食品安全情報blog過去記事

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その他

  • Nectresseは砂糖より良い?

Is Nectresse a Better Sugar Substitute?
by Berkeley Wellness | November 05, 2014
http://www.berkeleywellness.com/healthy-eating/food/food-safety/article/nectresse-better-sugar-substitute
Q: Nectresseは砂糖の代わりに良い?羅漢果が原料なので健康によさそう
A:カロリーのほとんど無い甘味料として他のものと同じくらい良いだろう−でも果物由来だからといって「より」良いとは考えないように
羅漢果はアジア原産の小さな緑色のウリの仲間で、伝統的に天然甘味料や伝統薬として使用されてきた。中国南部の山の仏僧が13世紀に初めて食べたとされることからこの名が付いた。luo han guoとも呼ばれる。
2012年にJohnson & Johnson の子会社でSplenda のメーカーであるMcNeil NutritionalsがNectresseを発売し「オールナチュラル甘味料」と宣伝している。しかしそれほど「ナチュラル」ではない。天然由来成分でできてはいるが加工されていて「フルーツ」つまり栄養素や食物繊維は含まれない。さらにNectresseはエリスリトールと砂糖と羅漢果抽出物、糖蜜の混合物で、FDAの定義による「ノーカロリー(1回提供量あたり5カロリー以下)」の基準は満たすが全くカロリーがないわけではない。
Nectresseは誰でも使えて加熱で分解しないので他の砂糖代用品より苦味は少なく調理に使える。ただしConsumer Reportsの味見ではあまり芳しくなく、砂糖に劣ると評価されている。他にも羅漢果由来甘味料はある。
これらの製品は好みに応じて使えるが過剰宣伝には注意するように。

  • Nature書評

●科学の歴史:間違った行動をした化学者たち
History of science: Chemists behaving badly
Theodore Gray Nature 515, 34–35
http://www.nature.com/nature/journal/v515/n7525/full/515034a.html
「失われた元素:周期表の暗黒面The Lost Elements: The Periodic Table's Shadow Side」
Marco Fontani, Mariagrazia Costa and Mary Virginia Orna Oxford University Press: 2014.
の書評
存在しないものについてこれほどきちんと書かれたものは滅多にない。一部のものはサンプルの不純物や測定ミスなどのせいであるが、多くの元素は希望的観測、虚栄心、嫉妬、プライド、強欲の産物であった。例として61番元素フロレンチウムを発見したとする人たちの話など。

●化学:科学と文献の人生
Chemistry: A life in science and literature
Alison Abbott Nature 515, 36
http://www.nature.com/nature/journal/v515/n7525/full/515036a.html
回想録:錠剤からペンまでIn Retrospect: From the Pill to the Pen
Carl Djerassi Imperial College Press: 2014.
の書評
ピルの父であるCarl Djerassiの自叙伝。科学者を引退してからは作家として活躍。

  • あなたは赤ちゃんをお風呂に入れすぎている?

WSJ
Are You Bathing Your Baby Too Much?
By Dana Wechsler Linden Nov. 3, 2014
http://online.wsj.com/articles/are-you-bathing-your-baby-too-much-1415031555
科学者は入浴や汚染物質、部屋の暖房などが皮膚の保湿機能を妨げてアレルゲンや微生物から守るバリアが弱くなることがアトピー性皮膚炎の増加に寄与していると考えるようになってきた。アトピー性皮膚炎がアレルギー反応から始まると考えられてきたがアレルギーが悪いとみなすことでは予防法がみつからなかった。オレゴン健康科学大学のEric Simpson博士は乳児の皮膚のバリアを保護することがアトピー性皮膚炎予防に効果があるかどうかを調べた。その結果をJournal of Allergy and Clinical Immunologyに発表した。同じ号に日本からも同様の研究が発表されている。
これらはアトピー性皮膚炎予防のために私たちにできることがあることを示唆する。
Simpson博士はさらに大規模な確認試験を計画している。
米国小児科学会はウェブサイトで乳児の沐浴は週に3回以下にしてその後は皮膚が乾かないように香料を含まない低刺激性の保湿ローションをすぐに塗ることを薦めている。
多くの保護者はこの助言には従っていないようだ。米国での赤ちゃん用スキンケア用品の市場研究データを用いた解析からは平均で赤ちゃん用洗剤やシャンプーを週に5回使っている。
(日本だと毎日どころか1日何回も洗いましょうと言ってるところがある)

生まれたときから皮膚のバリアをエモリエントで強化することが効果的なアトピー性皮膚炎予防になる
Emollient enhancement of the skin barrier from birth offers effective atopic dermatitis prevention
Eric L. Simpson et al.,
Journal of Allergy and Clinical Immunology Volume 134, Issue 4, Pages 818–823, October 2014
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(14)01118-X/abstract
米国と英国の124人のアトピー性皮膚炎ハイリスク新生児での無作為対照試験。使用したのはひまわり油や流動パラフィン、クリームなど何種類かで、最低1日一回は全身に塗ることで有意なリスク削減がみられた。相対リスク0.5、95% CI, 0.28-0.9; P = .017

こっちは日本の
Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis
Kenta Horimukai et al.,
Journal of Allergy and Clinical Immunology Volume 134, Issue 4, Pages 824–830.e6, October 2014
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(14)01160-9/abstract

国立成育医療研究センターから先月プレスリリースがあった
世界初・アレルギー疾患の発症予防法を発見
http://www.ncchd.go.jp/center/information/topic/images/topic141001-1.pdf
(世界初がどこにかかっているのか不明だが雑誌のページでは英米の論文の次)

  • 高脂肪食が脳の加齢を遅くする

High-fat diet postponing brain aging
5-Nov-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-11/uoc-hdp110514.php
コペンハーゲン大学健康な加齢センターと国立健康研究所の研究プロジェクト
Cell Metabolismに発表されたマウス研究
(中身の紹介があまりない。)

  • 母乳を与える:やってもやらなくても恥

Breastfeeding: Shame if you do, shame if you don't
4-Nov-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-11/w-bsi110414.php
Maternal & Child Nutritionに発表された63人の女性の調査。公共の場で母乳を与えるのは恥ずかしい、母乳を与えないことは子どもにベストを尽くしていないので恥。女性の母乳を巡る困難さとテンション(緊張)が明らか。

  • 不合理な恐怖が最近の流行病

Irrational fear is the latest health epidemic
JANE E. BRODY Nov. 05 2014
http://www.theglobeandmail.com/life/health-and-fitness/health/irrational-fear-is-the-latest-health-epidemic/article21460669/
乳がん、ダニに噛まれる、グルテンGMO人工甘味料、サメの攻撃、そしてエボラ。
ニュースには健康への脅威の物語が無尽蔵に溢れている。1人ベッドに閉じこもっていることを決めたとして誰が責められるだろうか?どんなに小さいものでも健康リスクに反応して多くの人がそれで自分を守れると間違って信じて人生の喜びを捨て去る。私はかつて生のマッシュルームやピーナッツバターにどんなにたくさんの変異原性物質が含まれるかを書いたことがある。それで安心することを想定していたのだが読者の1人は「もうマッシュルームは食べられない」と嘆いたのだ。
あなたはどんなリスクを心配して行動を変えるのか?あるいはどんなリスクは無視するのか?
理想的な世界では、人々はバイアスのない評価に基づいて意思決定をする。しかし人々はしばしば不合理で事実より情動によって動かされる。
意図的であろうとなかろうと恐怖を煽ることが簡単にでき、インターネットで拡散する。
学校の建物にアスベストが使われていてそれによってがんになるという話に驚いた保護者たちが学校からアスベストを排除する活動をし、多くの専門家は剥がすのではなく封じ込めることを支持したにも関わらず何十億ドルものお金を使ってアスベストの剥離が行われ、この作業により子どものアスベスト暴露量は多分増えた。また保護者にはしかワクチンが命を救い自閉症とは関係がないというしっかりしたデータとグラフを見せたところワクチンをしたいと思う人が増えるどころか一部の人のワクチンが自閉症の原因だという信念を強化した。人々は先入観に従って情報を解釈する。リスクの感覚はしばしば事実よりも感情や情動によって決まる。

  • 成人の腎結石症再発予防のための食事と薬理学的管理:米国内科学会臨床ガイドライン

Dietary and Pharmacologic Management to Prevent Recurrent Nephrolithiasis in Adults: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians
Amir Qaseem et al.,
http://annals.org/article.aspx?articleid=1920506
助言1:1日中液体を摂り、1日の尿量が最低でも2Lになるように(それほど強い根拠ではないが有害影響もなく簡単)
助言2:液体をたくさん摂っても石ができてしまう活動期の患者はチアジド利尿薬、クエン酸、あるいはアロプリノール

カナダ予防医療対策委員会
Recommendations on screening for prostate cancer with the prostate-specific antigen test
Neil Bell et al.,
CMAJ November 4, 2014 vol. 186 no. 16
結論として、全年齢層の男性にPSA検査を薦めない
(当然PSA検査を薦めてきた団体は反発している。PSA検査で助かったと信じている人たちも。しかしタスクフォースが検討したのは全体としてのメリットとデメリットのバランス。いつもの光景。)

  • 科学に関連した項目で投票結果がどうなったか

ScienceInsider
Where the voters came down on science-related ballot items
By David Shultz 5 November 2014
http://news.sciencemag.org/policy/2014/11/where-voters-came-down-science-related-ballot-items
中間選挙では共和党が米国の上院と下院の両方で優勢になったが、ScienceInsiderが先に報道したように昨日の州の投票にはたくさんの科学関連項目があった。
コロラドオレゴンでは遺伝子組換え食品表示が却下された。コロラドのProposition 105は約2対1で却下、オレゴンではもう少し差が小さくMeasure 92は50.7% 対 49.3%で敗北。
ミシガンではオオカミを狩ることを許す提案に相当な差がついて却下。ただし裁判所の判断があるのでまだ決定ではない
アリゾナでは末期患者に第一相試験しか終わっていない実験的治療を使うことを認める提案が78.3% 対21.7%で認められた。
など