食品安全情報blog過去記事

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EUのセルフケアシステムのコスト/ベネフィット解析

A cost/benefit analysis of self-care systems in the European Union
Final report
http://ec.europa.eu/health/patient_safety/docs/2015_selfcaresystemsstudy_en.pdf
近年の経済環境と公的部門の財政圧力から、欧州の医療システムは人々への医療の質を維持しながら費用を抑制する必要に迫られている。患者の関与(セルフケア)を促進することが効率向上のための対策として検討されている。
最初に、文献レビューと二段階Delphiプロセスによりセルフケアの定義をした。セルフケアの価値を決めるために5つの軽微な病気(足白癬、風邪、咳、火傷、尿路感染)についての系統的レビューを行った。次に既存の欧州でのセルフケアイニシアチブを同定し優良規範を同定するためにRE-AIM枠組み(リーチ、有効性、採用、実施、維持)で解析した。優良規範について、患者にとって、供給側にとって、システムにとって、社会にとっての観点から費用対効果解析を行った。最終的に優良規範の移転可能性方法論を開発した。
セルフケアの価値については足白癬(アリルアミン類とアゾール類)と風邪(アセチルサリチル酸、鼻スプレー、エキナセア)と火傷(ランソプラゾールとH2受容体アンタゴニスト)については良い根拠があったが咳と尿路感染のOTC医薬品の有効性については明確な根拠はなかった。
(中略)
この結果はセルフケアの採用には政治の関与が必須であることを強調する。さらにセルフケアが成功するためには患者が自分の健康に責任を持つように「文化」の変化が必要である。この文脈では患者情報と明確なコミュニケーションが特に重要で、さらに医療の専門家はその専門職のアイデンティティの定義に関する再考が必要になる。これは特に医師と薬剤師の協力において懸念となる。