増えている。しかし食事や栄養の健康への影響については無作為対照化試験はほとんどない。食事ガイドラインや助言は、前向きコホート試験の観察結果によるものが多く、場合によるとたまたま他の複数の理由で長生きした人の食習慣を記述しただけのものを根拠にしている。
食事ガイドラインは特定の栄養素についての助言をしばしば最も信頼性の低い根拠(つまり、誰かの意見)に基づいて、欧州や北米の現在の普通の摂取量が至適であると仮定して、作っている。そのため、食事ガイドラインが必ずしも試験や実験で確認されなくても驚くにあたらない。今回Michaëlssonらはしばしば食事ガイドラインで強調されるミルクの役割について疑問を投じた。観察によりMichaëlssonらはミルクが女性の股関節骨折と男女の心血管系及び全死亡リスクを上げる可能性があるとした。
食事ガイドラインでは低脂肪のものを含む乳製品は骨の健康のためのタンパク質やカルシウム源として、あるいは一部の食事療法では高血圧予防のために薦められている。主に西洋諸国での前向き観察研究の根拠はミルク摂取の多さが股関節骨折や心血管系死亡率あるいは死亡リスクの低さと一貫して関連してはいない。食事は正確に評価するのが難しいので差があったとしても不明瞭になっている可能性がある。低脂肪乳が広く使われるようになったのは比較的最近のことで、その役割についてはさらに根拠が少ない。Michaëlssonらは全脂肪と低脂肪乳を分けてはいない。ミルクの役割、特に乳糖と虚血性心疾患についての懸念は何十年も存在している。北米や欧州では乳糖分解酵素が長く残りミルク摂取量が多いものの股関節骨折や虚血性心疾患も多い。
地域相関研究は仮説の強い根拠にはならないが、この観察は何らかの説明を要する。ミルク消費量の少ない国での股関節骨折や虚血性心疾患の少なさは運動などの保護要因に相関する可能性もあるしミルクが他の同定されていない要因と一緒に作用している可能性もある。
中略
ミルクは多くの食事ガイドラインで取り上げられていて股関節骨折と心血管系疾患は高齢者に多く、根拠に基づいた食事ガイドラインは誰にとってもメリットがある。世界的にメルクの摂取量は増加していて、ミルクの役割についてはきちんと確定される必要がある。