食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

その他ニュース

The Great Cranberry Scare
November 24, 2015  By Michael Tortorello
http://www.newyorker.com/tech/elements/the-great-cranberry-scare
1959年11月26日、Mamie Eisenhower大統領夫人は夕食にアップルソースを出した。その時のゲストである俳優Rosalind Russellはそのメニューをメディアに語った。そして金曜日のAssociated Pressのニュースは「大統領にはクランベリーは出さない」である。問題はクランベリーではない。11月9日に健康教育福祉長官のArthur S. Flemmingが太平洋北西部由来のクランベリーの一部から除草剤のアミノトリアゾールが検出されたと発表していた。この除草剤は実験室のラットの甲状腺に異常な増殖を誘発することが最近発表されていた。クランベリー生産者組合のOcean Sprayは、有害影響が出るには貨車何台分も食べる必要があると主張したが、Flemmingは「もしベリーの産地がわからなければ、安全側にたって買わないように」というメッセージを出した。その夜クランベリー業界は崩壊した。1959年の12月に業界紙Cranberriesは11月半ばの生鮮クランベリーの売り上げは前年から63%減少し、缶詰は79%減少した。Ocean Sprayの市場調査によると買うのを止めた人の半分はもう二度とクランベリーは買わないと言っていた。
クランベリーの栽培に除草剤のアミノトリアゾールが使われるようになったのは1950年代半ばで、FDAに残留基準1ppmを申請していた。しかし1959年の6月にFDAが申請を却下した。新しい研究で長期大量投与でラットの甲状腺機能を抑制し、腫瘍の発生を促すことが示唆されたからである。この根拠となったのが1958年に導入された食品添加物に関する規定の改定で、いわゆるデラニー条項と言われるものである。これは「ヒトや動物でがんを誘発することがわかった添加物は安全とはみなさない」というもので、当時研究者が発がん物質として知っていたのは煤、放射線、煙草の煙、ベータナフチルアミンの4つである。喫煙とがんに明確な関連があるとScienceに発表されたのは1957年である。そして数年前に広島長崎の生存者の研究が始まった。影響力の大きいがん研究者であるWilhelm Hueperが「念のため」を主張しデラニー条項を推奨した。彼は発がん物質には安全な量は設定できないと言った。そしてたくさんのベリーが腐った。多分問題のベリーは除草剤の散布時期を間違えたのだろう。その後クランベリー業界は検査に合格したクランベリーは販売できるようにしたり政府の補償を取り付けたりして次の秋には回復し始めた。
今日、我々は食品に関するパニックを国民的娯楽であるかのように扱う。しかしクランベリー危機はこのゲームのルールを決めた。メディアが大騒ぎし、科学は混乱し、業界は怒り、政治家はスタンドプレーを行う。これによりアメリカ人は食品への新しい恐がり方を覚えた。
この歴史はMark Ryan Janzenが2010年に書いた“1959年のクランベリー騒動:デラニー条項の終わりの始まりThe Cranberry Scare of 1959: The Beginning of the End of the Delaney Clause.”である。この中でJanzenは11月18日のクランベリー業界Flemmingとの話し合いに参加した海洋生物学者の印象を記録している。3年後、その人、Rachel Carsonは「沈黙の春」を発表した。
ラニー条項は最終的に1996年に議会で廃止された。クランベリー騒動のあと、数十、そして数百の化合物がヒトや動物で発がん性があるとわかった。検査の感度は何百万倍にもなった。今や人々が恐れるものはたくさんある。
先月WHOは加工肉を食べることが直腸結腸がんリスクを増やすと結論した。加工には塩漬けも含まれる。いまや感謝祭のご馳走もあなたをがんにするようだ。
(注:アミトロールは遺伝毒性はなく、高濃度では甲状腺ホルモンの恒常性に影響して実験動物で甲状腺腫・がんを作るが、甲状腺ホルモンに影響しない量ではがんを誘発しない。従ってヒトに対する発がん性についてはIARCはグループ3と分類している。)

  • ブラジルの裁判所が証明されていないがん治療に取り組む

Natureニュース
Brazilian courts tussle over unproven cancer treatment
Heidi Ledford 24 November 2015
http://www.nature.com/news/brazilian-courts-tussle-over-unproven-cancer-treatment-1.18864
臨床試験が行われていないにも関わらず患者が化合物へのアクセスを要求する
一部の人が魔法のがん治療薬と宣伝するSão Paulo大学の作ったホスホエタノールアミンカプセルについて、ブラジルの裁判所が一旦配布を禁止したものの11月11日にそれを覆してSão Paulo州の住民に限って配布を認めた。大学の担当者によるとそれで要求者の80%がカバーできる。ホスホエタノールアミンは培養細胞と実験用のマウスでしかがん細胞を殺すことが示されていない。実験動物で期待できる結果だった医薬品がヒトで失敗することは非常に多い。それにも関わらず大学の化学者が製造して何年もがん患者に配布してきた。その患者の極一部が奇跡的な回復をしたと主張しこの化合物を魔法の治療薬と主張している。このような非公式な配布について大学の管理者は失望し2015年9月に止めさせた。しかし患者が大学を訴え2015年10月にブラジル最高連邦裁判所が患者の権利を認める判断をし下級裁判所が大学に提供するよう命令を出した。大学によるとその後800以上の請求があった。
Brasilia大学の生命倫理学者Volnei Garrafaによると、「この決定は医学の専門家の意見を無視し、さらにこの薬物が動物実験しかしていないことも無視した。このような裁判所の決定は、患者や家族に間違った期待を抱かせ社会に何が安全で何がそうでないかについて混乱と騒動を引き起こす」
末期の患者には実験的医薬品を試す権利があるという主張は今年初めにも勝っている。しかし大学の管理者や医薬品規制機関、がん研究者らは、医薬品は患者にとって安全で有効であることを証明しなければならないという科学的基本を無視したものだと考える。さらにSão Paulo大学の学長で医師のMarco Antonio Zagoは「これは大学の自治の破壊である」という。
エビデンスではなく裁判に基づいた医療なんてろくなことにはならない)

Bill Nye had a super-weird experience in New York City that helped him go pro-GMO
Jessica Orwig Nov. 23, 2015
http://www.businessinsider.com/bill-nyes-anti-gmo-experience-2015-11
今年初め、ビル・ナイGMO反対派から賛成派に鞍替えして驚かせた。同じ頃の政治闘争が、彼に立場を変えたことが正しかったと確信させた。それはニューヨーク市での反GMOのものだった。ナイはその経験を最新の著書「止められない:世界を変えるために科学を利用する」で記述している。
「ある演説者が、米国大統領バラク・オバマが巨大農業企業からお金をもらって人々をマインドコントロールしようとしている陰謀集団の一味である、と主張し、多くの人が称賛した−そのマイクを持った情熱的な男性は私にとって一線を超えた」
何年にも渡って、ナイはGMOに懸念を表明してきた−科学では新しい生物の環境や食品やヒトへの影響を知ることはできないと。しかし彼はモンサントの本部やコーネル大学の植物研究所を訪問してトーンを変えた。遺伝子組換えとはどういうものなのかを見たのだ。
政治的闘争は続くがGM食品の時代は既に来ている。多くの国で害虫耐性作物などが栽培されている。初めてのGM動物としてGMサケが認可された。ナイはGMにより少ない水や少ない土地、少ない化石燃料で食品ができると考えるようになった。気候変動に直面してそのような改変は特に重要である。

  • 赤肉とがんの間違った警鐘

FT
A false alarm on red meat and cancer
November 24, 2015  Gordon Guyatt
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/42259e20-92b5-11e5-bd82-c1fb87bef7af.html
WHOの決定の影響は大きい。米国政府は公共施設や公的資金を投入している計画から肉を追い出すかもしれないし肉製品には発がん性警告表示がされるかもしれない。人々は肉を避けて栄養が足りなくなるかもしれない
(カリフォルニア以外ではそんなことにはならないと思うけど)

  • パリ気候変動会議で、肉に課税することを優先すべきと報告書が求める

Report Calls For Meat Tax To Be High Priority At Paris Climate Change Conference
11/24/2015
http://dailycaller.com/2015/11/24/report-calls-for-meat-tax-to-be-high-priority-at-paris-climate-change-conference/
ロンドンのChatham Houseシンクタンクが温暖化防止のためには肉を食べる量を減らすことが必須だと言う。動物飼育が世界の炭素排出の約15%になる。
この対策の最大のターゲットはアメリカ人であろう。1日一人当たり250g食べている。削減法として課税を挙げている。

  • フェンタニルの過剰使用による死亡は処方監視システムで予防できる、と報告書は言う

Fentanyl overdose deaths can be prevented by prescription monitoring system, report says
Nov 24, 2015
http://www.cbc.ca/news/canada/british-columbia/prescription-monitoring-system-1.3333763
ブリティッシュコロンビアの医師の30%以下しか患者の処方を追跡できるソフトウェアであるファルマネット(Pharmanet)を使っていない
フェンタニルオキシコンチンのようなオピオイドを処方する医師には規制を強化すべき、と新しい報告書が言う。ブリティッシュコロンビアでは飲酒や薬物使用による交通事故で死亡するヒトよりオピオイドの過剰使用で死亡する人の方が多い。患者の薬歴をみることができるPharmaNetを使うことで医師が危険な処方を避けられる。
多くの医師が月に8ドルの使用量を払いたくなくて使っていない