食品安全情報blog過去記事

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  • 子どもを殺す毒素が影から現れる

A child-killing toxin emerges from shadows
Priyanka Pulla*
Science 3 April 2015: Vol. 348 no. 6230 pp. 15-16
Muzaffarpurの住人は夏の到来を恐れる理由がある。モンスーンの雨が降る前、インドビハール州のこの地方の小さな子ども達が何百人も病気になり多くが死亡し生き残っても脳に障害が残る。科学者はこれがビハール特産のライチの毒素によるものだろうと信じている。研究者達は長い間ライチの果樹園に子どもを病気にする何かがあると疑ってきた。Muzaffarpurでは5月と6月に病気の発生がピークになり、それはライチの収穫時期である。しかし何年も原因の追跡は失敗してきた。
今や研究チームはライチそのものに照準を合わせた。米国CDCとインド国立疾患コントロールセンター(NCDC)のチームは1月30日にMMWRにライチの毒素による可能性を示唆し、他に2つのグループがCurrent ScienceとEmerging Infectious Diseasesの5月号でライチを名指しした。
そのメカニズムはバングラデシュベトナムのライチ栽培地域での似たような病気を説明するように見える。また西アフリカとカリブ地方の関連する果物や中国雲南省で説明できない突然死の原因となったキノコに存在する毒素の治療法も浮き彫りにする。オレゴン健康科学大学の神経毒性学者Peter Spencerは「我々はこれらの疾患に世界的理解でアプローチする必要がある」という。
ビハールでは毎年約200人がこの病気で死亡するが症状の特徴は一貫している:15才以下の子どもが夜中に発作で起きて精神錯乱と記憶喪失になる。1/3は昏睡し死亡する。ベトナムではこの病気はAc Mongあるいは「悪夢」脳症と呼ばれ熱を出す傾向があるがインドでは出ない。それでもベトナムの病気を研究しているパリのパスツール研究所のArnaud Fontanetは「我々が同じ現象を扱っていると確信している」という。
これまでインド当局はライチ病をウイルス性脳症の一種だと信じたがっていた。2013年と2014年にはビハールの180万人の子どもに日本脳炎の予防接種をした。Fontanetのグループも2012年のEmerging Infectious Diseasesの論文でベトナムの患者の脳脊髄液のサイトカイン濃度が高いことなどからウイルスを指摘していた。2012年にはバングラデシュの下痢疾患研究国際センターがライチの木に使われている農薬の混合物を原因ではないかと示唆した。
謎の根本を知るため、NCDCの疫学者Aakash ShrivastavaとCDCのPadmini Srikantiahが力を合わせて2013年にMuzaffarpur の2つの病院の133人の子どもを調査した。ウイルスや脳炎の根拠は見つからなかった。血糖値が低く、低いほうが致死例になることを発見した。このデータをもとにNCDCはMuzaffarpur の保健当局に2013年6月に患者にブドウ糖を静注して血糖値を上げるよう指示した。その結果前年に比べて死亡率が29%下がった。
NCDCとCDCが血糖値の低さを寄与要因だとした頃、Velloreの引退したウイルス学者T. Jacob Johnが犯人に狙いをつけていた。John はMuzaffarpurの小児科医Arun Shahと一緒に昨年の6月入院した26人の子どもを調べていた。彼らも脳の炎症の兆候は見つけられず、極めて低い血糖をみつけてブドウ糖で治療していた。John は未熟なアキーフルーツを食べることによるジャマイカの嘔吐病の報告をみつけた。アキーはライチの類縁種である。その病気はヒポグリシンと呼ばれるアキーの毒素によるもので、アキーの種子に含まれるメチレンシクロプロピルグリシン(MCPG)と構造的に類似する。さらにJohn はラットにMCPGを与えたところ低血糖になったという1991年の論文を発見した。「25年間、だれもこのデータを見なかった」とJohn は言う。
NCDCとCDCのチームの脳炎やウイルスの研究が何も見つけられなかった後の昨年、研究者はMCPGに焦点を合わせた。この毒素は脂肪酸代謝を阻害し細胞のグルコール生産を阻害する。このことは子どもが、血糖値が最低になる深夜に病気になることを説明できる。チームは現在患者の血液や尿のMCPG代謝物を調べていて、結果はこの夏に出るだろう。
Fontanetはベトナムの病気について未知のウイルスの可能性を捨て去ったわけではないがライチ毒素の役割を調べようと計画している。しかしSrikantiahはまだ謎は残るという。例えば何故病気になる子とならない子がいるのか?一つの可能性は栄養不良である。貧しいものの中でもさらに貧しい人たち、とShahはその患者について説明している。グリコーゲンやグルコースの貯蔵の少ない栄養不良の子ども達にとっては、アキーやライチやランプータンや竜眼のようなムクロジ科の果物はどれでもたくさん食べれば低血糖症候群になる可能性がある、とSpencerらはEmerging Infectious Diseasesに書いている。
もうひとつの疑問は子どもたちがどうやってMCPGを食べたのかということである。この毒素はライチの堅い食べられない種の中にある。Srikantiahのチームは現在毒素が果肉にもあるのかどうか確認している。それがこの病気が一部の地域でしかみられないことを説明するのに役立つ可能性がある。Spencerはライチの毒素量がアキーのように栽培品種や土壌の条件や熟した程度などによりばらついている可能性を示唆している。
NCDCは現在病気予防のための政府の助言を作成するのに役立つだろうリスク要因を調査している。
(農薬は真っ先に疑われるけれど天然物のほうが謎は多い)

  • 特集:Deepwater Horizon惨事から5年、傷跡は残る

Scienceニュース
Feature: Five years after the Deepwater Horizon disaster, scars linger
By Warren Cornwall 2 April 2015
http://news.sciencemag.org/environment/2015/04/five-years-after-deepwater-horizon-disaster-scars-linger
2010年4月20日にBPのDeepwater Horizon石油掘削装置が爆発してから約5年。11人の労働者を殺し少なくとも5億1800万リットルの油を流出させた惨事の傷跡はまだ残っている。しかし自然の回復力もまた驚くべきものだった。Barataria湾はDeepwaterの後、地獄にはならなかった。ただし楽園でもない。
影響の例
・油を食べる細菌が増えた
Acrobat antがいなくなった
・巻き貝が減ったが回復の兆候
・植物の根が油で死んだところでは浸食が増えた。回復しているかどうかの根拠は多様
・ハマヒメドリの巣が少なく孵化も少ないが集団への明確な家教はない
・アオガニに減少傾向はない
・海藻を含む微少藻類群はほぼ回復、一部少ないまま
・エビは最初増えた
など
(お金の話も含む長い記事)

  • どの「水」が最も健康的?

Which 'Water' Is Healthiest?
By Keri Gans  April 1, 2015
http://health.usnews.com/health-news/blogs/eat-run/2015/04/01/which-water-is-healthiest
ココナツからサボテンまで、水の代用品がますます増えている。昔ながらの水ではなくファンシーウォーターを選ぶのはどんな時?もしファンシーウォーターが好みでお金を払うことに問題がないなら飲めばいい。但しその宣伝内容のほとんどは判定されていない。
市販されているいくつかの水について見てみよう
・ココナツウォーター
・カクタス(サボテン)ウォーター
・メープルウォーター
アーティチョークウォーター