食品安全情報blog過去記事

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論文等

  • 香港理工大学が食用油の迅速真正性同定と地溝油のスクリーニング法を開発

PolyU develops a new method for rapid authentication of edible oils and screening of gutter oils
29-Jun-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-06/thkp-pda062915.php
MALDI-MSによる。各種食用油のスペクトルデータベースを作っていてそれと比較。
Analytica Chimica Actaに報告。

  • フロリダではこれまで報告されていたより多くの人が熱帯の珊瑚礁の魚の毒素で中毒になっている

More people in Florida sickened by toxin in tropical reef fish than previously reported
June 29, 2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-06/bc-mpi062315.php
American Journal of Tropical Medicine and Hygieneにオンライン発表された新しい研究によると、バラクーダやグルーパーなどのシガテラ毒素での食中毒事例は公衆衛生記録より相当多い。医師の報告によるこれまでの推定は10万人中0.2件であるが今回の釣り人調査による報告では10万人中5.6件。この過小報告は他の食中毒病原体と同程度。

  • 砂糖入り飲料が世界中で多くの死亡と関連

Sugary drinks linked to high death tolls worldwide
29-Jun-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-06/tuhs-sdl062615.php
Circulationに発表された研究によると、砂糖入り飲料の摂取で、世界で毎年184000人の成人が死亡していると推定。内訳は糖尿病が133000、心血管系疾患が45000、がんが6450。
国により砂糖入り飲料の死亡への影響は大きく違い、日本人の65才以上では1%以下、メキシコ人の45才未満の成人では30%。

  • 柑橘類の摂りすぎは皮膚がんの原因?

Could Too Much Citrus Cause Skin Cancer?
Jun 29 2015, 4
http://www.nbcnews.com/health/cancer/could-too-much-citrus-cause-skin-cancer-n383951
Journal of Clinical Oncologyに発表された研究で、オレンジジュースを大量に飲んだりグレープフルーツをたくさん食べたりする人は、最も悪性度の高い皮膚がんである悪性黒色腫のリスクが高いかもしれないという。この研究の著者の1人Harvard School of Public HealthのWalter Willett博士は「現時点では柑橘類を避けるのは良い考えではない」としながらもオレンジやグレープフルーツががんリスクを上げるもっともらしいメカニズムはある、と指摘する。ソラレンやフロクマリンが含まれていて皮膚の日光感受性を上げる。
一つの教訓は、いわゆるナチュラルな食品だからといって必ずしも良いことばかりではない、ということである。どんなものでも食べ過ぎは避けて多様な食品を食べよう。
Citrus Consumption and Risk of Cutaneous Malignant Melanoma
Shaowei Wu et al.,
Published online before print June 29, 2015
http://jco.ascopubs.org/content/early/2015/06/24/JCO.2014.57.4111.abstract

エディトリアル
悪性黒色腫のための食事助言:ゴールデンタイムへの準備はできていない
Dietary Advice for Melanoma: Not Ready for Prime Time
Marianne Berwick
http://jco.ascopubs.org/content/early/2015/06/24/JCO.2015.61.8116
悪性黒色腫の発症に関連する食事要因の研究は多くの理由によりあまり多くはない。その性質から食事研究には非常に大きな間違った分類が含まれ結果を無意味なものにしがちである。さらに多くの食事研究はリスク要因ではなく予防要因を探す。しかしWuらの論文はこれまでの多くの欠陥を克服して悪性黒色腫と柑橘類摂取の関連を発見した。
この研究では週2回以上の柑橘類全体の摂取量と用量反応関係を見いだした。柑橘類の果物やジュースの1日1.6回以上の摂取は悪性黒色腫のリスクを1.36 (95% CI, 1.14 to 1.63).倍にする。理由はソラレンとフロクマリンの存在で、これらは発がん物質の可能性がある。ソラレンとフロクマリンは紫外線と一緒に悪性黒色腫細胞を増殖させる。この研究では紫外線暴露と柑橘類摂取に意味のある相互作用はなかったが、関連は子どもや若者などの日焼けしやすい人たちで強いように見える。そして肥満と運動しない人で関連が強い。
この研究には強みがある。理由は明確で規模が大きくデータは前向きである。Hillの基準を4つ満たしている。しかし全てを満たしてはおらず決定的とも言えない。関連の強さは比較的小さくハザード比は最も多く柑橘類を食べている人で1.36 (95% CI, 1.14から 1.63)でる。他の研究では報告されていないので一貫性は少ない。また研究対象は医療従事者で一般人を代表しない。柑橘類が果物かジュースかで矛盾がある。悪性黒色腫ではない皮膚がんの既往症のあるハイリスクグループが除外されている。などである
この研究は重要である可能性があるが現時点では過剰反応による柑橘類の忌避は避けるべきである。
(フロクマリンってアシタバとかに結構多くて青汁の類でも多いのはありそうだけど。)