食品安全情報blog過去記事

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その他

  • コーヒーマニアを招集:リポーターが統計を検討

STATS
Calling Out Coffee Mania: A Reporter Looks at the Statistics
by Rebecca Goldin | Mar 24, 2015
http://www.stats.org/calling-out-coffee-mania-a-reporter-looks-at-the-statistics/
報道は我々に、何かが悪いというメッセージを無数に投げつける:肥満、薬物、飲み過ぎ、(かもね)、コーヒー、砂糖、携帯電話−そして孤独。時には良いものについて語る:適度の飲酒、結婚、社会出ること、そしてコーヒー。どれを信じどれを信ずべきでないのか?
最近発表された米国食事ガイドライン委員会によってコーヒーが良いという話が大々的に提供された。ワシントンポストのWonkblogは「公式に、アメリカ人はもっとコーヒーを飲むべきだ」と報告した。1日5杯のコーヒー(400mg)にはいくつかの健康上のメリットが関連する、と。素晴らしい!ただし世界中の誰もそんなに飲んでいない。USDAのデータによればアメリカ人は平均1日1杯である。
2月にはLATimesが1日に4杯以上コーヒーを飲むヒトは多発性硬化症発症リスクが1/3少ないと報道した。3月初めにはBBCが韓国の研究で1日3杯飲むことが心疾患の初期兆候を減らすと報道した。
これらの全てがコーヒーと健康についてのインターネットで永遠に沸き立つ話に付け加えられる。肝硬変やパーキンソン病、皮膚がん、自殺を減らし知能や運動欲や幸福を増強しそして早期死亡リスクを増やす・・ちょっと待った。
公平のために、これら特定の研究は外れ値のように見える−あるいは少なくとも反対のことを主張する別の研究を見つけられる。重要な問題は、2013年のBMJのエディトリアルでJohn Ioannidisが言っているように、これらの結論は、良いにせよ悪いにせよ、本当に意味があるのかどうかである。
ワシントンポストのAriana Eunjung Chaによる記事は心強い。レポーターが研究をちゃんと読んでいるようだからである。研究者自身が研究の限界を説明しているディスカッションの部分を読んで、「コーヒーはあなたにとって悪いものではないかもしれないが、あなたの命を救うようなものでもない」と見出しをつけている。

Eye Vitamins Don't Prevent AMD or Cataracts
by Berkeley Wellness | March 23, 2015
http://www.berkeleywellness.com/supplements/other-supplements/article/eye-vitamins-dont-prevent-amd-or-cataracts
加齢性黄斑変性AMD)や白内障を予防しようと期待して目の健康を「サポート」「促進」「守る」などの宣伝をしているダイエタリーサプリメントを使用しないこと。表示や宣伝がほのめかしていることとは違って、どんなサプリメントにもそんな作用があるという根拠はない。根拠があるのはAREDSという研究で使用された組成のみで、AMDの中期ステージあるいは片目が重度AMDであるヒトの進行を遅らせることができる、である。
Ophthalmologyに2014年に発表された研究では販売トップの5ブランドのAREDS 処方やその変形であるという11の目のサプリメントを調べたところ、どれ一つとしてメリットはもとの研究での対象者に限られることを記載していなかった。

  • 広く使われている除草剤ががんと関連づけられた

Natureニュース
Widely used herbicide linked to cancer
Daniel Cressey
24 March 2015
http://www.nature.com/news/widely-used-herbicide-linked-to-cancer-1.17181
WHOの研究部門がグリホサートを発がん性がある可能性が高いと表明したのでNatureは根拠を検討した
先週IARCが世界で最も広く使われている除草剤であるグリホサートをヒトに対しておそらく発がん性があると発表した。しかしこの評価は企業グループから直ちに反発された。3月23日に、世界のグリホサートの多くを販売しているモンサント社の主任技術役員であるRobb FraleyはIARCがデータのつまみ食いをしていると非難した。彼は声明で「我々はこの評価に憤慨している」と言っている。
Natureはこの議論を解説する。
IARCの報告は何を言っているのか?
IARCは工業化学物質や食品や職業の発がん性を定期的にレビューしている。3月20日にIARCが招集した国際専門家委員会が有機リンとして知られる5つの農薬の知見をレビューした。その要約がThe Lancet Oncologyに発表された。2つの農薬−テトラクロルビンホスとパラチオン−が「ヒト発がん性の可能性がある」2Bに、3つ−マラチオン、ダイアジノン、グリホサート−が「おそらくヒト発がん性がある」2Aに分類された。
何故グリホサートについて心配しなければならないのか?
グリホサートは、容量で世界で最も広く生産されている除草剤である。多くの国で農業や園芸に広く使用されている。この化合物はモンサントの除草剤製品ラウンドアップの成分で、この除草剤に耐性のある遺伝子組換え作物の市場でのシェア拡大とともにより多く使われるようになっている
グリホサートとがんの関連の根拠は何か?
IARCのレビューはヒトでのがんとの関連についての根拠は限定的であると注記している。除草剤を使う労働者で非ホジキンリンパ腫と呼ばれる種類のがんの増加を示唆するいくつかの研究があるが、別の大規模米国研究である農業健康研究(AHS)では非ホジキンリンパ腫との関連は見つかっていない。AHSは数千人の農業労働者をフォローしてがんリスクが増えるかどうか調べたものである。
しかし動物実験を含む他の根拠をもとにIARCは「おそらく発がん性」と分類した。マウスとラットでのがんと関連し、DNA傷害のような「メカニズム上の根拠」もある場合にIARCはこの分類をする。IARCモノグラフ計画の上級毒性学者でこの研究の著者の1人であるKathryn Guytonは「グリホサートの場合、ヒトでの根拠は限られていて実験動物での根拠が十分だったのでグループ2Aになった」と言う。
しかし誰もが合意しているわけではない?
グリホサート専門委員会という農薬企業団体が、IARCの評価は「方法論的アプローチの重大な欠陥を示し全体的な結論はグリホサートの安全性についての全ての規制機関によるレビューの結果と矛盾する」という。
この専門委員会の一員であるモンサントは、このレビューではリスクがないことを示すデータは除外されており、IARCは「意図的に数十の科学研究を無視した」、特に遺伝毒性試験を、という。
しかしGuytonはIARCのプロセスにはどの研究を検討するかについての明確なルールがあると強く擁護する。対象とするのは政府の報告とピアレビューのある雑誌に発表された論文のみであり、企業が提出した多数の研究は却下する。
大学の研究者のなかにはこのIARC報告には注意を呼びかけている。メルボルンRMIT大学の分析化学者Oliver JonesはロンドンのSMCに対して「IARCの評価は普通はとても良いが、ここで引用されているエビデンスは私には希薄に見える」と語り、「個人的には、私は菜食主義なのでたくさんの野菜を食べるが、この報告書を見て心配することはない」と加えている。
もし十分調べたらあらゆるものががんの原因になる?
IARCは確実性の減る順番で化合物を分類している:グループ1は確実にヒト発がん性がある、2Aはおそらく発がん性、2Bは発がん性の可能性がある、3は分類できない、4はおそらくヒト発がん性はない、である。
モンサントはその声明で「IARCはコーヒーや携帯電話やアロエベラ抽出物や漬物や理髪師や調理師まで無数の日常的なものをカテゴリー2に分類している」と言っている。しかし多くは2Bだがグリホサートは2Aである。モンサントの言うもののうち2Aなのは高温で揚げ物をするときに出るものと理髪師の職業暴露のみである。
次はどうなる?
IARCは化合物による発がんリスクの大きさを定量することや安全な暴露量を助言することはしないが、影響はある。むしろ世界中の規制機関がこの知見をどうするか決定しなければならないだろう。米国EPAは現在グリホサートの安全性について公式にレビュー中で、IARCの研究も検討するだろうと述べた。
(これKathryn Guyton博士は、信頼性の高いGLP適合試験のデータは無視して、話題を集めるために問題のある結果を報告することが多い論文のみを採用した、と言っているのだが。無数の遺伝毒性試験なんて義務だから陰性を確認しているだけで、いちいち論文にして発表してないだろうし雑誌もリジェクトするだろう。)

  • 世界がん研究財団の飲酒と肝がんについての報告への専門家の反応

SMC
expert reaction to World Cancer Research Fund report on alcohol consumption and liver cancer
March 25, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-world-cancer-research-fund-report-on-alcohol-consumption-and-liver-cancer/
世界がん研究財団が食事と栄養と運動と肝臓がんとの関連についての報告書を発表した。この報告では1日3杯以上の飲酒と推奨以上のBMIが肝臓がんに寄与するという強い根拠があると述べている。
St George’s Hospital NHS Trustの主任栄養士Ms. Catherine Collins
英国の立場ではWCRFが3杯の飲酒をアルコール45gと定義していることが興味深い。英国では1ユニットがアルコール8gなのでこれは6ユニット弱に相当し現在の安全な飲酒助言(女性2ユニット男性3ユニットただし禁酒日を設けること)の約2倍になる。
この報告書の第3章では肝細胞がんを発症する人の90-95%は肝硬変であると述べていて、これは重要な事実である。肝硬変はアルコールの肝臓への悪影響でありがんの前段階となる。そして肝硬変は肝臓がアルコールの有害影響を中和しようとする戦いに敗れたことを意味する。
肝臓への直接的毒性影響に比べて、アルコール8g/10mLあたり56kcalというのは全体のエネルギー摂取量を増やし体重が増える。必要以上のカロリーを摂ると炭水化物やアルコールは血中トリグリセリドの増加につながり、このトリグリセリドは肝臓や膵臓に一時的に貯蔵され脂肪肝や急性膵炎の主要因となる。
アルコールの効率的中和に必要な二番目の肝臓の酵素が遺伝的に欠けている人ではアセトアルデヒドが蓄積し肝硬変になりやすい。これは日本人で多いが飲酒するとすぐ顔が赤くなる人は同じ酵素欠乏である可能性がある。
この報告の小さな欠点は、肝臓がんは症状がでるまで発見されにくく、肝疾患が進行すると体液が増加するので診断時の体重は必ずしも脂肪が多いことに関連するのではないかもしれないことである。
Glasgow大学代謝医学Naveed Sattar教授
アルコールと肥満が肝疾患と肝臓がんに相乗効果があるという明確な根拠がある。従って肝疾患のリスクを減らしたい人は食生活を改善し減量して酒を減らす必要がある。さらに最近の根拠は適量飲酒が心疾患予防になるということを疑っており、どんな量の飲酒も悪い可能性がある。現在はアルコールは安価で簡単に入手でき多くの依存患者がいる。良い知らせは一部のメッセージが届いて英国での暴飲が減っているようであることである。
Cambridge大学公衆のリスク理解に関するWinton 教授David Spiegelhalter教授
この話は誤解を招くセンセーショナルなやり方で宣伝されている。1日10gのアルコールで増加する肝臓がんリスクは僅か4%であり、アルコールに発がん性はあるがこの量でがんを誘発する可能性は極めて小さい。この報告では1日45gのアルコールがリスクを増加すると言っているが、それは5.5ユニットでありその量は既に「大量」である(アルコール11%のワインなら500mL)。この報告によれば、一日に飲むワインを500mL(ボトル2/3)からボトル1本に増やすと22gのアルコール摂取量が増え肝臓がんリスクが10%増加する。
肝臓がんはまれで生涯男性は100人中1人女性は200人中1人ががんになる。従ってもし既に大量飲酒しているのならさらに飲むと少しリスクが上がる。
(日本人はウイルス感染者が多く肝臓がん多いので必ずしも希ではない。しかも代謝酵素欠損)
Cambridge大学がん疫学Paul Pharoah教授
飲酒は多数の健康影響があり、この報告書で議論しているような原発性肝がんのよな単一の関連を根拠に飲酒についての助言をするのはあまり意味がない。
欧州では原発性肝がんはごく希であるがウイルス感染による肝炎がよく見られる地域ではより多く見られる。
肝硬変のある人に原発性肝がんリスクが高いことと飲酒が肝硬変と原発性肝がんの両方と関連していることはよく知られている。明確でないのは適量飲酒でもリスクが増加するかどうかである。
著者らは毎日3杯以上飲む人の原発性肝がんが明確に増加しているというがどの根拠を下にしたのかの詳細を提示していない。私は出版されているデータが1日3杯で特異的に原発性肝がんリスクの増加と関連すると言えるほどしっかりしたものではないと考える。
(略)
しかし原発性肝がんとは関係なく、現在の安全な飲酒助を支持する理由はたくさんある。