食品安全情報blog過去記事

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「チョコレートダイエット」はいいかげんなジャーナリズムを暴露するための意図的嘘−著者

'Chocolate diet' study was deliberate hoax, exposed shoddy journalism – author
Published time: May 28, 2015
http://rt.com/usa/262909-chocolate-diet-media-hoax/
医学雑誌に発表されて6カ国語以上の言語で20ヶ国以上で報道された、チョコレートの減量効果についてのセンセーショナルな研究は、食事の研究における悪い科学を暴露するための策略だった、と著者がいう。「チョコレートで痩せる」という魅力的なタイトルのこの研究は、低炭水化物ダイエットをしている人たちが毎日チョコレートバーを1つ食べれば10%早く痩せると主張していた。最初に報道したのはドイツのタブロイド紙Bildで、その後世界中に拡散した。しかし著者の“Johannes Bohannon, PhD”も“食事と健康研究所”も存在しない。この嘘は、「食の研究とメディアの腐った関係を暴露するための」二人のドイツ人映画制作者の発案であるとサイエンスレポーターのJohn BohannonがGawkerのメディアブログio9に書いている。
ドイツのジャーナリストPeter Onnekenと Diana Loeblが、分子生物学の学位をもち、出版料を払うオープンアクセス雑誌の危険性を暴露したことのあるBohannonに連絡してきた。彼らはドイツで15人でチョコレートが何かにいいことを示すための臨床試験を実際に行った。「その研究デザインは疑陽性を出すためにデザインされた。結果には意味がなく、メディアが世界中の何百万人もの人々に伝えた健康主張は全く根拠がない」とBohannonは書く。彼らはその研究をInternational Archives of Medicineに発表するために600ユーロ(約650ドル)払った。
この雑誌の編集者は「雑誌に投稿された全ての論文は厳密にレビューされている」と主張しているが、Bohannonの論文はOnnekenのクレジットカードからお金を引き出した後2週間以内に、たった1語も変えることなく発表された。Bohannonの告白後、雑誌はこの研究をウェブサイトから削除したようだ。
次の段階は、注意深く選んだ「フラボノイド」「生理活性物質」のようなバズワードをちりばめて特定の主張はせずにチョコレートが良さそうだと曖昧にほのめかす、魅力的なプレスリリースを作り上げることだった。
Bohannonは「私は私達のルアーが世界中に広まる様子を見てプライドと嫌悪感の混じった吐き気のするような感覚だった」と書く。この話はBildから他の新聞に広がり、Daily Mail, Daily Express, Shape, the Irish Examiner, Huffington Post, Modern Healthcareなどが報道した。
「ポイントは、ジャーナリストの信じがたい怠惰である。情報を並べただけで、まるで自分で記事を書いたかのようなメディアで報道されている話ができあがる。実際には彼らがやっているのは私達の書いた文章をコピペしているだけである。」
メディア監視団体Health News ReviewのGary Schwitzerはこの嘘の有効性について読んで驚かない。「もし存在しない研究を報道するジャーナリストがいたとき、ジャーナリストが嘘にひっかかかったことに驚くべきだろうか?企業や、大学や、医学雑誌のプレスリリースがジャーナリストを誤解させた場合、人々を誤解させたのは誰か?」とRetraction Watchに書いている。「この問題は数百万人を騙した悪戯よりさらにたちが悪い。科学とジャーナリズムの信頼性の危機である。そしてこの食物連鎖の末端にいる消費者は、既に毒されている」
しかしBohannonはこの悲喜劇に一すじの希望を見いだしている。多くの読者が記事のコメント欄にこの研究の正当性や方法論や結果についての疑問を投稿している。レポーターはそれらについて尋ねるべきだったのにしなかったのだ。

私は何百万人もの人をチョコレートで痩せると騙した。ここにどうやったかを示す
I Fooled Millions Into Thinking Chocolate Helps Weight Loss. Here's How.
John Bohannon 5/27/15
http://io9.com/i-fooled-millions-into-thinking-chocolate-helps-weight-1707251800
「栄養に関しては、毎日がエイプリルフールである」

How, and why, a journalist tricked news outlets into thinking chocolate makes you thin
By Sarah Kaplan May 28
http://www.washingtonpost.com/news/morning-mix/wp/2015/05/28/how-and-why-a-journalist-tricked-news-outlets-into-thinking-chocolate-makes-you-thin/
研究デザインは少人数で18項目の独立した変数を測定しているので偶然有意差がつく。それを適当に粉飾すればいい。まともな科学者はそんな実験はしない。
しかも1人以外、著者の“Johannes Bohannon, PhD”に取材を申し込んでいない。質問したジャーナリストは記事にしなかった。
主要メディアはほとんどひっかからなかったがウェブニュースと健康雑誌がたくさんひっかかった。Bohannonは名前と所属以外は全く嘘を言っていない。

(日本語でもあった
http://kenkounews.rotala-wallichii.com/chocolate-prevents-cycling-effect1/
この「医学雑誌」の出版社は“predatory publisher”
機能性表示の「根拠」ってまさにこれなんだけどね。)