食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 農業用殺虫剤が世界的規模で地表水を脅かしている

Agricultural insecticides threaten surface waters at the global scale
Sebastian Stehle and Ralf Schulz
PNAS
http://www.pnas.org/content/early/2015/04/08/1500232112
73ヶ国2500カ所以上の地表水の殺虫剤濃度を報告した838の論文のメタ解析。報告されている濃度で規制上の閾値を超えていることが50%以上あり水棲生物の多様性にとって脅威となる可能性がある、としている。
(報告バイアスがあるとはいえ環境モニタリングは必要)

Study finds testicular cancer link for muscle-building supplements
13-Apr-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-04/bu-sft041315.php
British Journal of Cancerに発表された論文によるとクレアチンやアンドロステンジオンなどの筋肉増強サプリメントを使用していたと報告する男性は、使用していない男性より精巣がん発症率が有意に高い。特に25才より若い年齢でサプリメントを使用し始めた場合や複数のサプリメントを使っている人、何年も使用している人で高い。精巣がんは1975年は10万人中3.7人だったが2011年は5.9人と増加している。サプリメント使用者のオッズ比は1.65で、複数使用の場合は2.77、3年以上で2.56、25才未満で使用開始した場合は2.21だった。

  • 中国の医学研究の誠実さに疑問

エディトリアル
China's medical research integrity questioned
THE LANCET Volume 385, Issue 9976, 11–17 April 2015, Pages 1365
中国は英語での科学論文数で米国に次いで2番目である。しかしそれに質が伴っていない。研究不正、捏造、改ざん、盗作、ゴーストライターが中国の成果に影を落としている。今やゴーストライターに加えてゴーストレビューワーがいる。
3月26日から31日の間にBioMed Centralは中国の医学研究所の研究者らによる論文42報を取り下げた。これらの論文はピアレビュープロセスを不適切に操作したもので、著者が推薦したレビューワーは偽物(実在の人物を詐称して別のアドレス、あるいは全くのでっち上げ)だった。詳細な調査の結果、これらのニセピアレビューワーには特定の第三者機関(論文発表サービス会社)が関与することを示唆している。このような不正は、数が多いだけでなく有名な研究所から出ていることが残念である。このことは中国における不正は孤発例ではなく全体に蔓延していることを示唆する。
科学における不正行為は世界的に問題となってはいるが中国の問題は別にある可能性がある。このまま巨額の投資を続けても新しい発見には至らないだろう。