食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 臨床ガイドライン がんのスクリーニング:米国内科学会からの価値あるケアのための助言

Screening for Cancer: Advice for High-Value Care From the American College of Physicians
19 May 2015
Ann Intern Med. 2015;162(10):718-725.
http://annals.org/article.aspx?articleid=2294149
オープンアクセス
がんのスクリーニングはがん関連罹患率や死亡率を下げるための方法の一つである。スクリーニング方法の強度は多様だが強力であることが必ずしも良い結果にはならない。価値の高い方法は害や費用を明らかに正当化できる利益があるものであり、価値の低い検査は有害影響と費用に比べてほとんどあるいは全く利益がないものである。がん検診をメリットのあるものにするためには価値を最大化するための検査強度が必要である。
ここでは5つのよくあるがん:乳がん、子宮頸がん、直腸結腸がん、卵巣がん前立腺がんのスクリーニングについてレビューした。
将来の課題として
あまりにも過剰ながん検診が行われすぎであることが問題で、一方で医療が受けられない人たちには不足している。今後価値を高めることはスクリーニングをむしろ減らすことによって達成できるだろう。しかしこれには(がんが見つかったという)利益を評価するだけでなく(不必要な手術や治療、あるいは精神的負担による)害が減ったことを評価するシステムが必要である。
「私達はスクリーニングを間違って考えてきた。私達はできる限り全てのがんを発見しようと考えてきた。だから感度の高い方法をますます頻繁に使うようになってきた。しかし多くの人はがん検診のトレードオフを理解していない。いくつもの研究が検診のメリットが過大に評価され検診による有害影響が無視あるいは軽視されていることを示している」
(スクリーニングによる過剰治療の害を決める要因に、悪性ではないがんと診断されたときに心静かに経過観察できるか、ということがある。多くの人は無理だよね。知識は力だけれどその力を扱うだけの準備がない場合には災いとなる。)

Natureニュース
'Young blood' anti-ageing mechanism called into question
19 May 2015  Sara Reardon
http://www.nature.com/news/young-blood-anti-ageing-mechanism-called-into-question-1.17583
高齢マウスを若返らせるように見えた若いマウスのタンパク質は反対の作用があるようだ
高齢になると減るGDF11タンパク質が若返りのもとかもしれないという仮説が2013年に提示されたがもとの実験の3倍量のGDF11を注射したマウスでは筋肉の能力が低下したことが5月19日にCell Metabolismに発表された。

  • パンダの腸は竹を消化するのに適していない

Panda guts not suited to digesting bamboo
Allie Wilkinson 19 May 2015
http://www.nature.com/news/panda-guts-not-suited-to-digesting-bamboo-1.17582
マイクロバイオームは繊維の多い食品にあまり適応進化していない
5月19日にmBioに発表された研究。ジャイアントパンダのマイクロバイオームは肉食獣のものに近い
微生物の組成を調べたので、微生物が機能を変えてセルロースを分解できるかどうかはまだわからない。
(何気なくマイクロバイオームの盛り上がりに大きな課題を突きつけている。まあ先は長い。いずれにせよ「発酵食品食べれば免疫力が」レベルの言説は論外)