食品安全情報blog過去記事

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論文

  • The Lancet Diabetes & Endocrinology:大規模メタ解析が低脂肪ダイエットは長期減量達成には効果がないことを発見

The Lancet Diabetes & Endocrinology: Large meta-analysis finds low-fat diets ineffective for achieving long-term weight loss
29-Oct-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-10/tl-tld102815.php
低脂肪ダイエットは同程度の強度の高脂肪ダイエット(低炭水化物あるいは地中海食)に比べて減量の程度が大きいということはない、という大規模メタ解析が発表された。
「低脂肪食を薦める良い根拠はない」と主著者のDeirdre Tobias博士は言う。

関連
その他のダイエット法と比べたときの低脂肪ダイエットとその長期減量を調べた研究への専門家の反応
SMC UK
expert reaction to study investigating low-fat diets, compared to other diets, and long-term weight loss
October 30, 2015
http://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-investigating-low-fat-diets-compared-to-other-diets-and-long-term-weight-loss/
英国心臓財団心臓の健康栄養士Tracy Parker
どのダイエット法が減量にベストなのかについてはもう何年も広く議論が続いている。
この系統的レビューとメタ解析は長期の減量に与える低脂肪と高脂肪の影響を比較した。その結果低脂肪の方がより多く減量するということはなく低脂肪食を薦める良い根拠はないと結論している。
結果では低脂肪と高脂肪の減量介入を比べた場合、長期の減量は0.36kgで低炭水化物高脂肪は平均1.15kgの減量だった。普通の食事と比べれば低脂肪介入は5.4kg多く減量した。
ただ比較した研究の質は相当ばらばらで研究により結果は異なる。
減量に関しては、達成すべきはエネルギーを減らすことでそのためにはいろいろな方法がある。低脂肪ダイエットだろうと高脂肪ダイエットだろうと重要なのはあなたがそれを続けられるかどうかで、簡単な解決法はない。
グラスゴー大学代謝医学教授Naveed Sattar教授
この論文のメッセージは、どんなダイエット法でも効果があり、異なる方法による違いは最初の一年の減量についてはあまりないということだと思う。この研究からは数年後の効果はわからない。またこの結果は間接的に、政府は個人が肥満にならないようにする対策を第一にすべきだと示唆している
オックスフォード大学食事と集団の健康教授Susan Jebb教授
「低脂肪ダイエットは長期減量には効果がない」という見出しは間違っている。低脂肪食でも1年で5.4kg減量している。ただ低炭水化物ダイエットの方がさらに1.15kg減っている。
5kgの減量というのは多くの人が期待するより少ないかもしれないが、我々はそれでも驚くべき健康上の利点があることを知っている。ダイエットに「効果がない」という不正確な報道は人々の健康専門家への信頼を損なう
King’s College London栄養名誉教授Tom Sanders教授
西洋では現在平均的に脂肪由来カロリーは30-35%で、この研究では低脂肪を30%以下と定義していて普通の摂取量よりわずかに少ない。このデータは低脂肪でも高脂肪でもカロリーが同程度なら大きな差はないことを示す。普通の食事では炭水化物由来のカロリーの方が多いので炭水化物を制限することのほうが少し減量が大きいのは驚くべきことではない。
この解析は参加者が目標を達成していると想定しているが実際にはほとんどとまでは言わないが多くが食事助言に従うことに失敗する
この研究のメッセージは、減量を決めるのは脂肪や炭水化物の割合ではなくてエネルギー摂取量であるということである。

  • 肥満と糖尿病に腸内細菌が寄与する可能性

Gut bacteria could be blamed for obesity and diabetes
29-Oct-2015
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2015-10/ps-gbc102915.php
Cell Metabolismに10月29日に発表されたマウスでの研究で、腸内細菌による食物繊維の分解で短鎖脂肪酸と肝臓の脂肪が増加しTLR5機能欠損マウスでは食物繊維を多く食べることで悪影響があることを報告。
(マウスだしすぐどうこうということではないが腸内細菌と食物繊維と短鎖脂肪酸は一般的に良いもの扱いされているのでそうでもないという説もあるよということ。要するにまだ良くわかっていないのにサプリとか健康食品とかに飛びつかないように。)

  • がん研究の誇張

The Use of Superlatives in Cancer Research
Matthew V. Abola, Vinay Prasad, MD
JAMA Oncol. Published online October 29, 2015.
http://oncology.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=2464965
オープンアクセス
がん治療や研究で用いられている言葉は重要な暗示を惹起する可能性がある。ほとんどのがん新薬が弱い効果しかないのに、認可された医薬品や開発中の医薬品は一般紙では「ゲームチェンジャー」や「革新的」と持ち上げられる。そのようなニュースは医学雑誌より多くの人に届き、患者や一般人や投資家にとっては重要な情報源である。しかし医学という文脈を無視したり誇大な修飾語を使ったりすることは読者に誤解を招く。
ここでは一般紙の抗がん薬についてのニュースの記述用語の使用状況を調べた。誰が誇張表現を使いどのクラスの薬が最も持ち上げられているかを探った。
2015年6月21-25日の間にグーグルニュースで“抗がん剤cancer drug”と一緒に使われる10の誇張表現“breakthrough,” “game changer,” “miracle,” “cure,” “home run,” “revolutionary,” “transformative,” “life saver,” “groundbreaking,” “marvel.”を検索した。
94の記事を同定しそのうち39は標的を絞った治療、37は免疫チェックポイント阻害剤、10は細胞毒性薬物。半分はFDAの認可を得ていない薬物、14%は臨床データがない薬物。
誇張表現で称賛される医薬品は研究が盛んな分野のもので実際に使われているものではない。誇張表現を使うのは医学が良くわかっていないであろうジャーナリストが55%で最も多い。