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EU有効成分レビューの枠組みにおけるグリホサートの再評価手続きに関するFAQ

(グリホサートのQ & A全部で3つあるうちの一つ)
Frequently asked questions on the procedure for the re-assessment of glyphosate within the framework of the EU active substance review
BfR FAQ, 12 November 2015
http://www.bfr.bund.de/en/frequently_asked_questions_on_the_procedure_for_the_re_assessment_of_glyphosate_within_the_framework_of_the_eu_active_substance_review-195637.html
農薬に使用される有効物質は欧州委員会の認可を必要とする。この認可は最初の申請から最大10年間に限定されている。製造者はこの有効物質を農薬に使用し続けたい場合、この期間が終了する前に認可更新の申請をしなければならない。ひとたび申請が提出されるとその有効物質は再評価される。認可手続きの枠組みで、欧州委員会は報告担当加盟国(RMS)を指名する。グリホサートの場合はドイツ連邦共和国RMSに指名された。ドイツ政府は更新評価報告(RAR)の作成指導機関としてドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)を任命した。
再評価の手続きで、ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)が有効物質と代表的製剤の健康リスクを評価するよう依頼された。
BfREU有効物質評価の枠組みについてのグリホサートの再評価手続きに関するQ&Aを作成した。

EU有効成分評価の枠組みでグリホサートを再評価する意義は?
他の農薬の有効物質同様、グリホサートは有効性や健康と環境へのリスクをEU評価の枠組みで定期的に再評価されている。ドイツはグリホサートの評価と地域評価を行う報告担当加盟国(RMS)である。再評価の手続きで、BfRはこの物質と代表的な製剤の健康リスクを評価するよう任命された。グリホサートタスクフォース(GTF)として知られる複数の申請者の同盟団体から法定文書が提出された。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)はグリホサートの評価にのために入手可能なデータと文書を求めるパブリックコメントを行い、そこで受け取った文書も取り入れた。

手続きの日程は?
GTF申請文書とBfR独自の文献調査に基づいた最初の評価報告書案は、欧州委員会が決めた日程に従って2013年末までに完成し、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)が欧州食品安全機関(EFSA)に提出した。この報告書は、ヒトと動物の健康リスクを評価するBfRが実施した作業の調査結果や、連邦環境保護機関(UBA;環境に関する影響調査)及びJulius Kuhn 研究所(ミツバチの健康に関する影響と有効性調査)の報告書を含んでいる。

他の加盟国の専門家と申請者からの意見募集は、EFSAの指揮管理下で実施したパブリックコメントとしてピアレビューの過程で2014年の初めに行われた。ドイツ当局はその過程に関わり、包括的な意見や加盟国や一般の関心のあるメンバーから追加で出された研究を組み入れた改訂を行って、2014年12月にEFSAに報告書を提出した。EFSAで加盟国の専門家2015年2月に議論を行い、いくつか解決すべき問題が残された。BfRは2015年4月1日にBVLに対して求められた全ての追加の知見を送り、その後改訂された全体報告をBVLがEFSAに報告した。

2015年7月末に国際がん研究機関(IARC)がグリホサートの分類を「ヒトに対しておそらく発がん性がある、発がん性グループ2A」とするモノグラフを発表したことで、BfRはIARCの評価をレビューすることをドイツ政府とEFSAから任命された。BfRは2015年8月中にこのレビューを完成し、更新評価報告(RAR)への添付書類としてドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)に送った。BVLはEFSAにドイツの評価を伝えた。2015年9月中に、EFSAは添付書類に関するピアレビューと加盟国の追加の専門家会議をまとめた。この会議は世界保健機関(WHO)、IARC、米国環境保護庁(USEPA)の代表者も出席した。結果として、EUの有効物質レビューの中でのグリホサートの再評価にIARCの評価を考慮することができた。改訂RARと添付書類に基づき、EFSAの専門家は申請更新のためのグリホサートの評価概要報告(EFSAの結論)を準備した。これで認可手続きにおける科学的評価の手順を完成した。

EUでグリホサートの認可延長をするかどうかを決めるのは誰?
欧州食品安全機関(EFSA)はIARCモノグラフに関する添付書類を含む全改訂報告書に基づく欧州委員会のための助言(結論)を作成し、2015年10月末に欧州委員会と加盟国へ報告した。全欧州加盟国と協議して、欧州委員会はこの農薬有効成分グリホサートの認可あるいは新たな認可を決めるだろう。認可された有効物質だけが、全ての農薬に求められる地域の認可手続きを行い、各加盟国で承認される。

BfRはどの情報源に基づいてグリホサートの健康評価を行ったのか?
オリジナルの研究に加えて法の規則に従って申請者が提出した文書も、BfRは全ての入手可能な研究を情報源として使用した。さらに、欧州食品安全機関(EFSA) より行われたパブリックコメントに応えて受け取った文書も、BfRの評価手順に用いられた。

企業から資金提供された、あるいは企業が提出した情報をBfRが申請手続きの文脈で考慮するのは問題があるのでは?
欧州の法の手続きでは、有効成分に求められる毒性研究を申請者が行い資金提供しなければならない。製造者と小売業者はその製品の安全性の責任を負い、その安全性も証明しなければならない―これは薬事法など他の認可手続きにも採用される一般原則である。その研究は優良試験所規準(GLP)と化学物質の毒性検査やEU試験方法規則No. 440/2008に関するOECDガイドラインに従って行われなければならない。そのガイドラインは使用される動物の数と種類、各毒性学的エンドポイントごとの対照群なども規定している。
採用するかどうかについての唯一の基準は、科学的質と研究のエビデンスである。その研究を行うことについて予想される利害、政治的利害、他の関係者の利害は科学的評価において何の役割も果たせず、果たさない。
企業の申請者が提出した情報源の分析(グリホサートタスクフォース)は法で規定される評価プロセスの一部である。

使用される情報源を評価するのにどのような基準を用いる?
BfRは規制上の認可と許可のための科学的知見を評価には、科学的品質、研究の証拠、それらの知見の基本となるデータのみを用いる。科学的品質の評価基準は化学物質の毒性試験に関するOECDガイドラインEU試験方法規則No. 440/2008 No. 440/2008 である。EU試験方法規則はどのような試験を行うかを詳細に定義する。さらに、欧州の法は優良試験所規準(GLP)の規則に従って必要な試験が行われるべきであると規定する。この要求に合わないが、科学雑誌に発表された他の全ての情報源も評価過程に組み入れる。この基準は現在更新されているEFSA及び欧州化学品庁(ECHA)の技術的ガイドラインとして発表されている。

評価の質はどのように保証されるのか?
当局による評価過程は透明性があり論理的に構成されていることを様々な方法で保証する:BfRは外部に監査品質管理システムを運営している。EU認可手順も、他のEU加盟国や一般人の関与を含む様々な品質保証方法を提供している。パブリックコメントは一般人と他のEU加盟国に、あらかじめグリホサートの再評価に関する報告書に関する意見を提出し、さらなる研究を提示する機会を与えている。この報告書の改訂中に、BfRは全ての意見と助言をレビューし考慮した。

BfRは企業の評価を取り入れたか?
いいえ。評価報告書の基礎となる全ての情報源は―他の全ての健康リスク評価のように―BfR職員が単独で評価した。BfRの健康評価はもっぱらオリジナル研究や科学文献に発表された記事を引用している。
評価報告書では、BfRはグリホサートタスクフォースの毒性試験についての実験方法や結果の概要に関する要約を含めたが分析や、残留物評価、散布の安全性については使っていない。この過程において、誤りと冗長性が修正され、別のBfRの改訂評価報告書としてパラグラフを強調したものが提示されている。結果として、報告書と有効物質の毒性評価は明らかに別物になっている。
これはBfRが各研究や文献は独自に評価し、企業がまとめた要約に依存していないことを意味する。BfRはまた、ハザード評価と暴露推定に基づく完全に独立したリスク評価を行い、農薬有効物質の評価ごとに欧州法に規定されている報告書第1巻としてグリホサートの最評価の要約の形で再びこの評価について記述している。とりわけBfRとGTFが到達した評価と結論の違いに、BfRのリスク評価の独立性が反映されている。

BfRの農薬と残留農薬委員会」はグリホサートのリスク評価の中で何を述べているか?
BfRの農薬と残留農薬委員会」はBfRの法定任務に含まれていない。言い換えると、BfRの法的権限に沿う物質の評価に発言権がない。
BfRは技術的ガイドラインの作成や評価概念の開発において科学的技術的知見や他の機関の実知識を考慮に入れるためにBfR委員会として外部専門家のの知識を引用している。
BfRの農薬と残留農薬委員会が取り扱った問題はBfRのホームページに発表されている会議の議事録で概要が示されている。
http://www.bfr.bund.de/en/bfr_committee_for_pesticides_and_their_residues-23385.html

どのパブリックコメントが改訂評価報告書に含まれているのか?
BfRは公衆からの全ての意見と情報の科学的品質と証拠をレビューし、それらを適切に考慮した。

BfRはグリホサートの再評価に関して独自の研究も委任した?
はい、BfRも再評価の目的で独自研究を委任した。かなり多くの評価文書が示され、例としてグリホサートを含むある農薬の毒性が、界面活性剤tallowaminesのような補助剤を含むことにより有効物質それ自体よりも高くなりうることが示された。そのため私たちはin-vitro分析を行い、動物実験代替法を開発するために混合物の毒性を調査する分子生物学的方法を用いた。さらにBfRは、初めて反芻動物の第二胃の代謝と微生物集団に与えるグリホサートとtallowaminesを含む農薬の影響を調査するハノーバー医科大学による研究計画を開始した。この研究の知見は有効物質グリホサートとその補助剤が反芻動物の微生物相にマイナスの影響がないことを示した。クロストリジウム種のバクテリアがグリホサートの影響下でより繁殖しやすいという兆候もない。

他の発表されたグリホサート研究は規制上の意志決定でどのように考慮されているか?
大学の実験室でも大抵は研究目的で、あるいは第三者に委託されて、農薬有効物質の毒性試験を行っている。この種の研究も科学的評価では考慮され、品質と証拠に関する同じ基準に基づいて評価される。

グリホサートの健康評価に関するBfRの報告書にパブリックコメントでの意見はどのように組み入れられたか?
BfRは加盟国、EFSA、グリホサートタスクフォース(GTF)とパブリックコメントから受けた意見を考慮して評価報告書を改訂した。
BfRがGTFに求めた全ての文書が組み入れられ、以前には考慮されていなかったあるいは昨年発表されたばかりの科学雑誌の記事も含まれた。全部でBfRは350の個別の意見をレビューし評価し、個別の意見と注釈(個人や非政府組織からのを含む)をつけ、必要に応じて、評価報告書の改訂で考慮した。
組み込まれた関連文献数は著しく増加し、ヒトの尿からのグリホサートの検出、酸化的ストレス、疫学研究、農場の動物への影響についての章はかなり拡大した。発がん性と変異原性の情報も補われた。現在代表的製剤として見なされるものを(有効物質グリホサートを含む農薬)皮膚からより多く摂取したとしても、有効物質の基本的な評価に変わりはない。

評価では、BfRは、特に酸化ストレスの結果としてのグリホサートによる発がん性の影響に関する公表文献は無視した?
BfRはこれらの主張をする全ての研究をレビューし、コメントし、評価し(酸化的ストレスに関するものも含む)、そして改訂評価報告書あるいは添付書類にこれらの研究結果を組み入れた。これらの追加的に考慮された研究は有効物質暴露とヒトのがんリスクの増加に因果関係についての科学的根拠がない。必要なデータ、用量データ、実際に検査された物質に関する透明性の詳細が研究のいくつかで紛失しているということが理由の一つである。

改訂評価報告書は部外秘か?
いいえ、欧州レベルでのグリホサート評価の完了に伴い、EFSAはホームページ上でIRACモノグラフに関する添付書類を含むドイツ連邦共和国の改訂評価報告書を発表するだろう。
(注:既に公表済み)