食品安全情報blog過去記事

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その他

  • マヌカハチミツ

consumer.org.nz(ニュージーランドの商品検査)
Manuka honey
29 Oct 2014
https://www.consumer.org.nz/articles/manuka-honey
少し苦くて湿った土の臭いがしてシャンパンより高いのは何?500g入りのマヌカハニーである。スーパーでは73ドルで売られていてPiper-Heidsieckより5ドル、Veuve Clicquotより8ドル高い。
全てのマヌカハニーが高いわけではなく、10ドル以下と安いブレンド品もある。しかしあなたが高価な製品に支払っているプレミア価格は何故?
マヌカハニーは他のハチミツにはない抗菌作用があるとされるがそれが示されているのは医療グレードの局所抗菌製品のみである。食べたときの抗菌作用にしっかりした根拠はない。それでも健康に関する過剰宣伝は衰えることがない。
ひどく困惑させられる(bee-wildering)状況
マヌカハニーはメチルグリオキサール含量が高いと値段が高いがその濃度は保存期間によって変わる。さらに表示と中身は違う。6月に英国のThe Grocerという雑誌が7つのマヌカハニーの検査をしたところ5つは表示されている抗菌活性を示さなかった。マヌカハニーの悪評が高まったのはこれが初めてではなく、昨年はFSAが普通のハチミツがマヌカハニーとして販売されていることを警告している
何が言えて何が言えないのか
ニュージーランド一次産業省は7月に自主的暫定表示ガイドを発表した。概ね既存の食品基準どおりである。基準では食品に病気の治療宣伝をしてはならない。抗菌活性の表示は治療宣伝でありそれは認められない。
継続する課題
メチルグリオキサール含量の表示は抗菌作用を言わない限り認められる。しかしメチルグリオキサールはマヌカハニーの同定法にはならない。
私たちの意見
マヌカハニーを食べて抗菌メリットがあるという根拠はない
・暫定表示ガイドは歓迎するが、現行の食品基準で禁止されているはずの疾患治療宣伝が氾濫しているのは何故?
マヌカハニーを確認する方法ができるまで、消費者は価値のないものに高いお金を払うリスクを負い続ける

  • 健康的な食生活が治療を必要とする時

WSJ
When Healthy Eating Calls For Treatment
Nov. 10, 2014 By Sumathi Reddy
http://online.wsj.com/articles/when-healthy-eating-calls-for-treatment-1415654737
健康的な食生活への関心が時に不健康な結果をもたらすことがある。一部の医師や栄養士が「ピュア」または「クリーン」な食生活をしたいと熱望して生の野菜しか食べない、グルテンや砂糖や乳製品などの主要栄養原となる食品を避ける、などの食の強迫観念の結果健康を害している人が増えたという。一部の専門家はこの状態を「正しい食事神経症orthorexia nervosa」と呼ぶ。DSMで公式に認められた診断名ではない。正しい食事病にとりつかれた人の中には最終的には過食症や拒食症になる人もいる。
コロラド州の研究者が最近正しい食事病(オルトレキシア)を診断するのに役立つ一連の基準を提案した。
筆頭著者のRyan M. Morozeはこの分野にはもっと研究が必要だという。痩せようとしてではなく健康的になろうとして栄養不良になる人がいる。他の精神疾患でもみられる類の極端な考え方である。
提案されている基準の中には、食べるものの質や内容にこだわるあまり1日に3時間以上を食事のことを調べたり準備したりするのに使うこと、不健康とされる食品を食べることに罪悪感を感じること、などがある。その結果として栄養バランス不良や日常生活に支障を来すとオルトレキシアと考えられる。
オルトレキシア患者の一部は摂食障害患者と同じ治療を受ける。認知行動療法も行われる。
健康的な食事をしたいと努力することと極端になってしまうことの間にはグレーゾーンがあるのでオルトレキシアについて疑う人もいる。
食物アレルギーなどのために除去食をしていてオルトレキシアになる場合もある。通常除去食では徐々に再導入をはかるが一部の人は避け続ける。
身体上は完璧に健康であっても社会的生活ができない場合もある。

Microthinking About Micronutrients: A Case of Transition From Obsessions About Healthy Eating to Near-Fatal “Orthorexia Nervosa” and Proposed Diagnostic Criteria
Ryan M. Moroze et al.,
Psychosomatics DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.psym.2014.03.003
http://www.psychosomaticsjournal.com/article/S0033-3182(14)00050-4/abstract
(この人たちって商売するほうからするといいカモなんだよね。いくらでも高いものを買ってくれる。普通に売られている食品を危険だと言ってこれを買えという商売をしている人たちは詐欺師の仲間なのに、何故か素晴らしいとか意識高いとか賞賛される。)

  • マイクロバイオーム科学はコンタミにより脅かされる

Natureニュース
Microbiome science threatened by contamination
Daniel Cressey 12 November 2014
http://www.nature.com/news/microbiome-science-threatened-by-contamination-1.16327
無菌ではない配列決定でとんでもない結果になる
BMC Biologyに11月12日発表された論文で英国Aberdeen大学の微生物学Alan Walkerらのチームが少なくとも一部はDNA抽出キット由来の汚染があることを報告している。特に希釈サンプルの場合。
(微量検体だとコンタミや手技の問題は大きくなる)

Scienceでも
Contamination plagues some microbiome studies
By Elizabeth Pennisi 11 November 2014
http://news.sciencemag.org/biology/2014/11/contamination-plagues-some-microbiome-studies

  • カリフォルニア沿岸に近づく福島放射線は無害と判断された

Fukushima radiation nears California coast, judged harmless
By Courtney Sherwood 11 November 2014
http://news.sciencemag.org/asiapacific/2014/11/fukushima-radiation-nears-california-coast-judged-harmless
新しい研究によると2年半の海の旅を経て福島核災害由来の放射性汚染物質はカリフォルニア沿岸160km以内に流れついたがその放射能はごく僅かで脅威とはならない。
2011年3月の福島第一原子力発電所事故後間もなく東京電力が放出された放射能の量を推定した。NOAAやWHOなどがその後の拡散を予測しいずれも北米にとってヒト健康リスクはないと予想した。しかし反核団体はこれらの予想を疑問だとしていた。海洋科学者などが海のサンプリングと検査を継続していた。その結果は心強いものだった。Ken Buesselerらは最新知見を木曜日の北米Society of Environmental Toxicology and Chemistry年次会合に発表する。測定した放射能は1m3あたり8ベクレルでそのうち福島由来セシウム134は2ベクレル以下。残りは主に20世紀の原子力爆弾のテストに由来する。ちなみにEPAの飲料水ガイドラインは1m3あたり7400ベクレルである。
この結果は公衆衛生上の意味はないかもしれないが、この仕事が人々により良い情報を提供することにつながることを望む、とBuesselerは言う。人々は海岸で過ごす時間について非合理的な決定をしたりヒトデの死亡を福島のせいにしたりしている。我々が測定したものより歯医者のX線撮影や飛行機に乗ることの方が遥かに暴露量が大きい。
Buesselerのプレゼン
http://www.whoi.edu/fileserver.do?id=197504&pt=2&p=205589
クラウドファンディング市民科学プロジェクトの成果
http://d.hatena.ne.jp/uneyama/20140121#p14の件
かっこいい。こういうのこそ真の市民科学
(既存のデータから北米沿岸のリスクはほとんどないことがわかっていたので公的機関はモニタリングの必要性なしとして検査は行っていない。これは税金の使い方としては極めて正しい。それで実測値を知りたいと思う個人や団体がお金を出してサンプリングにも協力して実測値を出した。結果は予想通りではあるがそれをきちんと学会で発表しWebでも公表する。「市民」の格の違いを見せつけられる感じ。)

  • ある種の植物はDNAを重複させることで再生する

Some plants regenerate by duplicating their DNA
11-Nov-2014
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-11/uoia-spr111114.php
ある種の植物は動物に食べられると食べられなかった場合より大きく育つ。このメカニズムがゲノム重複であることをMolecular Ecologyに発表。

Denmark widens warning on weight loss herbal linked to brain haemorrhage
30-Oct-2014
http://www.nutraingredients.com/Regulation/Denmark-warning-on-amphetamine-like-herbal-Acacia-rigidula
デンマーク食品局がスウェーデンでの脳出血事例と関連するとされる違法ハーブ減量成分acacia rigidulaについて2回目の警告
健康被害と関連するサプリメント名はJacked Powerで天然のアンフェタミン様化合物ベータフェニルエチルアミン(β-PEA)およびその誘導体N,N-ジメチルフェニルエチルアミン(N,N-DMPEA)が原因(高血圧を誘発)と考えられる